独立コンサルタントの「新しい働き方」とは?
フリーランスで働くプロフェッショナル人材に新しい働き方を提供する(写真:Signifiant Style)
働き方多様化の必要性が盛んに指摘されている昨今の日本社会ですが、そんな中、フリーランスで働く「プロフェッショナル人材」のために、挑戦できるエコシステムを作ろうと取り組んでいる会社があります。
当記事はシニフィアンスタイル(Signifiant Style)の提供記事です
みらいワークスは、フリーコンサルタントのための案件紹介サイト 『FreeConsultant.jp』を運営し、2017年12月に東証マザーズに上場しました。一見するとフリーコンサルタントを束ねるコンサルティングファームにも思える同社ですが、徹底してフリーランスに寄り添う姿勢が大きな特徴です。起業家を支える仕組みとしても機能しているという同社の事業と、プロフェッショナル人材のあらゆるライフステージを支えるビジョンについて、みらいワークスの岡本社長に伺います(事業の詳細については「成長性に関する説明資料」を参照)。
「日本のみらいの為に挑戦する人を増やす」を経営理念に、プロフェッショナル人材に特化したビジネスマッチングサービスおよび転職支援を行うみらいワークス。2012年の設立以来、フリーコンサルタント向け案件紹介ポータルサイト「FreeConsultant.jp」、フィンテックコンサルタント向けプラットフォーム「FintechConsultant.jp」、転職希望のコンサルタント向けキャリアプランニングサポートサイト「ConsulNext.jp」、フリーランス再就職支援サービス「大人のインターン」、独立と起業を選択肢に含めたキャリアアドバイス「「独立」「起業」「転職」あなたはどれを選ぶ?」といったサービスサイトを展開。6000名以上の登録コンサルタントを誇り、2017年12月には東京証券取引所マザーズに株式を上場。証券コードは6563。
低コストで高スキルなコンサルタントチームを編成
朝倉祐介(シニフィアン共同代表。以下、朝倉):まずは、みらいワークスがどういった事業を行っている会社なのか、お聞かせいただけますか?
岡本祥治(みらいワークス代表取締役。以下、岡本):みらいワークスは、フリーランスとしてとして働くプロフェッショナル人材に新しい働き方を提供する会社です。基本的なビジネスモデルは、クライアントの要望に応じて、6000名以上の登録者から我々が最適なチームを組成し、大手コンサル会社の3分の1程度の低コストでコンサルティングサービスを提供するというモデルです。
岡本:外資のコンサルティングファームであれば、人月あたり400万〜450万円が一般的だと思いますが、我々がクライアントからいただく金額は200万円以下です。しかも、10年以上の実務経験のある、コンサルティングファームのマネジャークラス以上の人材を提供してその金額なので、非常に安い。このコスト競争力が大企業のクライアント様からご好評をいただいております。
ご登録いただいているプロフェッショナル人材の方々にとっては、我々が提供するプロジェクトがプロフェッショナル人材向けの業務委託に特化していること、高スキルを活かせる高単価な仕事であることの2点が、価値となっています。実際、サービスを利用されているプロフェッショナル人材の90%以上の方から「満足している」という評価をいただいております。
岡本祥治(おかもと ながはる)/2000年に慶応義塾大学理工学部を卒業後、アクセンチュア株式会社に入社。 ITコンサルタントとして、基幹システム導入や、ITアーキテクチャー構築などのプロジェクトに参画。戦略グループ転籍後は、事業戦略策定や新規事業立ち上げなどを推進。ベンチャー企業への転職を経て、2007年に株式会社オンサイドパートナーズを設立し、個人コンサルタントと して活動を開始。いくつかの事業立上げと失敗を繰り返した後に、独立プロフェッショナルの需要に着目し、プロフェッショ ナル人材サービス事業を立ち上げる。 2012年3月にみらいワークスを設立し、代表取締役に就任(写真:Signifiant Style)
朝倉:事業の形態としては、マッチングサービスになるのでしょうか?
岡本:「フリーランスとして働くプロフェッショナル人材を対象としたビジネスマッチングサービス」と説明していますが、実は、我々が業務委託で仕事を受けて、再発注するという形なので、厳密に言うと「マッチング」ではありません。日本の法律の下では、この「再発注」という仕組みを取らなければならないので、現在はこうしたモデルになっています。
もともとは、外資系コンサルティングファームの下請けから事業を始め、コンサルティングファームの中で人が足りていないプロジェクトに人材を提供していました。徐々にそのビジネスが拡大するにつれて、このモデルは別のマーケットでも行けると思い、まずSIerに進出しました。それを端緒に、市場規模が大きい事業会社向けのマーケットにも進出して成長してきました。
クライアントの売上構成比については、一部上場企業からベンチャー企業まで規模の様々な事業会社が売上の半分を占めています。残りは、コンサルティング会社とSIerを中心としたテクノロジー系企業という構成です。
起業家を支えるプラットフォーム
朝倉:登録者は6200名以上とのことですが、どういった方が登録されているのですか?
岡本:当初はコンサルティングファーム出身者の方が多かったのですが、今は事業会社のみで経験を積んだ方が多いです。
昔はコンサルティングファーム出身でないと、コンサルティングの仕事はできないと思われていましたが、今では一言で「コンサルティング」と言っても、パワーポイントで資料を作って納品する仕事よりも、社内プロジェクトの実行推進支援のような仕事のほうが多いんです。そうなると、事業会社出身の方でも、社内のステークホルダーの方々と調整をしながら物事を前に進めていく仕事はできます。クライアントサイドでも事業会社のお客様が増えてきたので、事業会社出身のプロフェッショナル人材が活躍する機会が増えてきました。
登録者の中には、スタートアップを経営している方もいます。例えば、マンションの一室で、2人くらいのエンジニアを抱えて開発をしている中、社長自身は業務委託で仕事を請けて会社を回しているという方です。今では有望スタートアップになっている会社でも、当初はそうやってお金を稼いできた、という会社は多いので、起業のあり方として、こうしたかたちも普通になってきているのではないかと思います。
朝倉:たしかに、私も最近上場した有名スタートアップの社長に、創業時にプロジェクトベースの仕事を紹介したことがあります。ソフトウェア開発などの場合、プロダクトを開発している間、非エンジニアの経営者がやることって実はそれほど多くないんですよね。会社を運営していくためのプロジェクトベースの仕事を併行するというのは理にかなっていると思います。
岡本:はい。我々としても起業家を支えるプラットフォームになっているのではないかと考えています。そういった中で、我々はどういった世界を作っていきたいか。
プロフェッショナル人材の方が次の挑戦の場所を探そうと思ったときには、かつては転職というのが一番の選択肢でしたが、今では、独立・起業という選択肢を取る方が非常に増えています。しかし、転職系のサービスはあっても、独立・起業までを含めたキャリアをサポートできるプレイヤーは多くありません。こういった環境を踏まえ、我々は、単に業務委託の仕事を紹介するだけでなく、独立・起業をした方に向けて、お金を稼ぐ手段の提供や再就職の支援を行っていくことで、キャリアを一貫してサポートできる唯一のプラットフォームになろうとしています。これが、いま我々が目指している姿です。
みらいワークス「成長性に関する説明資料」より
このプラットフォームを作ることで、どういった価値を提供できるのか。プロフェッショナル人材の方々に対しては、独立・起業・転職といった異なる働き方を一貫してサポートできる唯一の会社になれるはずだと考えています。また、クライアント企業に対しては、外部人材を活用して経営課題を解決しようという時に、様々な選択肢をワンストップでサービス提供できる会社になっています。
コンサルタントの引き抜き歓迎
朝倉:御社のように、コンサルタントとクライアントを繋ぐサービスを展開していると、両者が直接契約を交わして仕事をするといったことが起こるのではないですか?
岡本:我々の特徴的なサービスとして、ご紹介したコンサルタントが非常に優秀で、「是非うちに欲しい」という声がクライアント側から出た場合、その人材がそのままその会社に転職する、という選択肢も用意しています。
よくあるケースだと思うのですが、普通、クライアント企業が、コンサルティングファームから常駐している優秀なコンサルタントを、「うちの会社に来ない?」と誘って引き抜いたら、コンサルティングファームからは「何を引き抜いてるんだ」と怒られると思うんですよね。
朝倉:小林さんは、怒られた人ですよね?(笑)
小林賢治(シニフィアン共同代表。以下、小林):確かにいろいろありました(笑)
岡本:これが、みらいワークスでは全然OKです。どんどんしてくださいと言っています。その代わりに、35%の転職フィーをいただいています。この「業務委託でお試ししてみて、良かったら採用」というのは他の会社だとなかなかできないと思います。このモデルを「大人のインターン」というサービス名称で推進していますが、これも、新しい雇用の選択方法や、採用方法ではないかと考えています。
朝倉:こうした人材提供のビジネスだと、プラットフォーム側が中抜きされてしまうことが、ありがちだと思うのですが、それを一つのビジネスモデルとして組み込んで、正々堂々とやって下さいということですね。
岡本:そうです。初めから、その話はお客様にもしますし、「引き抜きたかったら引き抜いて下さい」と先に転職に関する契約も結んでいます。その1人を引き抜くために弊社と仲違いして取引をやめるくらいなら、長い目で見て、また良い人を連れてきてもらう方が良いという信頼をお客様から得ていれば、中抜きされる心配はありません。もし中抜きされたのなら、それは私たちが価値を提供できておらず、実力不足であるということです。
こうした仕組みを取ることで、三者にとってウィン・ウィン・ウィンな関係を作ることに、我々は今チャレンジしています。
クライアントファーストではない
朝倉:みらいワークスのビジネスは、自動的なマッチングではなく、御社が登録者から選抜して、プロジェクトにアサインされているという点では、コンサルティングファームに近い動きですよね。
岡本:クライアントから見ると、おっしゃる通りで「メンバーをすべて外注している」コンサルティングファームに見えると思います。
ただ、我々は個人の独立している人たちに活躍できる場所を提供したい、という思いを実現しようとして、たまたまこのスキームに行き着いただけで、お客様に対しても「我々はクライアントファーストではありません、人材側を大切にしている会社です。」とお伝えしています。
(写真:Signifiant Style)
あくまで、独立している人たちのためにサービスを提供していますし、クライアント企業にとっても「そういった人が来たほうが御社にとっても良いですよね?」と、常々お伝えしているんです。
フリーの方がどんどん活躍できるようにしていこう。これは安倍政権の政策としても言及されていることです。「フリーランスを活用してビジネスを推進する、そんな新しい働き方を実践する会社になりましょうよ」というのが、我々が訴えている点です。プロフェッショナル人材のニーズが起点であるという意味では、我々はコンサルティングファームではないんですよ。
小林:それはおもしろいですね。あえて考え方をクライアントにも宣言してらっしゃる。
岡本:我々は、会社の理念でも「日本の未来のために挑戦する人を増やす」と言っているように、人に向いている会社なので、ここは嘘を付けないところですね。社内でもそういったことを徹底して伝えています。
パワーポイントのための徹夜はしない
朝倉:一般のコンサルティングファームであれば、パートナーが1週間に1回、クライアントとミーティングを行い、その人が責任を持ち、会社の看板を背負ってサービスの品質保証をするのが一般的だと思うのですが、御社の場合、どうやってクオリティを担保されているんですか?
岡本:弊社の場合、成果物納品の形は一切していません。ほとんどの契約は準委任契約で、成果物の納品ではなく、プロジェクトのプロセスにコンサルタントがちゃんと関与するといった点に責任を負っています。あくまで業務に対するパフォーマンスをコントロールしているのです。
その線引きをすることが、コンサルティングサービスを安く提供できる理由の一つであり、また、弊社が伝統的なコンサルティング会社ではない、もう一つの理由でもあります。
小林:コンサルタント時代は、納品物である資料の作成に相当な時間がかかっていましたからね。最後の最後に、データの精緻化や見栄えの面での修正を行ったり、ちょっとしたことをパワーポイントに付け加えたりといったことに、何時間も工数がかかるということがよくありました。
(写真:Signifiant Style)
岡本:精緻な資料の納品自体を責任として負わないというのが、我々の捨てたことなんです。この辺は、コンサルティングファーム出身者には「なるほど」と思っていただけるんですが、普通の業界の人に話しても、なかなか分かってもらえないと思います。ただ、納品責任まで負ってしまうと、コンサル会社と一緒になってしまいますし、フリーの方がそこまでやるのは、工数の面でもなかなか難しいんですね。できることと、できないことを明確にして、できないことはやらないと最初から言い切っています。
小林:コンサルティングファームにいた者からすると、非常に納得がいきます。コンサルタントは、実践の段階まで入り込めないことがままあるので、その分より一層きちんとした資料として残すことに工数をかけていたということもありましたが、事業会社の立場からすれば、実際には口頭で話せば済む話だったりもするんですよね。工数をかけているポイントが違うということですね。
岡本:そういう意味では、我々がやらないと決めたことの一つに、クライアント候補先への提案書を書かない、というものもあります。ここ最近は、大きな仕事を取る時に提案書を書き起こすことがたまたま2回ほどありましたが、上場する9月までに提案書を書いたことはほぼありません。そこってすごくコストがかかるじゃないですか。
朝倉:提案書も、裏では予算も付けて、2週間ほどかけて作成していますからね。
岡本:結局、提案書作成のコストが後になってクライアントに上乗せされて請求されているわけですよね。それはやりません。プロジェクトの体制について、「この人がメンバーで私がプロジェクトマネジャーです」とお伝えするだけです。
小林:そういう意味では、「こういうプロジェクト体制になります」という部分が、クライアントにとっては品質保証として十分に機能しているんですね。
常駐プロジェクトと起業家の二足の草鞋
朝倉:プロジェクトあたり、どれくらいの人数でチームを作るのでしょうか? また、そのチーム構築は、どのように行っているのですか?
岡本:プロジェクトは、1〜2人くらいから始まるものが多いのですが、最終的には、3〜4人くらいの規模になることが多くなっていますね。そのなかでは、ある程度のリーダークラスの人を置いてチームとしてやることもありますし、全く異なる作業をする独立した人材が集まってチームを作ることもあるので、ケースバイケースです。
例えば、大きなお客さんに、売上1兆円を超える総合メディア企業がいるのですが、このクライアント先には、常に10人前後のコンサルタントが常駐しています。ただ、部署ごとに、2人チームで入っているところもあれば、1人でプロジェクトマネジメントしている方もおり、動き方はプロジェクトごとにバラバラです。
とある事業子会社の企画部門に3年も常駐している人もいます。毎年のように戦略作りから実行支援まで行い、ほとんど社員みたいな感じですね。
みらいワークス「成長性に関する説明資料」より
朝倉:その方は、どうして正社員にならず、独立したままなのでしょうか? 独立したままのほうがやりやすいといった事情があるのでしょうか?
岡本:その方は、2人で会社を作り、いろんなビジネスの立ち上げを試行錯誤されています。起業された会社はまだうまくはいっていないので、もう1人の方が、起業した会社にフルタイムで入り、登録者の方はその会社では1割2割くらいしか稼働せず、独立したコンサルタントとして業務委託でお金を稼いでいます。
もちろん、転職するという選択肢もありますが、彼は自分のビジネスをやりたいとおっしゃっているので、その選択肢をとることはないと思います。
朝倉:御社はプロジェクトの額に対して、どの程度の仲介料を取ってらっしゃるのですか? 伝統的なコンサルティングファームの場合、パートナーであるか否かによって、個人が得る収入は雲泥の差があります。コンサルタントが独立して「直接やるとこんなにフィーをもらえるの?」と驚くというのはよく聞く話ではありますが、御社の場合、プロジェクトからはどれくらいの仲介料を取っているのですか?
岡本:ターゲットを20%と設定しています。昨年度の粗利率ですと19%くらいです。これが高いか安いかは人によって違うと思います。「高い」と言う方もいれば、「仕事を取ってきてもらってるから、それくらいとってもらってもいい」と言ってくださる方もいます。ただ、我々がこれ以上取ってしまうと、取り過ぎだと思うのでは、このくらいがちょうどいいんじゃないかと考えています。 今は、みらいワークスの社員もプロジェクトに常駐して、プロジェクトマネジメントをするケースもあるので、そうすると2割だと低いかもしれません。今後、プロジェクトのかたちによって変わってくるのかなとも思います。
朝倉:御社はいわゆるコンサルティングファームではありませんし、単純な横比較はできませんが、コンサルティングファームで働く人の感覚からすれば、プロジェクトの価格の20%という仲介料は、非常に安く感じられるでしょうね。
仕事のチャンスを提供していたらビジネスになった
小林:どういった経緯で、プロフェッショナル人材の働き方ということに注目されたのですか?
岡本:最初から狙ってこのビジネスモデルを作ったわけではありません。当初は失敗も繰り返していました。例えば、システムの請負に近いようなビジネスをやったこともありますし、エンジニアの派遣を行っていたこともあります。試行錯誤した末に、このビジネスモデルになりました。
(写真:Signifiant Style)
私はコンサルを辞めて、10年前に起業したのですが、仕事を取っているうちに、自分では手がまわらなくなり、周りの人に頼むようになったんです。そしたら、頼んだみなさんから「ありがとう」と言われたんです。
コンサルタントとしてお客様から「ありがとう」と言われたことはありましたけど、それよりも、人にチャンスを提供して「ありがとう」と言われるのが嬉しくなってしまいました。「俺はこっちのほうが良いや」と思ってやり始めたのがきっかけです。
また当時、マッキンゼー出身の小川政信さんという方と一緒にプロジェクトをやる機会があったのですが、彼はすごく仕事ができるんです。頭が良すぎて、ロジックの組み立てについていけない。個人コンサルタントとしてやっていこうと思ったら、究極的には、こうならないといけないのか、これはどうやっても無理だなと思ったんです。一方で、自分より優秀なコンサルタントは世の中にこんなにもいるんだから、その人達に場を提供するほうが、よっぽど世の中のためになるじゃないかとも思い、今のビジネスモデルができたのです。
岡本:一時はエンジニアの派遣や、SIerのような仕事も受けていましたが、どれもレッドオーシャンでした。そこで他のビジネスモデルを全部捨てて、他社がやっていない、我々が一番得意なプロフェッショナル人材へのコンサルティング・プロジェクトの提供に特化し、単一モデルで勝負しようと考えたんです。そこからは、一気にIPOできる規模まで成長しました。
朝倉:プロフェッショナルの方にとっての御社の価値は、仕事を取ってくれることにあると思うのですが、その他に御社のプラットフォーム上で働くことの恩恵というのは、あるのですか?
岡本:そこが今、我々がチャレンジしているところです。1つはコミュニティづくりで、毎月、独立プロの方、20〜30人に来ていただいて、横のつながりを作るためのイベントを開催しています。独立してしまうと、ネットワークづくりに苦労するのですが、積極的にネットワークづくりをする方には営業目的の方も多いので、独立した人にとって良いネットワークって無いなと思いまして。
朝倉:なかなか、良いつながりに巡り合うことはないですよね。
岡本:我々のモデルだと、それなりのビジネス経験を持っている方や起業をされてきた方ばかりですので、そこで仲間づくりや、情報交換をしていただいたり、毎回ゲストスピーカーの方を招いて、お話をしていただいたりもしています。
それ以外には、税理士の方を紹介したり、記帳代行のアライアンス先を紹介したり、そういった仕組みは作っているのですが、そこは、まだまだこれからだなというところですね。
プロフェッショナル人材が挑戦できるエコシステム
朝倉:最後に今後、事業を拡大するうえでの構想をお聞かせいただけますか?
岡本:現状のコンサルティング領域の業務委託というマーケットだけで見ると、限界があると思っています。コンサルの市場規模というと、日本では6000億〜7000億といった規模ですので、その2割がフリーランスのプロフェッショナル人材になったとしても、1000億円を超える程度です。
しかし、これをフリーランサー全体に広げて考えてみると、状況が変わります。経産省の発表では、今、日本には、1000万人以上のフリーランサーがいると言われています。日本の全労働者の中での800万円以上稼いでいる人が9%と言われていますが、仮にフリーランスの中で年間800万円以上の収入を得ている人を9%と見積もると、だいたい100万人くらいの方がいる計算になります。
これくらいの方々を対象にサービスを提供すると考えると、十分大きなマーケット規模があります。そこで業務委託に留まらず、再就職や、起業の支援など、ライフステージに合わせた彼らのサポートを全て提供していくような構想を考えています。
我々は、これを「プロフェッショナル人材が挑戦できるエコシステムを作ろう」という言い方をしています。
岡本:業務委託だけでやっていくと、どこかで頭打ちしてしまうことでしょう。そうではなく、あくまで人にフォーカスし、プロフェッショナル人材のキャリア全体をサポートできるようなプラットフォームとして、人が必要としているサービスを作っていくということが、今、我々が考えていることです。
みらいワークス「成長性に関する説明資料」より
小林:確かに、私の周りでもそういったフリーランスの人をたくさん見てきました。出産育児で仕事の時間を一旦減らして、子どもが保育園に通い始めたところで、再び仕事に割く時間を50%くらいまで上げて、子供が16歳になったらもっとギアをあげる、といった働き方をしている女性の元コンサルタントが、私の知り合いにも何人かいます。
岡本:そういう意味ではプロの方々に長い人生の中で、一貫して働いていただけるように、ライフステージに合わせたフレキシブルな働き方を実現していきたいと思っています。
朝倉:「プロフェッショナル人材が挑戦できるエコシステム」が機能しだすと、ある程度経験を積んだ人材が、企業に所属する以外の選択肢として「みらいワークスを使ってフリーランスの働き方にもチャレンジしてみよう」と考えるような世界にまで持っていけるかもしれませんね。
まだまだ日本にはリソースがたくさん散らばっている
岡本:今の日本は労働人口が減り始めており、経済成長もかなり鈍化しています。これでは今後、発展途上国にどんどん抜かれてしまいます。今、小学校、中学校の段階からプログラミングを教えるなど、国際競争力を高めようという様々な試みがされていますが、その子ども達が大人になった頃には、日本は世界から置いていかれているのではないかという危機意識を持っています。
(写真:Signifiant Style)
だとしたら、プロフェッショナル人材の方々をもっと活用しながら、日本の経済を底上げするということを、今、目の前でやらないと、日本は沈んでいってしまうのではないでしょうか。
そういう意味でも、国全体として、プロフェッショナル人材のアサイメントを最適化していかなければならない。そのときに、我々は、社会のインフラになる気概で長期的にやっていく必要があると思っています。個々人の力を見渡せば、まだまだ日本にはリソースがたくさん散らばっていると思います。それを最大限活用できるようにしてきたい、というのが我々の願いですね。
朝倉:たまたま周りの人たちに仕事の機会を提供していたら、それがビジネスになり、また日本の労働問題や経済成長の課題に取り組む事業に成長してきたというのは、面白い経緯ですね。 「プロフェッショナル人材が挑戦できるエコシステム」の構築、期待しております。
(ライター:福田滉平)