「臓器提供追悼バンド」とは?

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 中国の四川省重慶市で、英語教師のオーストラリア人男性が死亡したことに伴うエピソードが話題となっている。男性の肝臓や腎臓、角膜の臓器移植を受けた同市在住の中国人の男女5人がバンドを結成。彼の人生を称える曲をつくり、今年3月には記念コンサートを開催することになったのだ。

 最近では中国各地のテレビ局や新聞などでも取り上げられるなど人々の共感を呼んでおり、中国全土では昨年末現在、臓器提供希望の登録者数(ドナー登録)が170万人に。これは、2018年5月時点の登録者数と比べると4倍以上の人数である。

 臓器を提供した男性は重慶市の中国西南大学の英語教師だったフィリップ・ハンコック氏で、2018年5月、同市内の病院に入院中に糖尿病の合併症で亡くなった。まだ、27歳の若さだった。

 ハンコック氏はオーストラリアの大学で中国語を学び、大学主催の中国語の弁論大会で優勝。中国文化にも興味を持っていた彼は中国西南大学の英語教師の公募で採用され、同大で英語を教え始めた。しかし、持病の糖尿病が進行したことから、自らの死期が近いことを悟り、ドナー登録をしたという。

 重慶を訪れたハンコック氏の両親がそれを知り、臓器提供の誓約書に署名した際、父親は中国臓器管理協会の担当者に対して、「息子は音楽にも興味があり、よくギターを弾いていた。息子は生前、『バンドを組んで中国全土を回りたい』などと話をしていた」と語っていた。

 担当者はハンコック氏の腎臓(一対)や肝臓、角膜の移植を受けることになった重慶市内の中国人男女5人に「ハンコック氏の夢はバンドを組んで演奏することだった」などと伝えた。そんなことから、5人は移植手術後、5人でバンドを組んで演奏旅行をやりたいと決意したという。

 5人のうちの一人がギター演奏に習熟していることからリーダーになり、楽器演奏の経験がない他の4人の先生役になり、いまでは簡単な曲ならば演奏できるようになったという。メンバーはバンドの名前を「BAND for ONE」と名付け、今年3月に南京市での中国臓器管理協会主催の演奏会でデビューする予定だ。すでに、ハンコック氏を称える曲も2曲作成しており、いまは練習に余念がないという。

 5人のうちの一人で、視覚障害者だった男性は中国メディアに「ハンコックさん、私にもう一度光を見せてくれてありがとう。私が死ぬとき、私の臓器が役に立つなら、あなたと同じように、私も喜んで提供するつもりだ」などと感謝の気持ちを表している。

 また、ハンコック氏の父親はバンド結成を知り、息子に充てて次のような一文を発表している。

「あなたの臓器を提供された5人の方々は、いまでは私たちの家族の一員であり、私は彼らがあなたを愛し、私たちが行うのとほぼ同じくらいあなたの人生を祝いたいと思っていることを知っています。彼らはあなたの寛大さと愛を称えるために、素晴らしい音楽グループを形成し、あなたの生前の希望をかなえようとしているのです」