他人の時間を奪っている、組織の生産性を上げられない本当に痛い人たち/猪口 真
「働き方」をどうするか、生産性をどう向上させるかについては様々な議論が繰り返されているものの、組織にしても個人にしても、実際の現場においては何か進展しているのだろうか。
先進的な取り組みとして、働く場所や時間を自由に選択できたり、極端に短い労働時間の仕事ができたり、今どきのベンチャー企業を中心に紹介されることも多いが、ほとんどの会社にとっては、何が働き方改革なのか、どうすれば生産性が上がるのか、何も議論が進んでいいないのが、現状だろうし、現場の実態感としては。まったく進んでいないと考えるほうが妥当だろう。
そもそも、誰もが本当に生産性を上げたいと思っている(意識している)のか疑問に思う言動も頻繁に遭遇する。
普通に考えれば、経営者であれば誰でも、自分の会社が出すアウトプットの生産性を上げたいと思っているだろうし、個人のレベルにおいても、誰でも生産性を上げて成長したいと考えていると思っていたのだが、どうやらそうでもないらしい。
リーダーや、リーダーでなくとも現状を必死で打破しようともがく人が生産性を上げたいと考えても、組織には、本人の意識がないままに、ものすごい力で邪魔をしてしまう痛い人たちがいる。
明らかに、「この人はわざと生産性を下げようとしているのか」と思える人もいる。もちろん本人にはそんなつもりはないのだろうが、実際には下げまくっている人がいる。
他人の時間を奪ってしまう人たち
中でもやっかいなのが、「他人の時間を奪ってしまう人たち」だ。
残念なことに、どの組織にもいる。
自分の生産性の問題だけなら、一人分でしかないが(それでも痛いが)、他人の時間を奪い、邪魔してしまうのは、その人の何倍、何十倍の損失になってしまう。そんな痛い人の行動を見てみよう。
やたら会議を招集する
まず、大勢の会議を何事もなく頻繁に招集する。何日も前もってスケジュールを入れるために、招待されたメンバーはほぼ断ることができない。仮に予定があれば、別な日を設定される。会議とは言わなくても「打ち合わせ」「相談」という言葉のマジックをうまく使う人もいる。残念ながら大勢分の多大なコストがかかっているという意識はない。しかも、かなり先の日程ということは、緊急性もない。鍵となるようなメンバーが何人も頻繁に招集されていては、組織の損失は大きすぎる。
決まったことに異議を投げかける
決まったことを覆してしまう人も要注意だ。何人もの人が決定事項に対して仕事をしてきたにもかかわらず、簡単に覆してしまう。本人は仕事を動かした気になってうれしいのだろうが、何人もの何時間もの労働がその一言でムダになってしまう。全体で見たときの損失は計り知れない。権力や権限のある人に多い。金銭的な損失も意外に大きいことにまったく気づいていない。
まだまだある。一見、周囲に迷惑をかけているように見えないのが、まったく動かない人だ。一見人畜無害に見えるが、人の邪魔になっているのがわかっていない。本人のアウトプットがほとんどないので、すでに生産性は引くが、一人が動かないことで、周囲の人の仕事も止めてしまう。要はボトルネックになっている。痛い。
同じことをひたすら話す人もいる。「また始まった」と思っていても、本人は何度も話すので、話はうまくなっていき、話すたびに饒舌になる。本当に迷惑な話だ。こんな無駄なことはない。
また、競争意識が激しすぎて、負けず嫌いが激しすぎる人もやっかいだ。人の足をとにかく引っ張る。必要以上に敵対し、出世意欲がやたら強い。この手の人は普段から政治的な活動ばかりするので、もともと生産性は低い。そのうえに、人の足を引っ張るのだから迷惑以外の何物でもない。
実は自分が一番危ない!?
まったく書き足りないが、こうした痛い人たちはどこの組織にもいる。大切なことは、自分がこうしたことをやっていないかを振り返ることだ。振り返れば、かなりの確率でやってしまっている。
他人に対しては、「本当に迷惑なやつだ」と思っていても、自分の行為には気づかないものだ。特に、部下もたくさんいる、予算もたくさん持っている、成果もあげている、「あなた」は特に要注意だ。
「むやみに人を招集していないか」「決まったことに異を唱え、ひっくり返していないか」「周囲からの提案や依頼を寝かしていないか」「いつも同じ話ばかりをしていないか」「人を蹴落とそうとしていないか」
十分に内省し、他人の時間を奪わないようにしたいものだ。