「新型コロナウイルスへの従業員の感染」公表した上場企業の業種別

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時差出勤や在宅勤務など取り組み急ぐ、感染症などに対するBCP対策にも課題

 帝国データバンクの調べでは、グループ会社や関連会社を含め新型コロナウイルスに感染した従業員が判明した上場企業は、4月2日正午時点までに累計115社に上った。国内で感染者が相次いだ2月以降、従業員を多く抱える国内上場企業でも影響が及んだケースが相次いだ。3月以降も公表が相次ぎ、4月1日だけでも上場10社以上が従業員の感染を公表している。

 業種別に見ると、最も多かったのは持株会社などを抱える「金融・保険業」(37社)。次いで「製造業」(28社)、「サービス業」(16社)が続く。当初は、特に接客などで不特定多数に接触する小売業やサービス業、運輸業などで従業員の感染を公表するケースが多かった。しかし、3月後半には製造業などB to B企業でも公表したケースが多く見られている。

 新型コロナウイルスに従業員が感染した場合、行動履歴の確認や濃厚接触者の特定のほか、各地域の保健所との連携など、新たな負担が生じる。加えて、事業所の一時閉鎖・消毒作業の実施、接客業では営業活動の停止にまで至るケースも多く、企業経営に少なくない影響を及ぼしている。そのため、企業側では新型コロナウイルスにより、従業員や生産体制に緊急事態が生じても業務を円滑にできるよう、事業計画を策定する必要に迫られている。

感染症発生など緊急時の事業継続計画(BCP)、 策定企業は全体の半数に満たず

 一方で、帝国データバンクが2019年に行った調査では、有効回答を寄せた約9500社のうち、緊急事態が発生した際の事業継続計画(BCP)を策定した企業は僅かに15%。「策定中」「策定を検討している」を合わせても45.5%にとどまった。策定済の企業のなかでも、新型インフルエンザなど感染症をリスクとした企業は24.9%と低かった。かつて重症急性呼吸器症候群(SARS)の流行時にも、従業員の感染などいざというときの備えの必要性について議論が高まっていた。しかし、実際の取り組みは自然災害の対応に比べて進んでいないのが現状だ。

 新型コロナウイルスの感染拡大に収束が見通せず、影響は長期化する兆しを見せている。感染による自社への影響を最小限に抑えるためにも、各企業で感染症リスクに対する行動指針の見直しが急務となっている。