太陽の極を目指す観測機・JEDI契約が差止めへ・Amazonドアカメラ、防犯の実績不明: #egjp 週末版203
過去1週間で拾いきれなかったけど気になったニュースをダイジェスト形式でお届けします。今週は「太陽の極を目指すESAとNASAの観測機」「AmazonがMSのJEDI契約が差止め」「Amazonドアカメラ、防犯の実績集計されず」をはじめとする5つの話題をまとめました。おひま潰しにどうぞ。

ESAとNASAの観測機、太陽へ向かう



ESA(欧州宇宙機関)とNASAが共同開発した太陽観測機Solar Orbiter(SolO)が2月9日に打ち上げられました。2年後には太陽に接近し、磁場の発生の仕方や太陽風が届く太陽圏がどのように形成されるのかといった、いまだ謎のまま残されている太陽にまつわる事柄を探査します。

SolOは地球からも見える太陽の赤道方向からではなく、極方向へ回り込んでの観測を行います。太陽の極は11年ごとに正負が入れ替わり、それによって太陽活動も周期的に変化します。

最短で0.28au(1auは太陽と地球の距離で約1.5億km)まで接近するため、機体温度は580℃にまで上昇すると予想されます。このためSolOは、SolarBlackと称する特殊な素材でコーティングしたチタン製のシールドを装備して約600℃まで耐えられるように作られました。それでも太陽の黒点周辺で発生する太陽フレアが放出するプラズマや高エネルギー粒子は観測機を危険にさらすかもしれません。しかしそこで収集されるデータは将来月へ向かう飛行士たちの安全性を高めるために役立てられるはずです。

米連邦裁判所、AmazonによるMSのJEDI契約差し止め請求を認める



米Amazonが、マイクロソフトが勝ち取った国防総省のクラウドサービスJEDI(Joint Enterprise Defense Infrastructure)の契約に待ったをかけました。Amazonは、CEOのジェフ・ベゾスが現政権に批判的なニュースメディアWashington Postを所有しているために、トランプ大統領からの「不適切な圧力」が契約に影響したと主張しています。

JEDIは国防総省のクラウドインフラをアップデートすることを目的としており、その最終候補としてAmazon とマイクロソフトが争っていました。当初の情勢はAmazon有利とされていたものの、蓋を開けてみれば大方の予想を裏切ってのマイクロフト勝利という結果。

しかしAmazonは納得がいかず、トランプ大統領からの度重なる公の、そして水面下での妨害工作がJEDIの契約からジェフ・ベゾスのサービスを遠ざけたと主張。「紛れもないバイアス」が疑われるとして2020年1月にマイクロソフトのJEDIでの作業を一時停止するよう裁判所に訴え出ました。

2月13日、連邦裁判所判事はアマゾンからの訴えを受理し、JEDIの一時的な差し止めを命じたとCNBCは伝えています。Amazonは、トランプ大統領、マーク・エスパー国防長官、ジェームズ・マティス元国防長官への質問を求めています。差し止め請求が認められたところで、最終的にJEDI契約が仕切り直しになるかはわかりませんが、何らかの影響は与えそうです。

米国とHuaweiの対立深まる


2月12日、米国司法省はHuaweiと米国の2つの子会社に対し、企業秘密の取得と恐喝の準備をしていたとして16件もの告発を行いました。ファーウェイには2019年1月にも企業秘密関連の告発がなされており、さらに最高財務責任者(CFO)が詐欺罪で訴えられています。

今回の告発は米国内の匿名企業6社と秘密保持契約を結びながらそれを無視し、授業員を利用して企業秘密その他を取得したとのこと。Huaweiは他社の企業秘密を入手した社員にはボーナスを支給していたとも述べています。こうした企てによりHuaweiはルーターのソースコードや携帯電話用のアンテナ技術、ロボット工学に関する機密情報などを入手、研究開発コストの大幅削減と巨総力を手にしたとのこと。

一方のHuaweiは、声明を発表し司法省の告発は大半が過去に解決した民事紛争に基づいたものだと主張、アップルやサムスンが過去10年間で500〜600件前後の知的財産権訴訟に関与したのに対し、Huaweiは同じ期間で209件しか知的財産権訴訟を提起されていないと述べ、米司法省が「業界で一般的な民事知的財産紛争」を、ことファーウェイについては刑事訴訟として提起していると主張しました。

またHuaweiは米国内での1万1152件を含む8万7805件の特許をこれまでに取得してきたとし、それ以外にも他企業との60億ドルのIPライセンスのうち80%を米国企業に支払っていると述べました。ただ、米司法省の告発には、Huawei が北朝鮮とイラン政府がそれぞれの国民に対するスパイ活動を支援したというものが含まれますが、これについての反論はありませんでした。

ともかくHuaweiは「我々を攻撃しても米国が競争で優位に立つことはなく、嘘をくり返してもそれが真実になることはない」と自信満々です。

ロサンゼルスで電気消防車導入へ


ロサンゼルス市消防局(LAFD)が、北米初の電気式消防車を購入し、2021年より導入します。この消防車はオーストリアの消防車メーカーRosenbauerが発表したConcept Fire Truck (CFT)をベースとするもの。CFTはコンセプトと名前に入っているものの2016年に発表されて以降、オーストリア国内から北欧、アメリカ西海岸を巡ってデモンストレーションを行ってきました。

CFTには100kWhのバッテリー2基が搭載され、約2時間のオペレーションに対応します。そして延焼が続く場合など追加の動力が必要な場合のためにはディーゼル発電機も搭載しています。車両本体価格は600万ドル(約6.6億円)で決して安いものではありませんが、LAFDの局長ラルフ・テラザス氏は実際の火災時に評価することを楽しみにしている」と述べ、2021年に車両が納入されればすぐにも現場へ投入する意気込みです。

Amazon子会社のネットワークドアカメラRing、犯罪抑止効果なし


2018年にAmazonが買収した防犯カメラ兼ドアベルメーカーRingは、フロリダ州ウィンターパークの町を対象としたプロモーションを行い、約3万人が住むこの町には地元警察と提携するRingドアカメラが地域の強盗犯罪を50%削減するだろうと宣伝しました。

しかし、ウィンターパーク警察署の広報担当は、2018年4月にRingと提携して以来、カメラからの映像が事件解決の決め手になった例を確認していないと述べました。そしてNBC Newsが調べたところ、ウィンターパークと同様に、少なくとも3か月以上、Ringと提携してきた8州40法執行機関のうち、強盗発生を50%抑制するという主張を裏付ける具体的な証拠はほぼないことがわかりました。

実際のところ、13の機関で映像を手がかりとした事件解決があり、2機関では事件の大まかなヒントになる事例があったとされます。しかし、それ以外の13の警察では映像を根拠とした逮捕件数はゼロで、残りはRing導入の結果を把握すらしていませんでした。さらにRing導入の効果を集計分析した警察はなく、全体の約1/4がRingが「犯罪を抑止したと信じる」と述べたものの、具体的なデータとしては何も残ってはいませんでした。

ある法執行機関によれば、Ringのカメラ映像にアクセスするのは簡単ではあるものの、大量に送られてくる映像の大半には些細なことで言い争う隣人らの映像や、アライグマのケンカなどが映っているばかりだったとのことで、大量に積もっていく映像のほとんどがレビューする価値もないものだったことが窺えます。

AmazonはCNBCに対し、Ringがたとえば置き配窃盗をどれぐらい抑制できたかのデータ提供を拒否しました。その一方で盗難被害に遭わないよう、Amazon Locker +やAmazon Counter(提携店舗受け取り)の利用を勧めています。またRing自身もRingカメラによる荷物の盗難抑制効果がどれほどかは把握できて折らず、窃盗犯を特定できる例はあまりないと述べました。

結局のところ、Ringカメラは実際に映像を撮影する機能を備えつつも、コンビニやスーパーほか小売店でよくみかける「防犯カメラ作動中」のステッカー程度の抑止効果しかないのかもしれません。
Source: 1.NASA, 2.CNBC, 3.Huawei, 4.LAFD, 5.NBC News