#SaveTheCinema「ミニシアターを救え!」プロジェクトの記者会見が15日、オンライン上にて行われた。

新型コロナウィルスの感染拡大に伴い、政府からの自粛要請、さらには先日の緊急事態宣言受けて映画館の上映自粛が決定的になり非常に厳しい状況の中、特に小規模映画館(ミニシアター)は存続の危機を迎えている。

記者会見には、井上淳一(脚本家 映画監督)、岩崎ゆう子(一般社団法人コミュニティシネマセンター事務局長)、上村奈帆(映画監督)、小林三四郎(太秦株式会社)、佐伯俊道(脚本家 協同組合日本シナリオ作家協会理事長)、白石和彌(映画監督)、諏訪敦彦(映画監督)、西原孝至(映画監督)、深田晃司(映画監督 独立映画鍋)、北條誠人(ユーロスペース支配人 一般社団法人コミュニティシネマセンター理事)、馬奈木厳太郎(弁護士 プロデューサー)が出席。ミニシアターが置かれている厳しい現状、国からの支援がない中で生じる経営難、新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から休館・収束後の支援、公的援助について訴えた。

4月6日(月)からの本プロジェクト立ち上げ以降、多くの賛同・応援表明があり、4月14日(火)24時の締切を経て、66,800名以上の署名が集まった。集まった署名と共に国に緊急支援を求める要望書を提出した同プロジェクト。

ユーロスペース支配人/一般社団法人コミュニティシネマセンター理事の北條は「4月7日に発令された7都府県における緊急事態宣言は5月6日まで続く(予定)。休館の状態で、従業員の補助や家賃の支払いなどがあり、多くのミニシアターが廃業を余儀なくされているのが現状です。映画文化の多様性、フィルムメーカーの成長など、未来の映画産業を支えていくにはミニシアターの存在が必要不可欠。その将来のために、支援・公的援助を求めています」と訴えた。

白石和彌

GW明けの5月10日頃に新作映画のクランクインを予定していた白石監督は、「撮影場所の大半が東京都内ではなく長野県を予定していた。緊急事態宣言が出ている最中に『東京から来ることを自粛してほしい』と。映画の準備そのものを5月6日まで停止せざるをえない状況です。いま6月の頭でなんとかクランクインできるかを調整はしていますが、それもかなり厳しい状況です」と現状を告白。

続けて、「僕の組もそうですが、ほかの組も軒並み映画の撮影を中断しています。クルーの9割がフリーランスで支えてくれています。彼らが働く場もなくなっていることと同時に、映画は緊急事態宣言が明けた翌日から開始することは難しい。プロジェクトが動いていないと働き場がないんです。彼らは『いつ自分の元に映画の仕事がやってくるのか』ほぼ見えない状態で途方に暮れています。ミニシアターがなくなると、そこで働くスタッフはもちろん、制作現場で働いていくスタッフの仕事がなくなることにもつながっていく。若いスタッフ、キャリアを積んでいく若手俳優、彼らの土壌が日々奪われていくこと、映画の人材を供給していく根源のようなものが失われていく危機感を日々強く覚えています」と胸の内を明かした。

上村奈帆

若手映画監督の上村は「私と同じように、インディーズや自主制作をしている若手の仲間たちから『ミニシアターを救済したい』という声が多くあります。今月予定した作品の延期、GWに用意していた作品も延期になりました。自分を育ててくれたのはミニシアターです。2年前、ある映画祭で自分の作品を上映していただきました。毎日のように劇場でチラシを配り、映画祭が終わる頃、劇場支配人から『2ヶ月後、1週間空いているから単独公開しませんか?』とお話をいただいたことが嬉しかったです。こうして挑戦させてもらえる場があるから、映画を育てていくことができると思います」と話す。

続けて、「地元にミニシアターがなく幼い頃からの馴染みはありません。この仕事をきっかけに、地方のミニシアターへ行く度に、そのミニシアターの空間自体がものすごくあたたかくて。中学生の頃、学校に行くのが嫌な時期がありましたが、もし当時の自分に『こんな場所があったら…』と、ひとりぼっちな気持ちにならずに居場所を見つけることができたかもなと何度も思いました」と自身の経験を告白。

「ミニシアターという多様な価値観を持ったを必要としている人たちがいます。作り手と観客の交流の場を用意してくれる。その交流から計り知れない喜びや発見がありました。創作する上で大きなエネルギーになっています。劇場の方にいただいた言葉の中で一番忘れられない言葉があります。『私たち映画館は作家を育てる場所なんだよ』と。手をかけ面倒をかけていくことを選んだ方の言葉。ミニシアターがなかったら多くの方々がデビューすることはできなかっただろうし、完成した作品がお客様に届くことなくお蔵入りになっていたと思います。お客様に映画を届けることを通して、作り手の成長を一緒に背負い、一緒に楽しんで挑戦してくれているミニシアターという場所が潰えることのないよう、どうかご関心いただければと思います」と訴えた。

映画配給を担う太秦株式会社の小林は「集客を大きく稼ぐ4期(春・GW・夏・正月)のうち、春からGWまで奪われてしまっている。年間を通して、劇場及び配給にとってとても大きな損失になっています。その損失をどうするか。政府からの対策がありますが、得られたとしても借金です。猶予期間が過ぎたら確実に重くのしかかってきます。ただ、現状の困難を乗り切るためにはそれを活用しなければならない」として、「失礼ながら劇場に残された体力はそうないかもしれない。セーフティネットを活用しなければならないですが、借金返済までの猶予期間、その間に助成の在り方の転換も考えて、今回の融資が文化的視点から免除されるようなシステムも作らなければならないと思います」とコメントした。

馬奈木厳太郎

今後の展開について、弁護士/プロデューサーの馬奈木は「補正予算の審議が来週から始まります。その中で、ミニシアターを救うような内容がどこまで盛り込まれるのか。審議を行う国会議員の方に対する働きかけなどもやっていく必要があると考えています。補正予算が成立した後、この新型コロナウイルスの感染状況が続くようであれば、さらなる必要な対策が出てくると思います。国の支援を待ってられない状況もあるので、『ミニシアター・エイド基金』を立ち上げ、行政の力だけに頼らない施策も進めていく必要があると考えています」と明かした。

また、省庁の反応について「内閣府官房審議官に対応していただいた。現状検討している以上の回答はなかった。省庁を横断して検討して欲しいと伝えた。経産省は、ミニシアターの人と会うのは今日が初めて。実態をご存知ない」とコメント。諏訪監督は「結果から言うと、具体的な対応、アイデアについての話はなかった。厚労省では主にスタッフの雇用状態、何が必要かをかなりリアルに話した。生活衛生課に対応してもらったが、初めてリアルな声を聞けてよかったと言っていた。厚労省においては雇用助成金制度があるが、手続きに時間がかかる。海外では数日で振り込まれると伝えたが、具体的にどう変えて行くという答えはなし。厚労省ではミニシアターを娯楽施設として捉えているので、文化芸術的意義があると伝えた。そのことは受け止めてもらえたと思う。文化庁は、予算がかなり限られている中、ミニシアターは文化芸術拠点として支援されるべきであり、それを行えるのは文化庁であると訴えた。収束後に至るまでできることはないのか。文化庁は製作を援助しているが、上映は別のところが所轄するのはおかしいのではないかと話した。平時からミニシアターを文化庁が管轄するべきだった。ポジティブな話はできたが、今日明らかな回答は得られなかった。今後も話し合いを続けていきたい」とした。

深田晃司

「ミニシアター・エイド基金」発起人の深田監督は、「4月13日の立ち上げから、この2日間で8,000万円以上が集まっています。本当に驚いています。ミニシアターがなくなっては困るという方が潜在的にいる証拠です。これは、ミニシアターだけでなく、映画そのものが応援されていると励まされています」とコメント。続けて、「これはあくまで最終手段であり、本来であれば国が先にセーフティネットを作るべき。フランスや韓国と同じレベルできちんと助成を出していれば1〜2ヶ月で潰れてしまうという状況にはならなかったと思いますし、それは映画業界でも同じで補助する仕組みがずっとかけていました」と説明する。「目標1億円、それをオーバーしてもミニシアターが独り立ちできるようにさらに資金が必要なので、もう少し集めていこうと思っている。ご支援のほど宜しくお願いします」とメッセージを贈った。

「ミニシアター・エイド基金」小規模映画館支援のためのクラウドファンディング:https://motion-gallery.net/projects/minitheateraid

#SaveTheCinema「ミニシアターを救え!」プロジェクト Change.Org:https://bit.ly/2yBA6gZ

映画ランドNEWS - 映画を観に行くなら映画ランド