簡易検査では、自分で小型の機器を使ってセンサーをつけ、睡眠時における体内の酸素飽和度を調べて無呼吸の有無を確かめる。精密検査は医療機関に1泊して臨床検査技師が全身の20カ所にセンサーをつけて呼吸の状態や脳波、心電図などを計測する。精密検査はポリグラフ(PSG)検査と言い、大学病院や睡眠障害を専門にするクリニックなどで行われている。この流れを辿った上で睡眠時無呼吸症候群だと診断されれば、健康保険を利用して治療を受けることができる。

 治療方法としては、主に2つが挙げられる。無呼吸または低呼吸の回数が1時間に20回未満の患者を対象としたマウスピースを使う方法と、20回以上の人が適用となるCPAP(シーパップ)療法だ。

 マウスピースを着けると下あごが上あごよりも前方に出るため気道が広がりやすくなり、いびきの軽減が見込める。ただし、無呼吸をなくすことはできず、中等度以上の患者への効果は低いという。

 一方のCPAPとは、「経鼻的持続陽圧呼吸療法」の英語の略称であり、専用の機器を使って鼻から人工的に空気を送り、その圧力で気道を広げる治療方法。医療機関が提供する機器を患者が自宅で使用する。

 「CPAPの仕組みはシンプルですが、これが睡眠時無呼吸症候群の治療では最も効果が高く、低酸素状態も無呼吸もなくなります。結果的に合併症のリスクがなくなります」(前出・村田院長)

 費用はマウスピースの作製が約1万5000円で、CPAP療法が月に約5000円。いずれも人工的に気道を広げるものなので、継続的に治療を行う必要がある。

 軽症患者を除けば治療のメーンはCPAPになるが、肥満や飲酒、喫煙によって症状がひどくなっている人は、減量や飲酒量の低減、禁煙を図ることで症状を和らげる必要がある。

 また、仰向けでなく、横向きに寝ることも舌の位置がずれるため有効だそうだ。睡眠導入剤は筋肉を緩める作用があるため、症状をひどくする恐れがあることにも留意したい。

 「生活習慣病が進行すると心筋梗塞や脳梗塞の発症リスクが高まることは、一般の方にも少しずつ知られるようになってきました。しかし、睡眠時無呼吸も生活習慣病と同様に重い合併症を引き起こすことは、まだまだ知られていません。家族などにいびきをかいていることを指摘されたら、睡眠時無呼吸症候群の診断と治療を得意とする医療機関で、検査を受けることを勧めます」(同)