概して、企業が商品をローンチして半年でそれをリブランドするというのは良い兆候ではない。だが、Amazonの広告支援型のストリーミングサービスを、IMDbフリーダイブ(IMDb Freedive)からIMDb TVとしてリブランドすることを決断したのは、Amazonが広告主やエージェンシーからの前払いの報酬を受けるために行なった最初の賭けとして、IMDb TVを中核に据えた直後のことだった。

Amazonが広告支援型のストリーミング動画サービスであるIMDb TVを売り込みはじめたのは、公式にサービスがはじまる前の2018年だった。だが、この売り込み、ならびにAmazonの広範囲にわたる動画広告の売り込みが加速したのは、このサービスが立ち上がった2019年1月以降になってからだった。2019年6月17日、AmazonはIMDbフリーダイブという名前を変更して、IMDb TVとしてリブランドし、映画やテレビなどのカタログを大きく拡大していくことを発表した。

IMDb TVのインベントリは、Amazonが自身のデマンドサイドプラットフォーム(DSP)を通じて広告主に提供しているインベントリにまとめることも可能だったが、eコマース最大手であるAmazonは、広告主やエージェンシーからの先払いの報酬目当てにした最初の賭けとして、IMDbを基軸に据えたと、バイヤーは語る。そして、リブランドすることで活性化に繋がることを予想している。「名前を変えてリブランドすることで、間違いなく勢いづくだろう」と、PMGでブランドメディアディレクターのナタリー・ゲルダート氏は語る。

注目度は未知数



マインドシェア(Mindshare)において、アメリカでのデジタル投資部門を率いるクリスティン・ピーターソン氏は、Amazonの動画広告の売り込みについて、「かなりの話題を集めている」と語った。

だが、Amazonが広告主をIMDb TVに惹きつけられるどうかは注目されるところであり、広告主に対してどのようなサービスを提供できるかについても、それは同様だ。Amazonは、2019年内における報酬の先払い交渉において、IMDb TVをその考慮集合のなかにがっちり据えたい一方で、それが本当に現実のものとなるかは「見届ける必要がある」と、ピーターソン氏は語る。彼は、交渉の最中にエージェンシーのアップフロント戦略を深く掘り下げることは望んでいなかった。

IMDb TVは立ち上がってからまだ間もないが、AT&Tやキャピタルワン(Capital One)、ペプシコ(PepsiCo)、P&Gやベライゾン(Verizon)などの主要な広告主は、映画や番組の途中に15秒や30秒のブランド広告を挿し込む形で運用している。

メリットとデメリット



広告主がIMDb TVに興味を示す理由は明らかだ。新参者にとっては、IMDbが提供する番組は実績があり、ブランドセーフティも保たれている。さらに2019年にはコンテンツを3倍に増やす計画もあり、「ラ・ラ・ランド(La La Land)」や「ア・ナイツ・テール(A Knight’s Tale)」などの映画も追加される予定だ。これらの番組や映画はすでにオリジナル版でレーティングが指定されているため、広告主はどの番組で広告を出すのが良いかについて、標準的な管理を適用することができる。たとえば、G指定やPG指定などの映画にだけ広告を出したり、特定のジャンルのコンテンツ内では広告の運用をブロックできると、ピーターソン氏は語る。さらに、広告主はIMDb TVの広告をAmazonのDSPを通じて購入できるため、スタンドアローンという選択肢ではないにせよ、広告主が自社のショッパーデータをもとにして、サービス上の広告をターゲティングできる。また、ニールセン社のデジタル広告視聴率データを活用して、個々のキャンペーンごとに独立した計測を行うこともできる。

だが、サービスが提供できるスケールのレベルやパフォーマンスに関して、またAmazonの広大なプラットフォームが持つ利点を最大限活用できる機会があるかどうかについて、広告バイヤーたちはまだ疑問をもっている。IMDb TVのオーディエンスの数については、「回答をもらい、外部、つまりサードパーティのメトリクスを通して検証してもらう必要のある疑問点のひとつだ」と、ピーターソン氏は語った。そして彼は、これはあらゆる広告支援型のプラットフォームが直面する課題だという。

IMDb TVが直面している課題はまだある。IMDb TVは過去の映画やテレビ番組など、非独占的なコンテンツを取り扱う、この市場に数多くある、広告支援型の無料の動画サービスのひとつにすぎない。ほかにもロク(Roku)が提供するロクチャンネル(Roku Channel)や、ウォルマート(Walmart)のブードゥ(Vudu)やトゥビ(Tubi)などのサービスがある。加えて、このサービスのブランディングによって、広告主がオーディエンスを増やす力の妨げとなってしまう可能性もある。IMDbはテレビや映画の熱狂的なファンのあいだでは強い信頼を獲得しており、「多くの人がエンタメの情報収集のためにIMDbを訪れているが、必ずしもそこストリーミングサービスの提供元としては見ていない。そして、ほとんどの人はそれがAmazonのプラットフォームの一部であることすら知らない」と、デジタス(Digitas)のバイスプレジデントとメディア部門のグループディレクターを兼任するジェニー・シャウアー氏は語る。

プライムとの差別化



Amazonは、IMDbのウェブサイト上での運用に加えて、自身のプライム・ビデオ(Prime Video)のストリーミングサービス内でIMDb TVの特集を組むことで、この部門を構築しようとしているようだ。IMDb TVをプライム・ビデオ内で包括することで、広告主に対して、広告のないサービスであるプライム・ビデオの視聴者にリーチする機会を与えることができる。「(IMDb TVをプライム・ビデオに組み入れることは)オーディエンスがセットでついてくるようなものだ。私は、売り込み目的でこれをもっとやってこなかったことに驚いている。自分自身がプライム会員ならば、これはある意味、目に見えにくいことだ」と、ピーターソン氏は言う。そして、驚いていたのは彼女だけではなかった。

「ある日考えごとをしていて思ったのは、これはもう起きていることなのか? ということだ」と、IMDb TVについて語るのは、コンサルティング企業のTVレブ(TVRev)の共同創設者でありリードアナリストを務める、アラン・ウォーク氏だ。「彼らはこれをどう扱ってよいものか、理解できていないようだったが、これには非常に驚いた。Amazonにログインするたびにマーケティングしてくるものだろうと考えていたが、実際はそうではなかった」。

Amazonは、IMDb TVと自身の広大なプラットフォームとのあいだに、一定の距離を保っているように見える。Amazonの広報によると、現在広告主は、商品の購入やAmazonのショッピングカートに商品を入れるといった行動喚起を、IMDb向けの広告に埋め込むことはできない。だが、IMDb TV はAmazonのプラットフォームに近いため、広告バイヤーはクライアントのキャンペーンに向けて、より近距離で狙いを定めることができる。Amazonのeコマースのプラットフォームと深いつながりを持てる可能性があるため、ゲルダート氏は、連休の買い物シーズンに際して、IMDb TVが小売関連の広告主にとって「広告掲載や戦略的なおすすめ以上の利点となる」と見ている。

「IMDb TVがどのような成果を見せてくれるのかを語るにはまだ早いが、利点も欠点も両方あることを考えても、IMDb TVどれくらい続くかについての業界の反応は、慎重かつ楽天的だといっても良いだろう」と、シャウアー氏は語った。

Tim Peterson(原文 / 訳:Conyac)