提供:週刊実話

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 浮かんでは消え、消えては浮上してきた安倍首相と金正恩朝鮮労働党委員長の日朝トップ会談がいよいよ実現化する運びだ。

 最大の理由は日本政府担当者が6月5、6日にモンゴルの首都ウランバートルで開かれる国際会議の場で北朝鮮の外交当局者と接触を図ることが明らかになったからだ。双方、6月中か7月上旬のトップ会談に向け、かなり具体的に話を詰める方向だという。仮にトップ会談となれば、安倍首相が今夏衆参ダブル選挙に打って出る可能性はほぼ100%だ。

 「ウランバートルでの国際会議とは北東アジアの安全保障問題を話し合う『ウランバートル対話』。実は、この会議は昨年も開かれ、当時は外務省の志水史雄アジア大洋州局参事官と北朝鮮外務省のシンクタンク、軍縮平和研究所のキム・ヨングク所長が接触していた。今年はどのクラスが出席するかは事前に明らかにされていなかったが、日本があらゆるチャンネルを使って接触を試みてきたところ、金委員長の側近で、金委員長の決定に大きな影響力を持つ人物になるそうです。しかも、北朝鮮は間接的に極秘接触をOKしてきた。そこで日本は一挙に具体的な内容を話し合い、6月前半までに2回か3回の打ち合わせを行い、間髪入れず安倍・正恩会談に持ち込みたい意向だ」(政府関係者)

 拉致問題解決に向けた日本政府と、経済援助を引き出したい北朝鮮との非公式接触は、本誌でも以前触れたが、このモンゴル接触外でも昨年から今年にかけて次のような経緯があった。

 まず昨年6月の第1回米朝会談以降、当時の朝鮮労働党統一戦線部の金聖恵統一戦略室長と安倍首相の懐刀、警察庁出身の北村滋内閣情報官が接触を続けていた。金聖恵氏は金委員長の妹、金与正氏の側近中の側近で金正恩体制の重要人物とされる。

 さらに、警察庁出身の拉致問題対策本部の石川正一郎・事務局長も、やはり昨年、ウランバートルで北朝鮮の宋日昊・朝日国交正常化交渉担当大使と接触、交渉を続けてきた。

 「今年2月、ベトナムでの2回目の米朝会談時、トランプ大統領は拉致問題に触れ『米国は立場上、核の完全撤廃でないとカネはビタ一文出せない。しかし、つなぎでカネが必要ならニッポンだ。拉致問題で何らかの結果を出せばある程度のカネはニッポンが出す。その気があるならシンゾウに伝える』と告げ、金委員長も大乗り気。それがトランプから安倍首相に伝わったため、官邸周辺では一気に日朝トップ会談の機運が高まった。安倍首相の『条件を付けずに金正恩委員長と会って、率直に、虚心坦懐に話をしたい』という言動は、会談にこぎつける切り札だったのです」

 トランプ大統領は、5月25日から4日間、新元号「令和」の初国賓として訪日。その際も、安倍首相と北朝鮮会談の綿密な打ち合わせをしたといわれている。一方、北朝鮮はどのような思惑をもっているのか。

 「朝日新聞が今年2月から何度かスクープとして記事化した北朝鮮の外国資本呼び込みの冊子がある。もちろん、政府も早い段階で入手していたが、それが今の北朝鮮の立ち位置を如実に物語っている。政府も同冊子をベースに最終交渉にあたる。事務方、専門家の合意が得られれば、トップ会談は即実施されるでしょう。今回は相当自信を持っています」(外務省筋)

 朝日新聞や政府が入手した“北朝鮮政府冊子”とはどんなものか。

 まず全体的なトーンでは北朝鮮は経済立て直しのため、積極的に外国投資の呼び込みを図ろうとしていること。投資対象には、北朝鮮の象徴であり代表的観光地『元山―金剛山国際観光地帯』、中朝国境の『羅先経済貿易地帯』、『新義州国際経済地帯』など中央政府主導の8カ所、地方主導19カ所の計27カ所を紹介している。