映画館の“アトラクション化”その裏にあるシネコンの自負と危機
新たな「体験型」に期待
「映画館でVR!」―。7月、東映はVAIO(長野県安曇野市)やクラフター(東京都港区)と共同でVR映画の上映に乗り出した。VR映画は映画館の音響設備により家庭などでのVR映像視聴では味わえない高い没入感を体験できる。これに強く反応したのがシネコンを運営する興行会社だ。東映などはVR映画の上映システムを外部のシネコンに開放する方針を示しており、複数の興行会社は「上映システムの導入に関心がある」と明かす。
大きなスクリーンを備えた映画館においてHMDを装着しながら視聴するという仕組みにはやや懐疑の目を向けつつも、映画館でしか味わえない映像体験ができる「体験型映画」の次世代フォーマットに対する期待はそれを上回る。
興行会社が新たな「体験型映画」の誕生に期待する理由は、彼らが特別な体験を提供するシステムを整えることで生活者を呼び込む「装置産業」だからだ。そもそも映画館ビジネスは水物。ヒット作に恵まれた年は興行収入が大幅に伸び、恵まれなければ落ち込む。それでもここ5年の興行収入はおおむね右肩で成長しており、興行会社には「装置産業としての設備投資などの効果が興行収入の成長を下支えした」という自負がある。だからこそ、新たな「体験型映画」によって集客力を高めたい思惑がある。
VR映画を仕掛けた東映企画調整部兼映画興行部の紀伊宗之次長は「映画作品は映画館にとって王様。ただ、すべてではない。興行会社は『今年はこの映画がヒットしたから儲かった』と考えていては駄目。映画館はデジタル化によって装置産業に変わり、(集客施策に)主体性が持てるようになった。自らどう発展していくかを考える必要がある」と力を込める。
「『もっと楽しいこと』に喜んでお金を払う人はいる」
