かつて女性の働く場は社会の至るところにありましたが、“企業”の誕生で女性は居場所を失いました。社会復帰をしようにも今なお、ハラスメントに満ちていますが、4月に「働き方改革関連法」が施行されました。政府の後押しがあるなら、何かよい道が見つけられるはずです。

■女性の働き方は“ワークorライフ”の二択

働き方改革関連法」によって女性の労働力は、かつてないほど期待されていますが、日本の女性の労働環境は、ワークライフバランスならぬ“ワークorライフ”の二択にされているのが現実です。つまり、ライフを選ぶとワークの本流(管理職への道など)から外され、逆にワークを選んでも、ワークの本流から外そうとする各種ハラスメントと闘うハメになるのです。

ここでちょっと、他国の状況を見てみましょう。女性の社会進出がうまくいっている国では、どういう手を打っているのでしょうか。

■パートでも正社員でいられる「オランダ」

※写真はイメージです(写真=iStock.com/Wavebreakmedia)

オランダはおもしろいことに、男女平等に強くこだわりすぎていません。そしてそれが、逆に女性の社会進出の支えになっています。

共働きを考える場合、「夫と妻で合わせて2倍」の所得を得ようとすると、どうしても無理があり、最終的に家庭か制度が破綻します。だからオランダは「合わせて1.5倍」をめざし、残りの0.5を、家族のために費やします。そして、その比率は、別に「男1:女0.5」である必要はありません。半々でもいいし、逆でもいい。

これらを支えてくれる制度が「短時間正社員制度」です。日本だとフルタイム労働者か否かだけで「正社員orパート」にされてしまいますが、オランダではパートタイム労働でも正社員でいられ、正社員としての各種保障が受けられます。オランダは、こういうやり方でワークシェアリング大国になったのです。

■「アイスランド」は女性が世界一働きやすい国

アイスランドは「働く女性にとってベストな国」ランキングで、堂々世界1位の国です。それどころか男女平等ランキングでは10年連続世界1位、首相は女性、女性国会議員の比率は38.10%で、授乳をしながら国会に出席した議員もいます。また、女性だけの政党もあります。

本誌(『プレジデント ウーマン プレミア』2019年春号)でもご紹介しましたが、過去の歴史を見てみると、この国では「女性が声を上げる」ことで、世の中を変えてきました。1975年には、なんと働く女性の9割が「仕事・家事・育児のストライキ」を敢行しました。男性たちは仕方なく、職場に子どもを連れて行き、慣れない食事をつくるなどてんてこ舞いでしたが、おかげで仕事・家事・育児で女性がいかに重要な役割を担っているかを認識させることができました。

また2016年には男女の賃金格差(3割)をなくすため、「女性の労働時間3割減を求めるストライキ」を行っています。こういうことの成果として、企業役員の4割を女性にするためのクオータ制や、男性の育児休業取得率74%などを達成してきたのです(日本男性は5.14%)。

■世界のトップを走る北欧の国々

そのほか、ノルウェー・フィンランド・スウェーデンの北欧3カ国は、軒並み女性の働きやすさとジェンダーギャップ指数で、世界のベスト5に入っています。すべてに共通していることは、「働き方が多様であること/保育施設の充実/制度の多様さ/男性の育児参加/国会議員の女性比率の高さ(すべて40%超)」などです。

ちなみに日本の女性議員比率は13.8%で世界第144位(2019年世界の女性議員割合・国別ランキング推移より)。これでは女性が働きやすい国にするのは難しいですね。

■まず必要なのは「男性側の意識改革」

結局、日本における「女性の働き方改革」で必要になってくるのは、まずは「男性側に意識改革を求める」ことではないでしょうか。

男性の多くは、いまだに「パート労働と家事・育児だけの女性は、ラクでいいな」と本気で思っています。男という「ラクな側の性」にいると、労働がやりがいのないパート労働である苦痛、年中無休で一瞬たりとも気が抜けない家事・育児の大変さ、そのために家に「いないといけない」苦痛などを、想像・共感できません。

ならば共感させましょう。そう、アイスランドで行った「仕事・家事・育児のストライキ」の断行です。あれをやれば、仕事を満足にさせてもらえないフラストレーションや、一瞬たりとも気が抜けない家事・育児の大変さなどを、初めて共感してもらえます。想像力と共感能力が欠如した者に共感させるには、無理やり「体験」させ「学習させる」のがいちばんでしょうね。

(代々木ゼミナール公民科講師 蔭山 克秀 写真=iStock.com)