竹下景子 撮影/吉岡竜紀

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「紙おむつは初めての経験だったので教えてもらいながらやったんですが、“そういえば、こうやって日に何度も替えていたな”って懐かしくなったり。あと、子ども役の赤ちゃんが4〜5か月くらいだったんですが、撮影していくうちに歯が生えたんです! しかも、離乳食を食べるシーンでパクパク食べてくれて“大きくなってるのね”って感動。子育てのいろんな瞬間を思い出しました」

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 妻が70歳でまさかの初産! そんな驚きの展開で始まるドラマ『70才、初めて産みますセブンティウイザン。』で、竹下景子(66)が65歳の年下夫・朝一(小日向文世)との間に子どもを授かった新米ママの夕子役に挑戦。女優人生で初めての役柄に、最初は「びっくりしました」と戸惑いもあったそう。

「70歳で妊娠、出産って話を聞いたこともなかったので、何を手がかりにこの役に入っていけばいいのか試行錯誤しました。でも、それだけにやりがいのある作品だと思ったので、小日向さんとともに、現代を生きるこの65歳と70歳の夫婦の物語をどう着地させるか、すごく気を配りながら演じました」

 劇中では出産シーンも体験。

「帝王切開で生まれるんですが、演技中に小さな赤ちゃんを目の当たりにしたら気持ちが入りすぎて、“あぁ、無事生まれてくれた”って、もう本当に感激しちゃって。さらに主治医を(中村)梅雀さんが演じられているんですが、 “先生、ありがとうございます!”って思わず手を取ってしまいました。梅雀さんは“えっ?”って顔をされていましたが(笑)。あのときの赤ちゃんは、だいぶ大きくなっていると思いますけど、たくさんの感動をもらいましたね」

ぐずった子どもとお手伝いさんが……

 竹下自身も2人の男の子の母として奮闘した思い出が。

「うちは年が2歳半違って男の子なんですが、下の子が生まれて1歳になるまでが、『クイズダービー』などのレギュラー番組もあったりといちばん忙しかったんです。なので、お手伝いさんにお願いして面倒を見てもらっていたので、小さいころは私がというよりも、彼女が育ててくれたようなものなんです」

 そんな日々を送る中、こんな出来事が起こった。

「いつも仕事が終わったらすぐに帰宅していたんですが、その日“ただいま”って帰ったら家がシーンとしていたんです。どこか遊びに行ったのかなと思ったんですが、夕飯時なのでそんなことはないだろうと。そしてダイニングキッチンに行ったら、長男は涙を流したまま、下の子は鼻水を垂らしたまま、お手伝いさんに抱きかかえられて3人で壁にもたれて眠っていたんです。ぐずった2人をあやしているうちにくたびれ果てたんでしょうね。そのときは、お手伝いさんへの感謝と、自分がふがいなく申し訳ないという思いがこみ上げて、号泣しました」

 そのときの思いを、今でも忘れないと話す。

「30年くらい前の話ですけど、私は彼女に本当に助けられたと思います。子育ては仕事を持っていても、いなくても大変なのはわかります。だから家族であったり、近所の人であったり、巻き込める人は巻き込んで子育てをしましょうとよく当時から言っていました。特に今は子どもたちの数も減っていますよね。公的な場所でもいいですし、地域ぐるみでもいい。みんなで見守る環境が増えれば、子どもたちも元気でたくましく育ってくれるんじゃないかと思います」

嗚呼、懐かしき春の思い出

「思い浮かんだのはタンポポのサラダ。よく昔、仲よしのご家族と多摩川の土手に行ってタンポポをつみ、きれいに洗ってサラダにしていました。ちょっとほろ苦く、子どもたちも食べていましたが、すごく好きにはならなかったと思います(笑)。2人とも私のことを母親というより、遊び相手と思ってましたから、よくそうやって散歩に出かけていたのが、春の憩いの時間だったなって思いますね」

プレミアムドラマ『70才、初めて産みますセブンティウイザン。』
4月5日スタート NHK BSプレミアム 日曜夜10時〜