広告価格の下落と大手広告主による購入の減少が、プログラマティック市場で新型コロナウイルス絡みの詐欺広告の急増を招いている。

詐欺広告とは、製品に関して虚偽、あるいは誤解させる説明をするクリエイティブや詐欺ドメインを利用して、金を騙し取ろうとする広告のことだ。4月には、こうした詐欺広告がすべての詐欺行為の20%を占めるまでに急増したと、メディアトラスト(The Media Trust)は報告している。パブリッシャーと連携してプライバシーとセキュリティの強化に取り組んでいる同社によると、通常ならこの割合は5%に満たないという。

BBCのガバナンスチームは、欧州で新型コロナウイルスが大流行した直後、マスク関連の広告をすべて禁止した。同社は広告主の厳格なホワイトリストを利用することで多くの詐欺広告を防いでいる。

「マスクを法外な価格で販売する広告主が現れたが、その頃は(世界保健機関[WHO]が)マスクの着用を推奨していなかった」と、BBCでプログラマティック取引マネージャーを務めるエミリー・ロバーツ氏はいう。「そこで我々のチームは、WHOのガイドラインに従って、この手の広告を阻止することに決めた」。

パブリッシャーたちの対抗手段



メディアトラストによれば、米国と英国では、少なくとも大手のパブリッシャー10社がこのような詐欺広告を積極的にブロックしているという。また、SSP(サプライサイドプラットフォーム)パートナー向けにポリシーを策定しているパブリッシャーもある。ポリシーを活用すれば、新型コロナウイルスに言及する広告を一切拒否することや、手指消毒剤の広告は認めても、治療に関する広告は認めないといったことを明文化できる。

「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を利用して、考えられる限りの悪だくみを行う者がこれから出てくるだろう」と、悪質な広告をインプレッションレベルでブロックする技術を手がけるメディアトラストの欧州担当ゼネラルマネジャー、マット・オニール氏はいう。「『COVID』という言葉を縫い付けた野球帽を売りつけるのはまだいいほうで、届けるつもりのない偽マスクをサイトで売っている例もある。(パブリッシャーに対する)基本的なアドバイスは、このようなポリシーを策定してパートナーに遵守を義務づけることだ。そうすれば、パートナーは(詐欺)広告がエコシステムに出入りすることがないよう細心の注意を払えるようになる」。

新型コロナウイルスに見舞われたデジタル広告市場では、トラフィックの記録的な増加によってCPMが下落し、広告主によって新型コロナウイルス関連のコンテンツがブロックされ、大手ブランドの撤退によってオープンエクスチェンジに空白が生じている。こうした状況が、悪質な活動や成人向け広告、それに新型コロナウイルスに関連した詐欺広告の温床となっている。さらに、現金の確保に躍起なパブリッシャーと有効な治療法をがむしゃらに求める世界中の人々が、状況をますます悪化させている。

詐欺広告の目的はまちまち



また、詐欺広告といってもその目的はまちまちで、すべての広告があからさまに詐欺を行っているわけではないことが、この手の広告の検出を難しくしている。広告が詐欺かどうかをクリエイティブから判断するには、主観に頼らざるを得ないのだ。そのため、パブリッシャー各社は許容できる広告の範囲を独自に設定しており、「アルコール」という言葉を含んではならないといったルールから、肌の露出度が一定の割合を超えるものはヌードとみなすといった細かな基準まで具体的な条件を設定できると、メディアトラストでマーケットプレイスイノベーション責任者を務めるコリー・シュヌール氏はいう。

「新型コロナウイルスに関連した悪質な広告は間違いなく増えている」と指摘するのは、インデックスエクスチェンジ(Index Exchange)の法務担当責任者であるジェイソン・チケッティ氏だ。「(こうした広告は)たいてい、パンデミックに関連した詐欺的なインベントリー(在庫)を販売しているマーケットプレイスに存在しており、誇大広告や恐怖心を煽るような広告、法外な価格を提示する手指消毒剤やマスクの広告などがある」と、チケッティ氏は話す。同氏が勤めるインデックスエクスチェンジでは、新型コロナウイルス関連の広告を毎週数千件確認しており、その40%を詐欺広告としてブロックしているという。

一見詐欺とわからないような広告もまだかなり多いが、減少しつつあるようだ。メディアトラストがランディングページでの詐欺行為を調査したところ、4月には新型コロナウイルス関連の広告の38%が詐欺的な内容だったが、2月末の60%よりは減っていた。その理由はおそらく、この手の広告を見つけ出して取り締まるにはある程度時間がかかるからだろう。また、「N95マスク」と手指消毒剤に対する需要の急増もひと段落したとオニール氏は述べている。

詐欺広告を許容する度合い



詐欺広告を許容する度合いは、パブリッシャーによって異なる。また、ほかに集中すべきことがある場合には、詐欺広告の取り締まりが優先リストから抜け落ちる可能性がある。「このような広告を取り締まる責任はすべての企業にあるが、実際にアクションを起こすだけの時間や動機がある企業はどこにもない」と、アドフラウド研究者でコンサルタントのオーガスティン・フー氏はいう。「パブリッシャーによっては、すでにポリシーを運用していたり、新しいポリシーを策定したりしているところもある。だが、詐欺広告が消費者に表示されないようにするために、余分なコストをかける企業があるだろうか」と、同氏は語った。

新型コロナウイルス以外でもマルウェアや詐欺の事例は増えている。3月中旬以降、メディアトラストが確認したマルウェア関連の事例は1日あたり平均で22%増えており、多い日には35%増加することもあるという。マルウェアは1月から着実に増えており、偽のソフトウェアをインストールしたり、強制的なリダイレクトやモバイルリダイレクトを行ったり、ブランド詐欺やブランド乗っ取りを試みたりしたためにブロックされた広告は後をたたない。実際、こうした広告の事例は200%以上の増加を記録している。

Lucinda Southern(原文 / 訳:ガリレオ)