歌手の島谷ひとみが5月23日、東京・浜離宮朝日ホールで一夜限りのアコースティックライブ『Hitomi Shimatani CROSSOVER 〜Premium meets Premium〜Special guest Seiya Ueno)』をおこなった。7年振りとなった浜離宮朝日ホールでのライブは新旧織り交ぜたセットリストで、代表曲の「亜麻色の髪の乙女」や7月24日にリリースされるミニアルバム『brilliant』から「CYCLE〜サイクル〜」など、ダブルアンコール含め全18曲を届けた。8月から12月までおこなう予定の全国ツアーも発表されたライブの模様を以下にレポートする。【取材=村上順一】

思いを伝えるのは音楽のステージ

島谷ひとみ

 今年デビュー20周年を迎えた島谷。7年ぶりとなる浜離宮ホールでのステージということで、どんなライブを見せてくれるのか、開演前から期待が高まる。いよいよ、開演時刻となりゆっくりと会場の明かりが落とされ、サポートメンバーに続いて島谷がステージに登場し、「prayer」で幕は開けた。エキゾチックで6拍子のゆったりとしたリズムに乗り、透明感のある伸びやかな歌声がホールを包み込んだ。浜崎賢太(Ba)によるウッドベースの温もりのある低音が印象的で、心地良い揺らぎに観客も酔いしれる。

 手拍子も巻き起こった「やさしいキスの見つけ方」を歌い上げ、最初のMCでは、またここで出来る喜びと「ただいま」という感覚があると話す島谷に客席から「おかえり」の声。7年ぶりということを感じさせてくれた瞬間だった。「追憶+LOVE LETTER」に続いて、3拍子によるリズムで心躍らせた「fu・wa・ri」では、島谷も歌詞に合わせ、手振りや表情で曲をより伝えていく。

 11年前にこのステージに立った時のことを振り返り、20周年という節目「“ありがとう”の思いを伝えるのはやっぱり音楽のステージ」だと、自身の気持ちを語り披露されたのは「久遠-kuon-」。大切な人を残し天国へと旅立っていく儚い気持ちを歌で届ける。言葉とメロディは島谷の表現力でより鮮明に広がっていく――。

 続いて、門馬由哉(Gt)によるガットギターの美しい音色に導かれ始まった「沙羅双樹」は、抑揚をつけドラマチックに展開。楽曲の持つ世界観を余すことなく伝えていた。「LOVE」を歌い終えると、島谷は「会場の響きが良すぎて、みんながいることを忘れちゃう」と、島谷自身もホールの響きに夢見心地。

 確かな歌唱力で鮮やかに曲の情景を映し出した「Gentle Rain」。大人になったからこそ理解し、出会えた楽曲だと話す島谷の歌声は、涙の雨が降り注ぐような感覚を与えてくれた。長年、島谷のステージを支えてきた井出泰彰(Pf)によるピアノと2人のみでの演奏。シンプルな編成ということもあり、歌の存在感も際立ち、グッと曲の世界にのめり込んでいく。息の合った2人だからこその空気感がステージにはあった。

ゲストに世界的フルート奏者の上野星矢

島谷ひとみと上野星矢

 100年に1人の逸材と称される日本を代表する、世界的フルート奏者の上野星矢がスペシャルゲストとしてステージに登場。島谷は上野との出会いのエピソードを話し、共演出来る喜びを語った。

 まずは上野のソロでのステージ。フルートの魅力を伝えたいと、島谷のダイナミックな歌声とリンクした楽曲だという、フランスの作曲家であるマラン・マレーの「スペインのフォリア」を選曲。原曲は30分はある大曲だが、今回はコンパクトに魅力を凝縮し披露。序盤はフルート特有の音色を活かし、ゆったりとした流れを感じさせ、曲が進むにつれ、“フォリア=狂気”を感じさせる、息もつかせぬ速いパッセージのフレーズで魅了。島谷も「体が震えた」とその演奏を大絶賛。

 ここからは上野も交え、フルバンドで「Salvia」、高尾俊行(Perc)によるコンガの音色がカリブの風を運んできた「Dita」と2曲を立て続けに届けた。サプライズで上野はコーラスで参加し、島谷もこれがライブの醍醐味と言わんばかりに嬉しそうな表情を見せ、フルートのカウンターメロディの上を自由に泳ぐように歌う島谷の姿も印象的だった。まさにプレミアムな共演に会場から大きな拍手が送られた。

 そして、代表曲の「亜麻色の髪の乙女」は、マイクを使用せず生声によるアカペラでスタート。電気を通さない生の歌声はホールの美しい響きと相まって、至高の空間を作り上げていた。それに合わせ観客も声を重ね、よりエネルギーに満ちた始まり。この季節にぴったりな楽曲で大いに盛り上げた。

新曲「CYCLE〜サイクル〜」を披露

島谷ひとみ

 ライブも刻々と終わりに近づく。代表曲の「Perseus -ペルセウス-」は力強い、アグレッシブな島谷を見せ、ステージを優雅に動きながらのパフォーマンスに目と耳を奪われる。本編ラストに披露されたのは、昨年にリリースされたアルバム『misty』に収録された「sabao」。軽快なステップにメリハリの効いた歌声で楽しませ、ステージをあとにした。

 アンコールの声に応え再びステージに島谷とサポートメンバーが登場。「気持ちがまたグッとまたひとつ乗っかるのがこの会場だと思っていて、私も世界観を堪能させていただきました」と話し、メンバー紹介を経て「Jewel of Kiss」を披露。天野恵(Vn)によるバイオリンの音色と旋律がが印象的で、島谷の歌を後押し。より艷やかな歌声がホールに響き渡っていた。

 続いては、“2030年までに貧困に終止符を打ち、持続可能な未来を追求しよう”をスローガンにした、UNO国連経済社会理事会日米文化交流会応援ソングで、7月24日にリリースされるミニアルバム『brilliant 』に収録される新曲「CYCLE〜サイクル〜」を歌唱。世界が一つになれたらと願いを込め、凛とした歌声で歌い上げていく。エンディングでは風に揺れる草木のように、観客も腕を左右になびかせ、美しい光景が会場に広がった。

 上野を再びステージに呼び込み、島谷は「アーユーレディ!?」と、客席へ投げかけ「Vivace!」へ。観客もスタンディングで、この日一番の一体感のあるクラップで楽曲を盛りたて、まさに“Vivace=活発”な熱い空間を作り上げた。

 ステージから届けられた熱量の高いパフォーマンスに盛大な拍手が送られた。鳴り止まない手拍手に応え、ダブルアンコールにも応えた。満面の笑みでステージに戻ってきた島谷は「(ダブルアンコール)超嬉しい!」と歓喜の声を上げ、もう一度本編ラストに披露した「sabao」を歌唱。「ありがとう!」と感謝を告げ、『Hitomi Shimatani CROSSOVER 〜Premium meets Premium〜Special guest Seiya Ueno)』の幕は閉じた。

 美しい響きを持ったホールで奏でられる音楽は至高の空間。改めて音楽の素晴らしさを島谷ひとみの歌で再認識したステージであった。8月からスタートするツアーにも期待が高まった。

セットリスト

01.prayer
02.やさしいキスの見つけ方
03.追憶+LOVE LETTER
04.fu・wa・ri
05.久遠-kuon-
06.沙羅双樹
07.LOVE
08.Gentle Rain
09.スペインのフォリア
10.Salvia
11.Dita
12.亜麻色の髪の乙女
13.Perseus -ペルセウス-
14.sabao

ENCORE

EN1.Jewel of Kiss
EN2.CYCLE〜サイクル〜
EN3.Vivace!

W.ENCORE

WE.sabao

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