G20サミットでは、企業がデータを独占して不公正な競争環境を強いたり、税負担回避の動きを防ぐため、国際協調の枠組みを話し合う。焦点の「デジタル課税」はG20財務相・中央銀行総裁会議で20年の最終合意を目指す作業計画を承認済みだ。ただ規制を強化したい欧州と慎重な米国が対立。さらに中国はデジタル市場の囲い込みを狙う。意見の集約は容易ではない。

 安倍晋三首相は「サミットでの最大のテーマの一つはデジタル経済への対応だ」と語る。プラットフォーマーの成長にも配慮した規制の枠組みを日本が提案し、各国を“つなぐ”役割を担いたい。
日刊工業新聞2019年6月26日

世耕弘成経済産業大臣に聞く
 -多角的貿易体制を担う世界貿易機関(WTO)の枠組みにおける電子商取引(EC)の取り組み状況について教えてください。
  「貿易ルールもデジタルに対応したルールを作らないといけない。そこで2017年12月のWTO閣僚会合の際に日本と豪州とシンガポールが共同議長となって有志国会合を立ち上げた。19年1月には世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で交渉開始の意思を確認する共同声明を有志国で出し、米国や中国を含む77カ国が署名してくれた。WTOの枠組みの中でデジタルやECに関する貿易ルールを作っていこうとするモメンタムが非常に高まっている。安倍晋三総理大臣がダボス会議でのスピーチで、G20大阪サミットの機会にデジタル貿易の国際的なルール作りに向けた『大阪トラック』の開始を表明すると宣言した。その首脳会議に先立つ閣僚会合でもWTOにおけるECの交渉を後押ししていく」

 -そのダボス会議では、安倍首相が自由で公正かつ安全で信頼性の高いデータ流通「データ・フリー・フロー・ウィズ・トラスト(DFFT)」の概念を提唱しました。実現に向けて、日本の役割をどう考えますか。
 「安倍首相によるDFFTの発言は、ダボス会議で最も注目を浴びたと思う。第4次産業革命や『ソサエティ5.0』を目指すには、イノベーションを続けないといけない。その基礎となるのが、やはりデータだ。信頼に基づく自由なデータ流通は、まさにイノベーションの基盤になる。しかも今までの情報革命の世界はデジタルに閉じた世界だったが、最近はデータに人工知能(AI)やIoT(モノのインターネット)が合流していくことにより、いよいよリアル(現実)とデジタルが融合し、垣根がない世界ができつつある」

 「日本はモノづくりの現場にリアルデータが蓄積されており、世界的に見ても特異な強みがある。経済産業省が提唱する第4次産業革命に向けた戦略『コネクテッド・インダストリーズ』のコンセプトは、現場のリアルデータとAI、IoTを結び付けて世界に先駆けて現場初のイノベーションを起こすものだ」