以前掲載の「長年支払ってきた「国民年金」は、一体何年で元が取れるのか?』で、記事タイトルどおり「国民年金の元が取れる年数」を詳しく紹介してくださった無料メルマガ『年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座』の著者・hirokiさん。今回はたった2年で元が取れるというオトクな「付加年金」について徹底的に解説してくださっています。

受給し始めてたった2年間で元が取れてしまうっていう約50年近くの歴史ある年金

この間は、年金を貰い始めるとどのくらいで元が取れるのかというお話をしました。

● 長年支払ってきた「国民年金」は、一体何年で元が取れるのか?(まぐまぐニュース参考記事)

年金は保険なので損得の話ってあまりしたくは無いんですが、おおよその目安としてもらえればいいでしょう。

で、今回も元を取る話になるんですが…(笑)、2年で元が取れてしまう年金もあります。それは付加年金といいます。65歳になると国民年金から老齢基礎年金が支給され始めますが、それにくっついて支給される年金です。

小さな年金なのであまり話題になる年金ではないんですが、たまに話題に出るとこれはよくお得だお得だと言われる。なぜかというと、今まで納めてきた保険料に対していざ年金を貰うようになったら先ほども言ったように2年で元が取れてしまうから。

たとえば、付加保険料というのは月々400円納めないといけませんが、仮に20歳から65歳までの間に上限480ヶ月間の付加保険料を納めたとします。となると納めてきた保険料は

400円×480ヶ月=192,000円

で、これを付加年金として貰う時は200円×480ヶ月=96,000円となる。年間96,000円だから、2年間支給されたら今まで納めた保険料額と一致する。その後はひたすらトクになる。

おおお!なんてお手頃でおトクな年金なんだ!!じゃあ早速、市役所か年金事務所行って付加保険料とやらを申し込むぜ!(∩´∀`)∩…って、ちょっと待って待ってー!

この付加保険料は国民年金保険料(平成30年度月額16,340円)を完璧に納めた上での上乗せ年金なんです。だから国民年金保険料を納めないのであれば付加保険料も納めれない。国民年金保険料は納めたくないけど、付加保険料だけ納めるというのは不可なのです。

そして、サラリーマンや公務員のような厚生年金に加入してる人や、厚生年金加入者の扶養に入ってる人(国民年金第三号被保険者)、そもそも国民年金保険料を免除や未納にしてる人は付加保険料を納める事が出来ない。

付加年金の申し込みをしてるけど、その後に国民年金保険料の納付時効である直近2年1ヶ月の間に滞納してるならまず国民年金保険料を納めてもらうのが先。つまり、自営業とかフリーターのような国民年金第1号被保険者と呼ばれる、自ら定額の国民年金保険料を納めるという人のみが付加保険料を納める事ができます。

こういう制限もあるからなかなか知られた年金にはならないのかなと思います^^;真面目に国民年金保険料を納める人のための制度かもしれませんね(笑)。

ところで、付加年金はいつから始まった制度なのかというと昭和45年10月からです。始まった当初は350円の保険料でしたが、昭和49年1月から400円になってその後現在に至るまで保険料額に変わりがない。また、年金額も200円×付加保険料を納めた期間というように昭和49年1月から変化なし。年金額は今まで目まぐるしく変わってきましたが、この付加年金は特に変更無しで来た。

さて、月々の保険料を納めるタイプの国民年金制度が始まったのは昭和36年4月からでした。もう何回これを今まで言ってきたかわかりませんが…(笑)。しかし国民年金というのはどんなに人によって所得が違おうが定額の保険料を納めるものだったため、将来の年金額も納めた期間が同じなら平等というものだった。つまり所得に比例しない。よって、国民年金は定額の保険料と定額の年金額という形だったから、少しでも将来の年金額を多くしたいという要望に応えるために付加年金という制度が作られた。

しかしなぜ国民年金は所得に関係なく定額の保険料で、定額の年金にされたかというと国民の所得の把握が困難だったから。今はようやくマイナンバーとか導入されてきましたが。サラリーマンとかならともかく、昭和30〜40年代というのは農業のような第一次産業の人が全就業者の40%くらいを占めていた。現在は4%もいかない。だから所得の把握がホントに困難だった。よって国民年金は定額の保険料となり、将来受け取る時も所得に関係なく定額とされている。まあ、保険料納めた分には比例しますけどですね。

なお、昭和36年の国民年金の強制加入が始まる頃、国民年金を支払う対象とされた約3,300万人中650万人ほどしか所得税を納税できていなかった。多くの人が住民税の均等割すら支払う事が困難な人達だったため、20歳から60歳まで強制加入にしたとはいえ、国民年金保険料が支払えない人に対しては保険料の免除という道が設けられたという経緯があります。

さて、話を戻しますが今回はその付加年金はどのようのもので、年金額はどうなるかの中身を見ていきましょう。

1.昭和27年11月5日生まれの男性(今は66歳)

● 何年生まれ→何歳かを瞬時に判断する方法!(参考記事)

20歳になる昭和47年11月から昭和50年3月までの29ヶ月は昼間大学生だった。この大学生の期間は国民年金には強制加入ではなく任意加入だった。任意加入しなければ、年金を貰うために必要な年金受給資格期間10年以上に含むカラ期間になるだけ。なぜ学生が国民年金強制加入対象外だったかというと、学生は所得が低くて支払える能力が低いだろうと考えられたから。だから任意の加入として扱われた(平成3年4月からは強制加入)。

昭和50年4月から昭和56年2月までの71ヶ月は厚生年金加入。この間の平均給料(平均標準報酬月額)は23万円だったとします。昭和56年3月から自営業となり、平成22年10月までの356ヶ月は国民年金保険料を納めた。ついでに市役所で付加年金加入を申込んで国民年金保険料と共に付加保険料を納めてきた。

ところがここで問題!! の納付期限はその月の分は翌月末までですが、平成20年12月に11月分の国民年金保険料と付加保険料を納めるのをうっかり忘れてしまった(督促状が来たから後で国民年金保険料の滞納分を納めた)。平成20年12月末までの期限に納めれなかった為、付加年金からは自動的に脱退したものとみなされた(平成26年4月からはこの自動脱退が無くなって、国民年金保険料の時効である過去2年以内の分は遡って納められるようになった)。よって付加保険料納付期間としては昭和56年3月から平成20年10月までの332ヶ月。

平成22年11月から平成23年6月までの8ヶ月は国民年金保険料全額免除にした(老齢基礎年金の2分の1に反映)。で、平成23年7月から60歳前月の平成24年10月までの16ヶ月間は国民年金保険料をまた完璧に納めた。その後の平成24年11月の60歳到達月分から国民年金保険料を納める義務は無くなりますが、一応65歳(この男性なら平成29年10月までの60ヶ月の間に最大加入できる480ヶ月まで)までなら国民年金に任意で加入する事により年金を増やす事が出来る。

とりあえず、平成27年5月に国民年金任意加入と共に付加保険料の申し込みをしたが、滞納してしまって督促状の期限までに支払えずに平成27年8月までの4ヶ月間を未納にしてしまった。任意加入は督促状の期限までに納付できないと任意加入の資格を喪失してしまう。

でも国民保険料の時効が2年だし、付加保険料も過去2年の時効が平成26年4月から認められてたので、平成29年に納めて未納の4ヶ月間は国民年金保険料納付済期間(付加年金あり)となった。

さて、この男性の現在貰っている年金額はいくらになるか。

老齢厚生年金→23万円÷1,000×7.125×71ヶ月=116,351円老齢基礎年金→779,300円÷480ヶ月×(厚生年金期間71ヶ月+国民年金保険料納付済期間372ヶ月+任意加入期間4ヶ月+保険料全額免除期間8ヶ月÷2)=732,217円付加年金→200円×(332ヶ月+4ヶ月)=67,200円

さらに、20年以上の厚生年金または共済組合、または両方で20年以上の期間がある厚生年金を貰ってる妻(昭和27年2月生まれとします)が居たとすると、この男性の老齢基礎年金に男性の生年月日に応じて定額の振替加算68,860円(平成30年度価額)も付く。よって、現在のこの男性の年金総額は

老齢厚生年金116,351円+老齢基礎年金732,217円+付加年金67,200円+振替加算68,860円=984,628円(月額82,052円)

※追記

現在、付加年金には特例があります。

平成31年3月までの時限措置なんですが、過去10年以内の付加保険料を納められる(平成30年11月なら平成20年11月までの期間)。

あのー、事例を見てもらうと平成26年4月の改正までは期限までに保険料を納められないと自動で脱退って書きましたよね。自動で脱退にならなければ付加保険料を納めれた部分です。つまり平成20年11月から平成22年20月までの24ヶ月が遡って付加保険料を納められる。これを付加保険料の特例納付という。

この24ヶ月分の付加保険料を特例で納めると、200円×24ヶ月=4,800円の付加年金を増やす事が出来る。例えば平成30年10月にこの付加保険料を年金事務所で申し込んで納めたら、平成30年11月分の付加年金額から変更される。

ちなみに平成23年7月から60歳前月の平成24年10月までの16ヶ月間は国民年金保険料をまた完璧に納めてますよね。10年遡って保険料納められるならこの期間の付加保険料納めれないの? と思われたかもしれませんが、その前の期間に保険料の免除期間があるので再度、付加保険料の申し込みをしてないなら10年遡りの対象にはならない。

● 付加保険料の特例納付(日本年金機構)

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