生理前の1週間ぐらい、「いつもの私」と違う。頭痛や腹痛、腰痛などの物理的な痛みが出る。イライラする、泣きたくなる、不安でたまらない、精神状態が不安定……。それはPMS(Pre Menstrual Syndrome)かもしれません。

前回、PMSはメンタルの要素が大きいという話を紹介しました。ただ、症状の出方は人それぞれ。それがPMSの症状なのか、ふだんから断続的に生じるものなのか、自分ではわかりにくいところもあります。たとえば、ウツなのかPMSなのか、片頭痛なのかPMSなのか、見分け方のポイントは?婦人科医師、清水なほみ先生に聞きました。

清水なほみ先生。

PROFILE:清水なほみ。「ポートサイド女性総合クリニック ビバリータ」(神奈川県横浜市)院長。2001年、広島大学医学部卒業。日本産婦人科学会専門医。日本不妊カウンセリング学会認定カウンセラー。女性の心と身体の健康に関して多方面に情報発信中。近著に『なぜ口グセを変えるだけでプチ不調が消えるのか!?』(麻布書院)。

いつ、何に対してイライラするのか?

うつ症状なのかPMSなのか、片頭痛なのかPMSなのか?「見分けるポイントは1点。それが起きる時期です。生理前の1〜2週間の時期に限って症状が出るならPMSです」と清水先生。

-----気分がイライラするとか、落ち着かない、集中力が欠ける、といったメンタル症状を訴える人が増えているような気がします。

「PMSがだいぶ社会的に知られてきたこともあると思います。以前からそういう女性はたくさんいたと思いますが、それをガマンするのが当たり前だと思われていたからガマンしていただけ。ただ逆に、メンタルの不調とPMSがごっちゃになってしまう方もいます。

たとえば、些細なことでイライラするという人は、それがどんなとき、何に対してイライラするのか整理してみてください。コンビニのレジの人にもイライラしますか?それとも夫にだけですか?もしだれに対してもイライラするというなら、それは怒りの閾値(いきち)が生理前だけグーッと下がって、すぐ爆発してしまう状態になるので治療が必要です。しかし、夫だけにイライラするのなら、それはPMSではなく他に原因があるでしょうね」

-----イライラするのは夫に対してだけだけど、生理前は特にそれが激しくなるというケースは?

「それもありますね。そのケースは、ふだんは夫に不満があってもぶつけちゃいけないと思って抑制しているけれど、生理前だからイライラをぶつけていいという環境(言い訳)を自らつくっていることになります。このケースも、いったんは薬で症状を抑える診断をしますけれど、根本原因は別にあるので、薬で症状が軽くなっても根本解決の手段は別にあると言えますね」

PMSの治療はカウンセリングから

-----PMSにはどのような治療があるのですか?

「はじめにカウンセリングを行ない、生活習慣に問題が見つかれば生活指導から入ります。たとえば、ものすごく不規則な生活をしているとか、慢性的な睡眠不足、運動不足、栄養不足、またアルコールの飲み過ぎなどの改善から指導します。

お薬は、低用量ピルやホルモン剤、不眠症状のある人は睡眠導入剤、下痢や便秘がひどい人には整腸剤など、症状に合わせて処方されます」

------PMSにもピルが処方されるのですか?

「PMSは排卵によって起きるホルモンの変動が原因なので、ピルで排卵を抑えることで、変動の波が小さくなります。また、PMSは生理痛など月経困難症と併発していることも多く、その治療も兼ねてピルが処方されることがあります」

------PMSも生理痛も、という人は多いような気がします。そして、痛み止めでガマンしていることがほとんどです。

「痛み止めも正しく服用すれば、こわい薬でありません。ただ、PMSや生理痛を市販薬などで対処しているだけだと、生理が来るたびにユーウツな気分になり、その“イヤだな〜”という気分自体がストレス源になっていき、症状を悪化させることになりかねません。

痛み止めでもピルでも正しく服用すれば効き目があり、それを知っていることで、“私は薬によってこの状態をコントロールできる”と思える。それが大事です。自分の状態に対して“主導権を握れる”と思うことで症状も軽くなっていくのです。その意味でも、婦人科でも心療内科でも睡眠外来でもいいので、医師からキチンと正しい知識を得ることが大事だと思います」

次のページでは、清水先生が患者さんの問診に使用しているPMSのチェックシートをご紹介!

「PMSの方は混乱に支配されていたり、自分以外のものに感情や物事をゆだねてしまう傾向があります。以下の項目で当てはまるものがないか、セルフチェックしてみてください」

□自分は「混乱しやすい」と感じていた

□自分の体や人生を自分で「コントロールできない」と感じていた

□女性としての体に違和感を感じていた

□常に一定の自分でいられないことでやらなくて済んだことがあった

□常に一定の自分でいられないことで会わなくていい人がいた

□自分のことを「自立していない」と感じていた

□自分は人から影響を受けやすいと感じていた

□自分の人生は「振り回されている」と感じることがよくあった

PMSの症状を自分で冷静に知るのはむずかしいこと。客観視するためには、記録をつけるのがいちばんです。基礎体温表をネットからダウンロードして基礎体温と、その日の状態や気分、症状などメモしてみましょう。3か月ほど続ければ、自分の症状の傾向が見えてくるでしょう。基礎体温を記録したり排卵日を知らせをしてくれるアプリも出ていますから、いろいろチェックしながら活用してみてください。

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「いつもの自分じゃない」と異変を感じたら、ガマンするだけでなく、だれかに相談したり、婦人科を受診することも考えてください。

ひとりでがまんせず、婦人科でカウンセリングを受けるのもひとつの手。

※本文に記載の医師の見解は全ての方の症状に該当するものではないため、ご自身の症状にあわせて受診されることをおすすめします。

取材・文/佐藤恵菜