老川オーナー辞任で頭を下げる石井球団社長(時事通信フォト)

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 読売巨人軍のスキャンダルを振り返ると、そこには「ドラ1エリート」は守られ、「二軍選手」は斬り捨てる歴史が繰り返されてきた。「選手待遇ヒエラルキー」が窺えるのは、同席していたキャプテンの坂本勇人(29)は厳重注意にとどまっているいわゆる“全裸動画問題”や、関わった選手のうち高木京介・投手(28)だけが球界復帰できている“野球賭博事件”に限ったことではない。

 チームの“顔”となる選手がトラブルに見舞われた時に手厚く庇護されるのは、過去の「巨人軍スキャンダル」で顕著だったといえよう。

 渡邉恒雄氏が巨人軍オーナーとして強い影響力を持っていた1997年、記者たちにこうぶちまけた。

「俺が肩代わりしている17億円の借金はどうなるんだ! それをクリアさせてからだ。17億円をどうにかしてから考えろ!」

 矛先を向けたのは、このシーズンにFA権を獲得したエース・桑田真澄。FA権行使によるメジャー移籍を示唆した桑田には、1991年に不動産取引に関連して借金13億円と年間9000万円の金利を抱え、それを巨人の親会社である読売新聞社が債務保証していた経緯があった。

“返済を終えてもいないのにチームを出るなど許さない”──記者たちは渡邉氏の言葉をそう理解し、「渡邉オーナー恫喝」と書いたスポーツ紙もあった。

 一方でこの「爆弾発言」は、「一選手の借金に、読売新聞が17億円も面倒を見てくれるのか」という驚きとしても受け止められた。

 今回、阿部慎之助(39)をはじめとした同僚の野球用具の窃盗で契約解除となった柿澤貴裕・外野手(23)の借金額は定かではないが、「せいぜい数百万円だろう」(捜査関係者)という。その程度の金額でも柿澤は肩代わりしてくれる相手は周囲におらず“用具泥棒”に手を染めた。

 同じ1997年秋、「借金の肩代わり」という文脈は、現在の指揮官・高橋由伸のドラフト逆指名(※同年に導入された、ドラフト対象選手が希望する球団に入団できる制度。2007年のドラフトから廃止)時にもスポーツマスコミを賑わした。

「六大学出身(慶應)の由伸は、神宮を本拠地にするヤクルト入団を希望し、逆指名の意向も伝えていた」(当時のヤクルト球団幹部)といわれる。

 ところがドラフト直前になって翻意し、巨人を逆指名。会見の席上、由伸は全く笑みを見せず、目には涙を浮かべていた。

「不動産業を営む父親が抱えた損失を、巨人が面倒を見るという“密約”が背景にあったと囁かれた。後にヤクルトのスカウトが実名で“由伸は60億円で巨人に強奪された”と週刊誌に語って波紋を広げた」(スポーツジャーナリスト)

 不祥事を起こしたスター選手への“温情対応”も物議を醸してきた歴史がある。1990年、桑田がプロ入り前から親しく交際していたスポーツメーカーの営業マンの暴露本で「登板日漏洩と金品授受」疑惑が浮上すると、球団と桑田は完全否定。

 ところがその後に桑田が証言を翻し、金品授受を認める。球団は完全にメンツを潰された形だが、処分は開幕からの謹慎1か月と罰金1000万円(当時の桑田の推定年俸は5200万円)。しかも“1か月遅れの開幕”は調整十分で、2連続完封勝利とメンタルの強さを見せつけた。

 現役選手でなくとも“穏便に処理されたケース”としては、原辰徳・監督のスキャンダルが記憶に新しい。2012年、『週刊文春』で「不倫問題に関連して1億円を要求された」と報じられる。原は不倫と1億円の支払いを認めたが、その事実を球団に報告していなかったことも明らかになる。しかし、球団から謹慎や罰金などの処分はなかった。

 桑田も由伸も原も、いずれもドラフト1位選手。醜聞の“スケール”は二軍選手の「全裸動画」と比べるべくもないほど大きいが、スター選手に関する不祥事には寛大に接し、穏便に済ます「伝統」があるのだろうか。
(文中一部敬称略)

※週刊ポスト2018年8月3日号