コロナ禍で東京と地方に断絶発生か 帰省する人に厳しい視線

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 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う混乱は、いったんおさまる兆しが見えたような気がしたが、どうも簡単には収束とはいかないようだ。感染者数を都道府県別にみると、都市部に多く発生していることがわかる。そのためか、地方では新型コロナウイルスの受け止め方が都市部とはまだ異なるようだ。そのギャップによって起きるすれ違いについて、ライターの森鷹久氏がレポートする。

【写真】混雑するバスタ新宿の待合室

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「リモートワークにもなったし子供も休校。ちょうどいい機会だからと家族で実家に帰省したんだけど、まさかこんな風に言われるなんて。地元だけど、田舎が嫌いになりそうです」

 と本音を漏らしたのは、筆者と同じ九州出身で都内在住の西本悟さん(仮名・30代)。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、会社は出勤不要のリモートワーク、子供の学校も休校になった、ことをうけて、三月中旬ごろから家族で実家に帰省している。祖父母の温かい眼差しに包まれながら、九州の大自然の中で無邪気に遊びまわる子供を見て「こういう非日常も悪くはない」と思っていた矢先、近隣住人から向けられたのは、考えもしなかった「疑いの目」だった。

「東京から帰ってきたということは、コロナ(感染者)じゃないか。コロナは年寄りを殺すし、なんで帰省させているんだ、両親は近隣住人からそう責め立てられたそうです」(西本さん)

 西本さんも筆者も、この近隣住人の気持ちがわからないわけではない。例えば一月の下旬、中国・武漢で新型コロナウイルスの爆発的感染拡大が明らかになると、電車内で中国人観光客を見るだけで、得体の知れぬ不安に襲われた。マスクをせずに咳をする人を見れば、なんと無神経だと腹が立った。武漢からチャーター便で帰国した人々の一時滞在先にもなった千葉県内のホテルでは、近隣住人からも不満の声が相次いだことも記憶に新しい。

「はっきり言って、全て他人事だったんだと思います。今こうして、東京の人間だというだけで敬遠されて初めて、差別について、そしてウイルスや感染症の本当の怖さについて知った気持ちになります」(西本さん)

 筆者の地元在住の友人も、差別するわけではないが、という前提の上で次のように話す。

「ここに来てうちの県からも感染者が出て、どこの誰が感染者ではないかとあっという間に噂が広まった。そしてついに感染者が誰か発覚すると、こんな時期に遊びまわっていたからとか、家族は何をしていたんだとか、身内までバッシングに晒されている。感染者に重篤な症状は出ていないようだが、ウイルスに関する怖さは確かにある。今、都心に住むお前(筆者)が帰ってきて一緒に飲もうと誘われたら、悪いけど少し考えると思う」(筆者の友人)

 未だ感染者がゼロの中国地方某県在住の堀田良子さん(20代・仮名)は、三月最後の週末、友人の結婚パーティーに参加するため、羽田空港に降り立った。彼女が口にしたのは、やはり「コロナ」に対する不安だ。

「東京はコロナウイルスが蔓延しているようなイメージで、家族にも行くなと止められてました。私も相当迷いましたが、仲の良い友人の結婚パーティーだし、割と覚悟を持ってきました。驚いたのは、マスクはしているものの、みんなが普通に暮らしていること。電車も多くの人が乗ってるし、居酒屋にもたくさん人がいます。地方在住で、ニュースしか見ていない私たちが想像していた東京のイメージとはだいぶ違いました」(堀田さん)

 パーティーは、当初参加する予定だった知人らの複数人が直前になってキャンセルし、一波乱もあったと話す。

「地元の友人が数人、行くのをやめたんです。結婚する友人はきて欲しいと思っていましたが、やむなしという感じだったのに、パーティー幹事の同級生が“怖がりすぎ”とか“情報に疎すぎ”、来ないなんてありえないと怒ってしまって。せっかくの楽しい集まりだったはずなのに、長い友人関係にひびが入るようなことになって残念です」(堀田さん)

 新型ウイルス感染者は増え続け、世界的に見ても感染だけでなく死亡者も増加の一途を辿る。国内では、ついに高齢者を中心とした重篤病罹患者だけでなく、若者の感染、重症化も報告され始めている。ウイルスの恐ろしさが日に日に明らかになってきている印象ではあるが、そんな混乱に振り回されて、良好だった人間関係まで破綻する、というのはただただ悲劇という他ない