TURTLEDOVE、は「Two Uncorrelated Request, Then Locally-Executed Decision On Victory(無相関なふたつのリクエストの勝者を、ローカルで決定する)」の略であり、Googleの「プライバシーサンドボックス(Privacy Sandbox)」の一部をなすフレームワークです。この提案の目玉は、リアルタイム入札で実施される広告の決定を、アドサーバーではなく、すべてブラウザ内で実行する点にあります。このアプローチは、悪意ある第三者が入札ストリームのデータをかすめ取り、ユーザーのプロフィールを作成するのを阻止します。しかしこの方法では、通信速度に大きな負担がかかるのではないか。業界がそう気付くのに、それほど時間はかかりませんでした。「ブラウザで膨大な量の決定を行うというなら、ブラウザにCookieを格納するのと何が違うのか」。アドテク企業のビーズワックス(Beeswax)で最高経営責任者(CEO)を務めるアリ・パパロ氏はそう問いかけます。TURTLEDOVEは、関心グループやコンテクスチュアルターゲティングといった手法を想定する一方で、A/Bテスト、フリクエンシーキャッピング、ブランドセーフティなどがどう機能するのかについては、十分に言及されていませんでした。さらに、世界でもっとも人気の高いブラウザであるChromeを、Googleが所有していることも問題でした。「Google支配下のブラウザである限り、TURTLEDOVEは監査不可能なエンジンだ」とパパロ氏は訴えます。
――SPARROWとはどのようなものでしょう?
TURTLEDOVEが抱えるこれら諸問題に対して、仏アドテク企業のクリテオがひとつの答えを出しました。それがSPARROW、すなわち「Secure Private Advertising Remotely Run On Webserver(Webサーバー上でリモート実行される、セキュアでプライベートな広告)」です。SPARROWでは、広告オークションのプロセスとロジックを、ブラウザではなく、「ゲートキーパー」と呼ぶ独立したサードパーティが実行します。また、広告主にはリアルタイムのデータがフィードバックされます。それでも業界には、レポーティングがリアルタイムで行われることで、ゲートキーパーがユーザーデータや広告データの安全を担保するのが困難になるなど、いくつかの懸念点が挙げられました。加えて、ゲートキーパーの役割を果たせる企業の数も限られています。「ゲートキーパーの候補となる企業は、クラウド企業にしろ電気通信企業にしろ、あるいはGoogleでもFacebookでも、そのほとんどが広告部門を持っている。自身の利益に反さずに、この役目が果たせる企業など、果たしているのだろうか?」パパロ氏もそう疑問を投げかけます。
クリテオのバイスプレジデントで、プロダクト、広告プラットフォーム、アナリティクスを担当するシャルルアンリ・エノ氏は、プレスリリースで次のように述べています。「SPARROWの目的は、消費者、広告主、パブリッシャーのニーズが共存できるような、広告ソリューションの構築を業界に促すことだった。Google広告のチームがDovekeyという最新の提案で、SPARROWをベースとした枠組みを提案していることに意を強くしている」。カフェメディア(CafeMedia)のポール・バニスター最高戦略責任者は、「Dovekeyは、少なくとも表面的には、SPARROWの改善案だと思われる」と述べています。「良好な進捗状況だと思う。Chromeチームが早い段階でW3C(World Wide Web Consortium)にこのプロセスを公開して価値を示し、オープンソースのアプローチを取っていることは評価できる」。バニスター氏はそう続けました。
Googleのプライバシーサンドボックス関連の提案は得てしてそうなのですが、今回もGitHubやW3Cが主催する業界横断的なweb広告の改善に取り組むビジネスグループ(Improving Web Advertising Business Group)を通じて、業界のフィードバックを求めています。このビジネスグループがDovekey提案でまとまることができるなら、次の段階として、W3Cの適切なワーキンググループ(あるいは新設の部会)に議論を委ね、仕様の作成に着手することも考えられます。[原文:WTF is Dovekey]LARA O'REILLY(翻訳:英じゅんこ、編集:村上莞)Illustration by IVY LIU