なかなか増えない男性の育休取得。会社を休めば減収になるという心配が背景にあるが、実は制度をうまく使いこなすと逆に手取り金額が増える可能性も(写真:Ushico/PIXTA)

もうすぐ赤ちゃんが生まれるプレパパ、あるいは赤ちゃんが生まれたばかりのパパは、育児休業を取得する予定ですか?

一昔前に比べると、今の30代、40代の男性は育児や家事に積極的に関わることが多いのではないでしょうか。また、女性が育休を取得する場合に比べると、男性は育休取得の時期をコントロールすることもできるでしょう。もし、育休を取ればメリットがあるというなら、取得しない手はありません。今回は「パパ育休」のお得な取り方を紹介しますので、積極的に取得してみませんか?

「月末」を含めて取得すれば社会保険料免除

読者のパパの中には、むしろ「育休を取得すると収入が減る」と思っている人が多いかもしれませんが、最初に断言しておきます。それは誤解です。なぜなら、社会保険料が免除されるからです。免除されるからといって将来の年金が減ることもありません。払ったものとしてみなしてくれるのです。

育休期間中は給料がもらえなくなりますが、育休手当が出ます。育休手当は非課税で、最初の半年間は給料の67%。この給料には通勤手当や残業代、各種手当なども含まれ、育休手当が計算されます。

そのうえで社会保険料が免除されることになります。ただし、社会保険料が免除されるには「育休期間に月末を含んでいること」という要件があります。例えば6月1日に育休を開始して6月10日に育休を終了する場合、育休期間に月末を含んでいないので、社会保険料は免除になりません。同じく10日の育休期間でも、6月20日に育休を開始して6月30日に終了する場合であれば月末を含んでいますから、6月分の社会保険料は免除されることになります。

育休取得月がボーナス月の場合も、育休取得で社会保険料が免除されれば、ボーナスに対する社会保険料も免除されます。毎月、差し引かれる社会保険料の負担が大きいと感じている人は少なくないでしょう。その負担がなくなるのですから、手取りが大きく違ってくるはずです。では、具体的な数字を用いて手取りの違いを計算してみましょう。

まず、給料40万円、ボーナス70万円の会社員のパパのケースで見てみましょう。育休を取得しないときは、給料とボーナスから、所得税、住民税、社会保険料が差し引かれます。その結果、給料は手取り32万円ほど、ボーナスは手取り53万円ほど。合計すると手取りは約85万円です。

このパパが育休を1カ月取得すると、手取りはどうなるでしょうか。

育休手当は給料の67%ですから、40万円×67%=26万8000円です。一方、ボーナスからは税金のみ差し引かれますから、70万円のボーナスは、手取り63万円ほどになるでしょう。育休手当とボーナスを合計すると手取りは89万8000円です。育休を取得しないときに比べて、4万8000円増えました。

ただし、ボーナス月以外で育休を取得するときは、手取りは育休手当の26万8000円のみです。普段の手取りが32万円なので、16%ほど収入が減ることになりますが、育休手当は給料の67%(つまり33%の減少)にもかかわらず16%の手取り減少にとどまると考えることできます。実質は8割余りの収入を確保できるのです。これは、育休手当には税金も社会保険料もかからないからです。ボーナス月以外に育休を取得しても、家計には致命的な影響を与えるほどではないといえるでしょう。

5日間の取得なら手取りはほぼ変わらない

さて、1カ月育休を取得するケースで手取りの違いを計算しましたが、実際、1カ月も育休を取得する男性は少数派です。「平成30年度雇用均等基本調査」によると、取得期間は「5日未満」の割合が約4割と最も多くなっています。

では、もし5日間育休を取得したら手取りはどうなるでしょうか。

仮に10月26日から10月30日まで育休取得するとしましょう。10月1日から10月25日までは、会社が休みの日を除いては仕事をしています。したがって、給料をもらうことができます。本来の出勤日数の8割出勤したとすると、40万円の8割、32万円が支給されることになります。

残りの5日間(10月26日〜30日)は育休を取得しますから、10月については社会保険料免除月となり、給料に対して社会保険料が免除されます。32万円から差し引かれるのは税金だけとなり、手取り27万円ほどになります。そのうえ育休手当を5日分もらうことができます。社会保険料も税金もかからない育休手当は5日分で4万5000円ほどです。すると、給料と育休手当合わせて、手取りは合計31万5000円。育休を取らないときの手取りが32万円ですから、ほぼ変わらない金額になります(ただし、住民税が非課税になるのは翌年ですから、育休期間中は前年の収入に対して住民税を支払うことになります)。

このように、ポイントを押さえて育休を取得すれば、手取りの収入が大きく減ることはありません。しかし、忘れてはいけないのは、育休とは育児という仕事をするために会社の仕事を休む制度である、ということです。社会保険料を免除するための制度でも、自分の体を休ませる制度でもありません。そして育児とは、昼夜関係なく赤ちゃんのお世話をするということです。

そう考えると、たった5日間の育休というのは、短すぎるかもしれません。どうしても短期間しか取得できないというのであれば、2回に分けて取得してみてはいかがでしょうか。女性は1人の子どもに1回しか育休を取得することができませんが、男性は出産後8週間以内に育休を取得すれば、その後、仕事復帰したとしても、もう一度取得できる「パパ休暇」という制度があります。短期間の育休であれば仕事の調整もつきやすいと思いますし、2回取得すればママも助かることでしょう。いずれにせよ、パパは「取るだけ育休」にしないように気をつける必要があります。

会社には早めに取得アピールしておく

筆者のお客様の中にも育休を取得したパパがいらっしゃいますが、「予想以上に大変でした」という声が少なくありません。でも、「同時に充実感も大きい」といいます。夫の家事・育児への参加時間が長いほど、2人目以降の子どもが生まれやすいというデータもありますから、育休取得は少子化問題の解決にもつながるかもしれません。

「育休を申請したけど却下されました」というパパもいます。理由は「課長だから」というものでしたが、よくよく聞けば、単に制度が整備されていないだけでした。最近の厚生労働省の調査でも、男性が育休を取得しない理由には人出不足や育休を取得しづらい雰囲気など、職場環境に起因するものが多く、現実は進んでいないと思わざるをえません。

ただ、「課長だから」と申請却下されたこのパパが、前もって育休取得を周囲や会社にアピールしていれば、対応も変わったのかもしれません。女性が育休取得する場合は数カ月前に会社に伝えますから、同様に男性も早めにアピールしておくとよいのかもしれません。そうすることで、引き継ぎのスケジュールも立てやすくなり、会社も同僚も準備ができます。また男性の育休取得を支援する「両立支援等助成金」という制度で会社は助成金をもらえますから、この制度の存在も伝えるといいかもしれません。

生まれたてホヤホヤの赤ちゃんは、日々、みるみる成長します。今しかない貴重な時間を見逃すのはもったいないとも思います。家計への影響をなるべく最小限にするように取得時期の計画を立てて、育休を取ってみませんか?