<天安門事件から30年。驚異の発展を続けてきた中国にトランプのアメリカが立ちはだかる。アメリカに亡命した民主活動家が語る米中貿易戦争の結末は>

中国政府が民主化運動に参加した学生や市民を弾圧した天安門事件から30年がたった。民主化を捨て西側社会から経済制裁を受けた中国は、事件後こそ一時混乱したが、その後安価な労働力を武器に日本やアメリカ、ヨーロッパを懐柔。世界の屋台骨を担うと言われるほど経済発展し、5Gなど技術力の分野でもアメリカに迫るようになった。

しかし、最近では中国の国力増大を脅威と感じるアメリカのトランプ政権と、これまでになく厳しい貿易交渉に直面。5G技術で世界をリードするファーウェイ・テクノロジーズ(華為技術)もアメリカからまさに「締め上げられて」いる。

6月4日発売のニューズウィーク日本版では「天安門事件30年:変わる中国、消せない記憶」特集を組み、天安門事件から30年の驚異的成長と米中衝突に至った地政学的変化を分析。当時を知るイタリア人元留学生の回想録や、現代中国の知られざる変化をレポートする記事も収録した。

ここでは、来日した元民主活動家である陳破空(チェン・ポーコン)氏に、米中の衝突の行方をどう分析するかについて話を聞いた。陳氏は1989年の天安門事件に広東省の広州から参加し、その後2回投獄。96年にアメリカに亡命し、現在はニューヨークで政治評論家として活動、独自の中国政治評論で知られる。

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――「米中貿易戦争」の結果をどう予測する? 最終的に「勝利」するのはどちらか。また、その根拠は?

現在の状況を見る限り、アメリカが「勝ち組」、中国が「負け組」だ。貿易戦争とアメリカによる関税率上昇について考えるとき、まず米経済と中国経済のパフォーマンスの差を理解する必要がある。米経済は正常かつ強靭であり、株価こそ揺れ動いているが、就職率は高く、失業率は過去5年間で最も低い。給与や収入も増えている。株価も総体的には上向いている。

一方、中国経済は坂道を下っている。中国政府は経済が6%成長していると主張しているが、このデータを外部の人間が確かめることはできない。ただし彼ら自身が経済にプレッシャーがあることを認めている。

その第1は外資が中国から撤退していること。第2は工場の倒産。沿海部で工場閉鎖が相次いでいる。アメリカが関税を上げるたびに工場が潰れている。浙江省では昨年関税率が上がった後、外国貿易に関係する小規模工場の30%が倒産したとされる。最後が労働者の失業だ。外資が逃げ出し、製造業が東南アジアやインドに移ったので、中国の労働者は職を失っている。

中国の私営企業は経営が難しくなっている。貿易戦争の影響で、政府の支援が国有企業に回っているからだ。中国の株式市場とアメリカの株式市場も違う。中国の市場は時に上昇はするが、その基調は「熊市(ベア・マーケット、弱気市場)」。対するアメリカは「牛市(ブル・マーケット、強気市場)」だ。

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長岡義博(本誌編集長)