流通業者に聞く「19年農畜産物トレンド」 価格・数量とも「安定」 「自由化」対応が鍵

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日本農業新聞がまとめた農畜産物トレンド調査で、2019年の販売のキーワードを流通業者に聞いたところ、価格や数量の「安定」が1位となった。近年の異常気象や相次ぐ災害により相場が乱高下していることが背景にある。その他、米国を除く11カ国による環太平洋連携協定の新協定(TPP11)の発効などを受け、「輸入・貿易自由化」(9位)が異例のトップ10入りした。10月からの消費税増税の影響を懸念する見方も強く、景気は「やや悪化する」が4割近くまで拡大した。

 19年の農畜産物マーケットのキーワード(複数回答)を業者に尋ねたところ、今回新たに加えた「安定」が44%で最多だった。「気象」が前年より順位を上げて3位に入った。「農畜産物の調達苦戦や相場の乱高下が大きな課題」(大手花き卸)との受け止めが広がる。「産地の供給力が弱まっている」(食肉メーカー)と弱体化する生産基盤の立て直しを期待する他、「食品関連企業が大規模化する中で、調達面の安定がより重要になる」(東日本の米卸)などの意見があった。一方、「値頃感」は13位で、前回6位から後退した。

 2位の「安全・安心」は4年ぶりに首位から陥落したが、依然として回答が多い。TPP11や欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)によるかつてない農畜産物の市場開放に伴い、「増加する輸入に対し、国産を区別化するために必要」と大手外食業者が回答した。

 4位は「消費増税対応」。食品は軽減税率が導入されるが、「消費全体が冷え込む」(食肉卸)など不安視する業者が多い。税率は生鮮品や中食が8%のままだが、外食は10%に上がるため「仕向け先の動向を注視する」(大手米卸)。

 「簡便・時短」は6位、「小容量」は8位で共に上昇。共働き・単身世帯の増加を踏まえ、変わる生活様式への対応が一層必要になる。

 来夏に開催する「東京五輪・パラリンピック」は同率9位。農畜産物や食品の供給で関心が高い。青果卸は「大会を契機に食品流通のグローバル化が進む」と指摘する。

 景況感は悪化した。景気の見通しについては「変わらない」が50%で昨年に続き最多だったが、「やや悪化する」は19ポイント増の36%と急伸。対して「やや良くなる」は20ポイント落として12%だった。関西の青果卸は「消費増税の影響を緩和できるほど景気は回復していない」と指摘する。

 部門別のトレンドを見ると、野菜は焼き芋適性が高いサツマイモ「シルクスイート」など特色を持った新品種への支持が強い。果実では食味重視は変わらず、低酸、高糖度が鍵となる。

 米は消費減退の対応策で、調理の簡便ニーズが高まり冷凍米飯などに注目。畜産物は昨年に続き、銘柄肉で区別化販売を加速させる。牛乳・乳製品はヨーグルトの低糖質など機能性をうたった商品開発が進む。

 花きは、「フラワーバレンタイン」などの販促効果に期待が高まりそうだ。

<メモ>農畜産物トレンド調査


 野菜、果実、米、畜産物、花の5部門で実施。スーパーや生協、専門小売店、外食、卸売業者など約300社の販売担当者に対し、昨年11月中旬にアンケート用紙を配布。計146社から回答を得た。今年で12回目。