吉野家と出会い飛躍、睡眠テックベンチャーの雄が実現したいこと
ただ、創業期から順風満帆だったわけではない。小林孝徳社長は創業当時の2013年頃について「企業にとって従業員の睡眠はプライベートという概念だった。仕事の生産性と関連付けられず見向きもされなかった」と振り返る。その状況を変えたのは牛丼の吉野家との出会いだ。小売りや外食などのシフト勤務は決まった時間に働く人に比べ、生活が不規則になりやすい。店長時代に自らが睡眠の悩みを抱えていた吉野家の河村泰貴社長の関心が飛躍のきっかけになった。(文=葭本隆太)
15年9月、東京・日本橋で「第3回テックプラングランプリ」が開かれていた。起業前の個人やベンチャー企業がビジネスプランを発表し、主催のリバネス(東京都新宿区)と提携する企業の経営層が審査するコンテストだ。ニューロスペースの小林社長は発表者として登壇した。そのプレゼン内容に強い関心を示したのが、審査員を務めていた吉野家の河村社長だった。グランプリ後に「吉野家の店長は睡眠ノウハウに対する関心が高い。是非話してほしい」と声をかけられ、翌16年の初めに睡眠改善プログラムの導入が決まった。創業から約2年、初めての顧客だった。
小林社長は学生時代から起業を考えており、手がけるビジネスには三つの軸を想定していた。「科学技術を活用した事業」「つらくても諦めずに続けられる事業」「根本的に世の中を変えられる事業」だ。その中でスリープテックを選んだのは自身の経験からだ。小林社長は「中学生時代から寝ても疲れがとれないなど睡眠に苦しんでいた。睡眠の悩みを根本的に解決できる社会の仕組みを作りたかった」と力を込める。
睡眠改善プログラムはリバネスのアクセラレータプログラムに参加し、紹介を受けた大学や医療機関との共同研究により構築した。従業員のアンケートを基に、睡眠に関わる企業特有の課題を分析して良質な睡眠を促す生活習慣などを研修会で紹介し、改善効果も検証する仕組みだ。
当初は見向きもされなかったサービスだが、吉野家への導入とそれによる効果が知られたことで利用は広がり、今では導入企業が70社に上った。だからこそ「自ら市場を作ってきた」(小林社長)と自負する。
