4人組ロックバンドのTHE ORAL CIGARETTES(以下オーラル)が11月11日、Zepp Tokyoで対バンツアー『COUPLING TOUR BKW!! STRIKES BACK 2019』の東京公演をおこなった。ツアーは11月11日の東京公演を皮切りに、26日の愛知・Zepp Nagoyaまで全国5公演をおこなうというもの。ツアー初日となった東京はKICK THE CAN CREWとのツーマン。そのライブの模様を以下にレポートする。【取材=村上順一】

KICK THE CAN CREW

KICK THE CAN CREW【Viola Kam (V’z Twinkle Photography)】

 フロアは隙間も見当たらないほどの人で埋め尽くされているなか、まずはKICK THE CAN CREWがステージに登場。日本のラップミュージックの概念を変えたといっても過言ではない3人よる、密度の濃いステージは、過去曲のタイトルや歌詞が含まれた彼らの復活ナンバーとなった「千%」で一気にオーディエンスの心を掴んだ。

 KREVAは「ついてきてくれ!」と「GOOD TIME!」や「TORIIIIIICO!」を投下。LITTLE、KREVA、MCU3人のスタイルの違いを明確に感じられる展開で、ラップの持つ様々な魅力を存分に打ち出し、乾いたタイトなビートが大きな渦を作っていく。

 「sayonara sayonara」に続いて「ここで静かな曲をやりましょうか」とミディアムチューンの「ユートピア」を届けた。青と白のライティングが混ざるステージで、しっかりとメッセージを乗せていく。2000年頃に作られたというこの曲、KICK THE CAN CREWの3人がオーラルの今の年齢と同じ頃に作った曲ということで、選曲したと明かした。

 MCではオーラルメンバーと対面した話題で盛り上がった。山中はKICK THE CAN CREWのライブをプライベートでも観に行くほど彼らをリスペクトしているが、この日の挨拶でオーラルの山中拓也(Vo.Gt)は“No Respect”と書かれた服を着ていってしまい、KREVAに突っ込まれるというエピソードに会場は笑いに包まれた。

 ライブは後半戦へ。昨年リリースされ愛をテーマにしたナンバー「住所 feat.岡村靖幸」を披露。一緒に盛り上がりたいと、オーディエンスにコールをしてもらうパートをレクチャーし、<in the house>という歌詞の言葉から、野外フェスでなかなか出来なかったというコール&レスポンスが出来ることに嬉しそうなメンバー。この曲でコラボした岡村靖幸のパートをKREVAが担当。サビではオーディエンスもリズムに合わせ腕を左右に振り上げる美しい光景がフロアに広がった。

 日本人に馴染みの深い三三七拍子を取り入れた、リズミックなクラップが印象的なナンバー「地球ブルース〜337〜」を投下。勝手に身体が反応してしまうキャッチーな楽曲に心地よさを感じながら、2002年リリースの代表曲「アンバランス」、ダメ押しにラストはバックトラックが印象的な「マルシェ」。<上がってんの?、下がってんの?> と歌詞にリンクしたかのように、フロアは上下にリズムを刻む腕で埋め尽くされる絶景が広がるなか、最高の状態でオーラルへと繋いだ。

THE ORAL CIGARETTES「どんなバンドにも負けたくない!」

THE ORAL CIGARETTES【Viola Kam (V’z Twinkle Photography)】

  「素敵な夜にしましょう」

 恒例の4本打ちに続いて、山中の言葉から始まったオーラルのステージの幕開けは意外な曲からのスタートだった。今のオーラルの自由に音楽を楽しむ姿勢が表れていた幕開けと言ってもいいだろう。そして、我々を煽情するようなドラマチックな展開からのアップチューンへの爆発力は凄まじいほどの熱を放っていた。

 ホールとはまた違ったライブハウスならではのエネルギーが充満するなか、山中は攻撃的な言葉をオーディエンスに浴びせていく。「ガツガツ責めるから、掛かってらっしゃい!」とキラーチューンで畳み掛ける。付け入る隙を与えない怒涛のステージに「もうバテたんですか?」とオーディエンスを煽る山中。その言葉に即座に反応し、打ち返すようにテンションを高めていくオーディエンス。

 その火を付けたのは「PSYCHOPATH」や「狂乱 Hey Kids!!」といったライブでは欠かすことの出来ないアップチューンたち。それらが投下されると水を得た魚のように、オーディエンスもクラウドサーフィングで、バンドの放つサウンドに応えていく。

 大阪で開催された9月の野外イベント『PARASITE DEJAVU 〜2DAYS OPEN AIR SHOW〜』を経てさらにバンドのスケール感が増しているのがわかる。Zeppからエナジーが溢れ出し、行き場をなくしているかのような高揚感があった。そして、アグレッシブな空気を断ち切ったのが「僕は夢を見る(Redone)」だ。エレクトロ要素も取り入れたオーラルの幅、懐の深さを見せてくれる1曲。カッコいいものは何でも取り入れる、というオーラルの精神を感じさせてくれた瞬間だった。

 山中は「一人ひとりの力があって今日があります。バンドをやってきて良かった。どんなバンドにも負けたくない。こんなところで止まっていられない、挑戦し続けていきます。味方がいて良かった――」と、これからの決意表明とも言える言葉。

「これからもあなた達の力を貸してください」

 ここで繰り広げられるリアルはバンドとオーディエンスとの5年間のシナジーだ。それはバンドだけでも出せるものではなく、オーディエンスのパワーを巻き込んで作り上げていく。“人と人との奇跡”を感じさせる空間がそこにはあった。

 メロウな曲からアグレッシブなナンバーまで、高水準な楽曲を次々と投下するオーラル。気がつけば電光石火の如くあっという間に本編を終了。清々しいまでの充実した時間を提供してくれた。アンコールでは「ワガママで誤魔化さないで」などボルテージを高めてくれるナンバーを披露し、対バンツアー初日を、リスペクトするKICK THE CAN CREWとともに最高のカタチで締めくくった。

 この日のMCで「色んなジャンルの音楽を皆さんと一緒に楽しみたいというバンドなので、それを伝えるツアーにしていきたい」、「音楽はずっと先輩から続いてきているもの」ということを語った山中。このツアーで対バンしていく“本物”との競演で『BKW!! STRIKES BACK』に込められた意志を体現していくだろう。

COUPLING TOUR BKW!! STRIKES BACK 2019

11/11(月)Zepp Tokyo w/KICK THE CAN CREW
11/13(水)Zepp Sapporo w/[ALEXANDROS]
11/19(火)Zepp Fukuoka w/マキシマム ザ ホルモン(出演キャンセル)
11/21(木)Zepp Osaka Bayside w/氣志團
11/26(火)Zepp Nagoya w/HYDE

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