日本が有する世界に誇るべき素晴らしい制度の1つである医療保険制度。しかしその制度が故に「藪医者」の存在を許すことになっていると指摘するのは、メルマガ『8人ばなし』の著者・山崎勝義さんです。保険診療する医師の報酬の7割は国民が納める保険料で賄われているという観点から、患者が抱いた「藪疑惑」をしっかり吸い上げ、改善を図れる公的評価システムの導入を提案しています。

藪医者のこと

基本、医者は四種類である。

腕が良く、態度も良い腕は良いが、態度が悪い態度は良いが、腕が悪い態度も腕も悪い

1と2は、まあ上の部類として良かろう。多少不愉快でも怪我や病気が治れば取り敢えず文句はない。

始末に負えないのが3と4である。只でさえ弱っている時に不愉快な思いだけを持ち帰って、身体の方はと言うと行く前と何も変わらず、そのくせ金だけはきっちり取られている。きっと誰もがこういう経験をしているに違いない。

4の医者などそもそも論外だが、それでも依然として存在していることは間違いない。性格的に最も医者に向いていない人間が、職業カーストの頂点とも言える仕事に就いてしまうとこんなふうになるのかもしれない。

論内で言うと、最も厄介なのが3のタイプの医者であろう。このタイプは、表見的には良い人でありながら医者としては使えないという、所謂「藪医者」属性である。これが他の職種なら大して問題にはならないのだが、医者となれば話は違う。保険医療においては、医師の得る報酬の実に7割が我々の納める税金から出ているということを忘れてはいけない。彼らは、謂わば「七割公務員」なのである。

となれば、納税者としては7割分の「ああだ。こうだ」の口出しは許される筈である。そうでなくても、一般的に高収入を得る地位にある人はそれなりにシビアな批評に曝されるのが当たり前である。そういう意味においても、患者、即ち納税者による何らかの医師評価システムが必要であろう。

一方で、これだけネットやSNSが発達しているのだから、そういった世間の評価に任せればいいじゃないか、といった意見もあるであろう。しかし、これにはいくつかの問題がある。まず、ネットやSNS弱者がアプローチしづらいという欠点がある。それに、プラス評価ならまだしも、露骨なマイナス評価を名指しでするのはさすがに法的な問題も関わって来る可能性もあるからハードルが高い。でも正直なところ、知りたいのは行ってはいけない「藪医者」情報の方である。

そういう事情を考えれば、やはり公的な評価システムでなければあまり役には立たないであろう。

例えば、全ての病院や調剤薬局に医師評価委員(仮)宛てのハガキを「自由にお取りください」という形で配布することを義務付けるようにしたらどうか(勿論、インターネット上でも可能)。患者は後の調査の際にトレースできるように被保険者番号等を明記して問題点を指摘する。勿論、患者の側に問題がある場合もあるだろうから、1つ2つなら無視しても構わない。とは言え、別の患者から同じ医者に対してひと月に10件も指摘があるようだとやはり医師の側に何らかの問題があると見るのが妥当である。この段階で調査に入るという運びである。

言うまでもないことだが、調査結果次第では「業務改善の指導」「業務改善までの医業の停止」「医師免許の失効」等の処分がなされなければこのシステムの意味はない。

医療保険制度は世界に誇るべき素晴らしいものだけれども、その性質上、市場原理による淘汰を受けないという大きな問題を同時に孕んでいる。これを是正しようとする努力もまた、現代の医療制度に必要な改革なのではないかと思うのである。

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