なにげない会話の裏側で繰り広げられていることが……

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みなさん、こんにちは。丸ノ内ミカです。

かつて、「ナンバーワンよりオンリーワン」という歌が流行したことがありました。あれから約20年。現実は、歌のフレーズと逆行するように、「ナンバーワン」の座を争っています。インスタグラムなどのSNSは、その格好のツールとして使用され、プライベートでの食事や旅行の画像をアップしただけのつもりが、「リア充なのを自慢してる」と非難される人もいれば、友人たちの楽しい画像を見ては、「自分の生活は全然イケてない」と落ち込む人もいます。

たかがマウンティング、されどマウンティング。誰もが「オンリーワン」の大切さを頭ではわかっているはずなのに、なぜ自分の立ち位置をランク付けしてしまうのでしょうか。なぜ人と比較して優位に立とうとしたり、逆に劣等感に苛まれたりしてしまうのでしょうか。

丸の内OLのマウンティングは止まらない!

じつは、「丸の内OL」の世界はマウンティングの巣窟といってもいいほどの場所です。東京駅の目の前に高層のオフィスビルが林立する丸の内。「日本一テナント料が高いオフィス街」であり、高収益の大企業が軒を連ねています。

その中で仕事をする女性たちは、職種や雇用形態に関わらず、上昇志向の強い人が多く、社内では、そこはかとなく日常的にマウンティング合戦が繰り広げられています。

たとえば、居住地マウンティング。文字どおり、「住んでいるところ」をけん制し合います。

社内の人事異動などで同じ部署になり、初めて顔を合わせたとき、どちらからともなく聞き出すことの一つが、「お住まいはどの辺なの?」というチェックです。そのひと言を皮切りに、居住地をめぐる「けん制」が始まります。ある時のランチでは、まさに居住地マウンティングが目の前で繰り広げられました。

A子が「私は、そんなにたいしたことないんだけど。一応、世田谷です」と発言。高級住宅地であることを(本人としては、さりげなく)告げながら、駅前のおしゃれなレストランはなかなか予約が取れないなどと説明しました。

それを聞いていたB美が、「そのレストランって、自由が丘に姉妹店がありますよね。私、家が近いので、週末とかたまに旦那と行くんですけど」と、ひと言。それを聞いたA子は顔を真っ赤にして、「えっ? B美さんって自由が丘なの? ちょっと早く言ってよ〜。自由が丘の人の前で世田谷の自慢しちゃって、私、恥かいたじゃん!!」

その場の空気が気まずくなったところに、C絵があとから合流しました。「C絵さんのお住まいは?」と、A子とB美の二人に聞かれたC絵は遠慮がちに、「元麻布なんですよ。ただ、周りにスーパーとかがあまりないので困ってて。最近は宅配を使ってます」と。「元麻布......」。二人は二の句を継げず、居住地マウンティング合戦はあえなく終了となりました。

では、C絵がこの戦い(?)の「ナンバーワン」の勝者かといえば、上には上がいます。後日、去年会社を辞めたというD香がランチ会に参加。D香は外資系金融の東京支社に出向していたアメリカ人男性と結婚して会社を辞めたのですが、現在はロサンゼルスの邸宅に住み、郊外に別荘も持っているという話でした。このように、次から次へと「上には上」が現われます。マウンティング合戦というのは終わりがありません。

エルメス「バーキン」の「真実」

また、持ち物マウンティングも日常茶飯事。丸の内OLのブランドバッグ所持率は高く、100万円以上するエルメスの「バーキン」を通勤バッグにしている人も珍しくありません。隣の部のE代もエルメス愛用者の一人で、「バーキン」シリーズを何個も持っているとの話でした。

ある週末、銀座に買い物に出かけた時に、そのE代が銀座の区立住宅から出てくる姿を目撃しました。E代は「銀座に住んでいる」ということで、居住地マウンティング合戦でも、上位に位置していると認識されています。E代は私の顔を見た瞬間、気まずそうに別の道へと姿を消しました。

翌日、廊下でE代に会ったところ、いきなり近づいてきて、「きのう私を見たことは、内密にしててね」と言います。どうやら、「区立住宅に住んでいるのを見られた」ことが引っかかっているらしいのです。

「そんなのみんな気にしないよ」と言ったものの、「ミカさんは何もわかってない! そんなの知られたら、私の立場ないから!」と、かなりセンシティブになっている様子。区立住宅とはいっても銀座なので、家賃はそれほど安くなく、毎月の家賃にエルメスのバッグとなると、「経済的に大丈夫なのだろうか」と余計な心配をしてしまいます。しかしE代は、「住むところを切り詰めてでも、エルメスは持ちたい」と主張します。

とはいえ、そもそもエルメスの「バーキン」は、女優のジェーン・バーキンが、使い込んだカゴバッグにモノをあふれさせているのを見かねたエルメスの社長が、ポケット付きのバッグを作ってあげたという、庶民的な経緯で誕生したバッグです。それが本来の経緯とは真逆に、マウンティング合戦の象徴アイテムになっているとしたら、当のバーキンも困惑してしまうのでは...... 。私はそう思うわけです。

もうおわかりですね。

「マウンティング」がいかに不毛なものか、実感していただけたのではないでしょうか。居住地も「住めば都」。持ち物も、使い心地が良くて愛用しているものが、自分にとって一番良い持ち物のはずです。人との比較で価値を計るのではなく、自分の肌感覚を信じたいですね。

【きょうの格言】マウンティングほど不毛な争いはない 信じられるのは自分の肌感覚だ!

それでは、また次回。(丸ノ内ミカ)