『フェイフェイと月の冒険』よりカラフルで幻想的な月世界も見どころ

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 ディズニーで『美女と野獣』『アラジン』などを手掛けた伝説的アニメーター、グレン・キーンさんの長編デビュー作となるアニメーション『フェイフェイと月の冒険』がNetflixで配信スタート。映画史に残る人気キャラクターを担当してきた“生きる伝説”が、アジア系キャラクターを中心としたファンタジーに惹かれた理由を語った。

 『フェイフェイと月の冒険』は、亡き母親に聞かされてきた“月の女神の伝説”を信じる科学好きの少女・フェイフェイが、不思議な王国や生き物の待つ月の世界へ、自作の宇宙船で飛び立つファンタジー。『僕のワンダフル・ライフ』(2016)などの脚本家で、2018年にがんで亡くなったオードリー・ウェルズさんの脚本で、家族をめぐる様々な悩みを抱えたヒロインが、幻想的な月世界の旅で成長していく姿を描く。

 ディズニーを離れるまで、担当アニメーターとして『リトル・マーメイド』のアリエルなど、魅力的なヒロインに命を吹き込んできたグレンさん。長編デビュー作となる本作でも、何より主人公・フェイフェイのキャラクターに惹かれたという。

 「フェイフェイは、周りからクレイジーだと言われるようなことでも、実現できると信じている女の子です。私も、この世に不可能なことはないと信じている。そんな彼女に、アリエルにも通じる、火花のようなものを見たんです。もし、この作品が手描きアニメであれば、フェイフェイは私が担当していたでしょう」

 これまで、2Dをメインとしたいくつもの名作を生み出してきたグレンさん。なぜ、本作ではCGアニメーションを選択したのか。グレンさんは、その理由を「ちょっとした口元や眉の動きで、感情の機微を見せたかったからです」と語る。「もちろん、手描きでもそうした表現は可能です。しかし、今はそれだけの仕事ができる手描きアーティストを集めるのは難しい。そこで今回は、CGでフェイフェイのモデルを作ることにしました」

 アニメーターには、「フェイフェイが感じていることを自分たちでも感じながら彼女を動かしてほしい」と伝えたというグレンさん。結果的に、心から彼らの仕事に満足したようだ。「一番気に入っているのは、母親以外の女性と手を触れあっている父親を見たフェイフェイの表情を捉えた場面です。一瞬、信じられないというふうに目を見開いて、眉がちょっとだけ寄って、最後の数コマ、少しだけ口角が下がる。本当に素晴らしい瞬間でしたし、同じように感激したシーンがいくつもあります」

 登場キャラクターは、フェイフェイをはじめ、アジア系が中心。驚くほど繊細な表情の機微で、彼らの感情が表現されている本作では、プロデューサーのジェニー・リムをはじめ、多くのアーティストがアジア系だった。「皆さんがどのように感情を目で伝えるのかといった、素晴らしい例を見せてくれた」というグレンさんは「私たちは、どうしても白人のキャラクターを動かすことになれている。そんな私たちが、もしかしたら見過ごしてしまっているような、ちょっとした変化も見逃したくなかった。アジア系の人々の表情の美しさを、きっちりとおさえることは、この作品において本当に重要なことだったんです」と語っている。(編集部・入倉功一)

Netflixオリジナル映画『フェイフェイと月の冒険』は世界配信中