「利益を確保している大学」ランキングTOP10

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2016年度決算で経常収支差額の金額が最も大きかった上智大学 (撮影:梅谷秀司)

文部科学省が私立大学への経営指導を強化する方針を示した。

7月下旬、文科省は所轄の各学校法人の理事長宛に、「学校法人運営調査における経営指導の充実について」という通知を送った。


これは各私立大学の経営力を強化するために経営指導を充実していく方針を示した文書で、その中で、経営が悪化している大学については3年程度で実績があがるよう集中的にきめ細かい指導を実施するとしている。

同時にその対象となる目安として、「経営指導強化指標」というのを設定している。

具体的には、貸借対照表の運用資産(現預金、特定資産、有価証券の合計)が、外部負債(長短借入金、学校債、手形、未払金の合計)を下回っているか、それに加えて、事業活動収支計算書の経常収支差額が3年連続でマイナスになっているか、である。指導は2019年度から実施されるという。

重要な「経常収支差額」という指標

指標の中に入った「経常収支差額」は、「教育活動収支差額」(学生生徒等納付金などの教育活動収入から、研究経費や人件費などの教育活動支出を引いた額)と、利息や配当、利払いといった教育活動以外の収支を示す「教育活動外収支差額」(教育活動外収入-教育活動外支出)の合計値となる。

いってみればこの数字は、経常的な大学運営の収支状況がわかる数字で、マイナスが続いているということは、大学運営になにかしらの問題があるということになる。

当然、この経常収支差額のマイナスが続いている学校法人も相当数あるが、一方で収支がプラスでしっかりと利益を確保している学校法人も多い。そこで今回、この経常収支差額(2016年度)が多い(利益が多い)学校法人を順にならべ、「利益を確保している私立大学ランキング」を作成した。

経常収支差額がしっかりとプラスであることが、イコール、大学経営が経常的に安定しているということを示す。

同時に経常収入の額と、収支のバランスを見る指標として、「経常収支差額比率」も合わせて記載した。経常収支差額比率は、経常収入にしめる経常収支差額の割合で、企業でいえば経常利益に相当するものだ。ただ、大学を運営する学校法人は株式会社のように利益を追求する法人ではないので、この比率が高ければ正解というわけでもない。黒字を保ちつつ、いかに、充実した教育や研究に使っているかも重要になってくる。そうした点にも留意してランキングをみてもらいたい。

1位は上智学院で、上智大学を運営する学校法人だ(経常収支差額255.1億円)。8月8日の配信記事「『収入が多い私立大学ランキング』トップ200」でも触れているが、2016年4月に神奈川県の栄光学園中高や兵庫県の六甲学院中高などのイエズス会系の4つの学校法人と合併した影響で、200億円を超える寄付金(現物寄付)が計上され、経常収支差額が大きく膨らんでいる。

経常収支とはいえ、こうした特殊要因で収支が大きく膨らんだり、マイナスになったりする場合もある。そのため、単年度の数字だけではなく、経年で傾向をつかむ必要があるだろう。上智学院の1期前(2015年度)の経常収支差額は14.3億円となっている。

”高収益”の大学も決して少なくない

2位は川崎医科大学を運営する川崎学園(117.5億円)、3位は埼玉医科大学(111.5億円)、4位は順天堂大学を運営する順天堂(93.4億円)となり、医学部を持ち付属病院を持つ学校法人がランクインした。これらの大学は病院経営による収入が大きく、経常収入は600億〜1000億円以上に達する。そのため利益も大きく出る結果となっている。

5位は近畿大学(71.0億円)が入った。ここも医学部を持つ学校法人だが、「実学教育」を建学の精神としてうたっている同大学としては、経営面でもしっかりと結果を出しているといえるだろう。

6位は東京未来大学などを運営する三幸学園で、経常収支差額68.5億円。経常収支差額比率は20%を超え、前年度も60億円台を維持している。7位の関西外国語大学は経常収支差額65.5億円で、経常収支差額比率は39.0%とかなり”高収益”な数字となっている。過去の数字を見ても同様だ。

以下、8位慶應義塾(63.8億円)、9位帝京平成大学(61.9億円)、10位東洋大学(60.0億円)と続く。

大学、短大の学校法人は650以上あるので、上位200位というのは、利益をしっかり確保している学校法人といえる。その200法人の経常収支差額比率の単純平均は10.8%。比率が高い大学もあるので、おおむね5〜6%程度確保している大学が安定経営大学の合格点、とみていいだろう。