先進素材をキャンピングカーに、BMW DesignworksとTHE NORTH FACEがコラボ:CES 2019
BMWグループのデザイン・コンサルティング会社であるDesignworksは、米国のアウトドア用品会社THE NORTH FACEと共同で製作した軽量キャンピングカーのコンセプトを、現在ラスベガスにて開催中のCES 2019で公開しました。

CESに出展されるほど先進的なキャンピングカーといっても、巨大なディスプレイやコネクテッド機能などが搭載されているわけではありません。では何が先進的なのかというと、このキャンピングカーの外装に使用されている素材です。

THE NORTH FACEのロゴが描かれたグレーのファブリックは「FUTURELIGHT」と呼ばれ、同社の「ナノスピニング」技術によって製作された「世界で最も先進的で、通気性に優れた防水性の素材」とのこと。ナノスピニングという技術はその名称が表すとおり、微細な繊維を、一般的な布地のように繊るのではなく、最大22万もの小さな噴射口から吹き出して何層にも重ね合わせ、布地を形成するというもの。そうして出来上がった構造体には、水の分子は通さないけれど空気は通れるという無数の小さな隙間が空いているということになります。

つまり、これでスポーツや登山用の衣類を作れば、外から雨や湿気は通さず、内側は蒸れない、しかも軽量で柔らかく伸縮性にも優れた理想的なモノができるというわけです。さらにリサイクル素材を100%使用しているとのことで、環境にも配慮されています。

もちろん、この素材を開発したTHE NORTH FACEは、これを使ったウェアやバッグなど、様々な製品展開を計画しており、それらの商品は2019年秋から発売される予定です。

さらに、その新たな可能性を探るべく(そしてより大きな注目を集めるために)、これまで2輪車や4輪車に限らず地下鉄からマウスまで様々なデザインを手掛けてきたBMWグループのDesignworksと手を組んで、ユニークなキャンピングカーを作り上げました。パイプ状のフレームからワイヤーで釣られたドーム部分は、要するにトレーラーの上に設置されたテントのようなもの。トレーラー部分にはアルミニウムやカーボンファイバーなど、BMWの車体作りで培われた技術が多用されていることが分かりますが、実はそれだけではありません。

BMWには2008年に、ボディの外装に(金属や樹脂ではなく)やわらかなファブリック素材を用いた「GINA Light Visionary Model」と呼ばれるコンセプトカーを発表した前例があるのです。今回のキャンピングカーはこのコンセプトカーから着想を得たとBMWは述べています。車輪には、タイヤ・メーカー各社が実用化に向けて開発を進めているエアレス・タイヤが使用されています。空気の代わりに樹脂を使ったこのタイヤも、キャンピングカーの軽量化に一役買っていることでしょう。

▲2008年発表の「GINA Light Visionary Model」

画像は地面から隔離された場所で眠れるキャンピングカーのメリットを訴えるためか、雪山を旅する場面が想定されていますが、完全に閉じても通気性が良く湿気を(もちろん虫も)通さないこのキャンピングカーは、夏に使うと実に気持ちの良いキャンプ体験ができそうです。具体的な重量の数値は明らかにされていないものの、ほとんどのクルマで牽引可能になるでしょう。

とはいえ、現在のところこのキャンピングカーの製品化は計画されておらず、我々が実際に手に入れられるのは、FUTURELIGHTを使ったテントなどになる見込みです。地面にテントを設置して眠ることが難しい環境でない限り、それで十分な気もしますが、CESに出展されたのが単なるテントだったら、記事にした我々やこれを読まれている貴方の目を引いたかどうかは分かりませんね。