現在の結婚式のトレンドとは?(写真:kyopro/PIXTA)

令和元年、そして、来る2020年――。人々の生活や、生き方、価値観の多様化が、実感として捉えられることができるようになった新しい時代において、これまでの時代が作ってきた結婚式の役割はどのように変化するのでしょうか。

10年タームでトレンドを捉えることができる

皆さんが、最後に結婚式に出席されたのはいつで、それはどんな結婚式でしたか? 読者の年代によって、この質問の答えは意外とばらつくのではないでしょうか。数年出席していない方にとって、「結婚式」のイメージはどのようなものでしょうか。考えられている結婚式のイメージと、現在の結婚式の内容は少し違ってきているかもしれません。

結婚式は性質上、洋服やバッグなどのようにトレンドの移り変わりが激しい領域ではありませんが、時代と世代による価値観の変化を受けて、少しずつ小さな変化を重ねています。前年と比較するだけではその変化を色濃く捉えることは難しいのですが、おおよそ10年単位で比較すると、移り変わりが見えてきます。

例えば1980年代。経済成長から好景気の影響を受けて、豪華な見た目が印象的な「派手婚」が一般的になりました。そして、バブルの終焉を迎えた1990年代には、派手なことを避け、2人の納得感を重視する「地味婚」と称されるスタイルも選択肢として生まれてきました。

続く2000年代はインターネットの普及により日本でも広く知られるようになった海外のウエディングのような一軒家貸し切りスタイルのゲストハウスが全国各地に次々オープンし、2人のオリジナリティーを表現できる「アットホーム婚」がトレンドになりました。

そして、2010年代は、東日本大震災の影響や、多様な価値観の広がりにより、結婚式の「見た目」のスタイルだけではなく、式のプログラムや内容から、ゲストに感謝を伝え、参列者との絆を確かめあうことを重視した「つながり婚」が広がってきました。

2020年を迎えようとする今結婚式はどうなっていくのでしょうか?

2016(平成28)年の内閣府による調べでは、年間婚姻件数は62万531組、婚姻率(人口1000人当たりの婚姻件数)は5.0%と過去最低を記録しています。2013(平成25)年版厚生労働白書によると、「人は結婚するのが当たり前だ」という結婚観は1984年61.9%だったのに対し、2008年には35%にまで減少しています。

結婚は「する」「しない」を選択する時代になり、結婚式もしなければならないものではなくなっています。だからこそ結婚式自体も、「そういうものだから」としきたりや決まり事に縛られることなく、結婚を決めた2人が、それぞれの気持ちを真ん中に置いて、やるか、やらないか、やることを決めた先にはどんな時間にしたいか、から考えることが一般的になってきました。

具体的には…?

昔から使われている披露宴という言葉が現わしているような「立派な2人を披露する」ことを重視した結婚式ではないので、スタイルや時間の使い方、取り入れる演出の種類や数も、多種多様です。


両親に感謝の気持ちを伝える「子育て卒業証書」

例えば、ゲストに自分たちのことを知ってもらいたい、感謝の意味を込めたプロフィールブックの配布やプロフィールムービーの上映。

新婦から両親に宛てた感謝の手紙を読むスタイルから、新郎を含めお互いの両親に感謝の気持ちを伝える「子育て卒業証書」を渡したり、父親同士のファーストバイトを実施したり。


軽井沢のキャンプ場で、野外ウエディングをした後に、参加者でBBQとキャンプファイヤーをしたカップル

このほかにも、せっかく大切な人に集まってもらうのだからみんなで思いっきり遊びたいという気持ちから「運動会」を結婚式に取り入れたり、「BBQスタイル」で和気あいあいと親睦を深めたり、結婚式を出入り自由にしたり……「結婚式」と称してできることの幅が、年々広がっています。

また、挙式、披露宴・披露パーティーにかける費用は平均354.9万円と2013年(調査)の340.4万円から増加傾向にあります。一方で招待客の平均は66.3人と2013年の73.1人から年々減少傾向にあります。

結婚式・披露パーティーの総額をゲスト1人当たりに換算したときの平均額は、2016年に6万円台(6.2万円)に乗ってから2017年は6.4万円、2018年に6.5万円、2019年6.8万円と5年連続で増加。料理や飲み物など「ゲストに対してのおもてなし」につながる項目は、年々金額が高まっています(「結婚トレンド調査」2019年より)。


そんな多様な式スタイルが広がる昨今、結婚式をすることを選ぶ人に共通することはなにか。それは、誓いの時間を大切に考えているということです。誓いというと、チャペルや神社など厳かな空間をまず想像される方が多いかもしれませんが、どんな空間かにかかわらず、きちんと、2人の言葉で誓いを立て、決意を形にすることを重視するカップルが増えてきています。

例えば、最近増加傾向にある「人前式」と呼ばれる挙式スタイルでは、キリスト教や神前式のように神様に誓うのではなく、家族や友人などのゲストに誓いを立てます。誓いの言葉もテンプレートに沿ったものではなく、自分たちの言葉でゼロから考える方も多くなっています。

また、2人が誓い合うだけではなく、神父役を友人がやったり、誓いの言葉を書いた紙に家族や友人がサインしたり、ゲストを巻き込んで承認をお願いするセレモニーも一般的になってきています。


友人が神父役を務める例もある

では、なぜ今、誓いを重視する人が多いのか。逆説的になるかもしれませんが、これまでお伝えしてきたとおり、結婚すること自体がこれまで以上に2人の決意にひも付くスタートとなっているからだと捉えることができます。

「そうするものだから」を起点に式を執り行っていない分、2人の人生の大きな結び目として、誓うこと、決意を形にすることへの意義が高まっているといえます。

「こうあるべき」は変わってくる

ここまで時代とともに変化してきた結婚式の変遷に加え、現在の結婚式で重視されていることについて述べてきましたが、どのように感じられましたでしょうか。新しく広がる結婚式の形に賛同する人も、いや、そんなにお金をかけてまで……と感じる人もいらっしゃるかと想像します。

結婚することも、それぞれの選択に委ねられている今、結婚式が2人の選択によるものであることはもはや当たり前のことです。ただ、大切な人、大好きな人が集って、楽しい時間を過ごせる1日は、時代の移り変わりに関係なく、色濃い時間になるでしょう。

生きる道筋もさらに広がり、リアルな関わりがある場はこの10年で、ぐっと貴重なものとなりました。そんな時代がさらに進んでいくからこそ結婚式も例外なく「こうあるべき」のイメージを覆す時が来ています。結婚式と称してできることはどんどん広がっていくでしょう。