ファーストヴィレッジ代表取締役社長 市村洋文氏

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だれにとっても時間は平等にある。だが成果を残す人は、その使い方が違う。そして違いが出るのは、平日ではなく休日だ。トップ営業マンは休日をどう活用して、まわりに差をつけてきたのか。3人の識者に6つのテーマについて聞いた。第1回のテーマは「雑談のネタを増やしたい」――。(全6回)

※本稿は、「プレジデント」(2017年5月15日号)の特集「一流の人の1週間」の記事を再編集したものです。

市村さんの教え
デパ地下と書店めぐりで情報ゲット

■ベストセラー本を週に20冊買う

世の中で今、どんなモノ、考え方、スタイルが流行っているのか、「自分の目」で見て回ることが大切です。大型書店はとても勉強になりますね。

私は週に1回、新宿紀伊國屋本店か丸善日本橋店に行きます。上から下までフロアを見て回り、路面の棚や平積みコーナーにあるベストセラー本をほとんど目次も見ず、15〜20冊ほど買います。最近なら投資用不動産、フィンテック、メンタルトレーニング、トランプ大統領といった感じで、ジャンルは様々です。経営者が書いた本もチェック。経済誌も5冊ほど購入します。

週刊誌も読みますよ。週刊文春と週刊新潮は毎号購読していますし、週刊現代と週刊ポストもたまに買います。「ゲスの極みってグループ名なんだ」とか、仕事ばかりしていたら入らない情報が手に入りますからね。

私は接待をすることが多いのですが、年配のお客さんは健康の話に興味を持つので、「いいお医者さんランキング」で病院の名前をチェックしておきます。盛り上がるばかりか、「実はその近くに住んでいる親戚が会社経営をしているのですが……」なんて貴重な情報が手に入ることもあります。

雑談をする際は、相手の表情を読み取ることが大事です。常にお客さんの表情を見て、何に興味を持っているのか探っています。それをメモに書いておき、週刊誌や本などから得た情報と合わせておきます。私は四角いメモを愛用していますが、情報やアイデアを整理するうえで非常に便利。お勧めです。

新聞は日経と読売と朝日、日経ヴェリタスをとっています。1つのニュースについて書き方が違うので、それを話すだけでも講演のツカミネタになるんです。たとえば「先日の事件、○○新聞では1面でも、○○新聞ではマッチ箱くらいの扱いでね」なんて話すと、みんな興味を持ってくれます。普段は1紙しかとっていない人も、休日はまとめて買って読んでみると発見が多いですよ。

男性誌はLEON、女性誌はVOGUE JAPANをチェックします。誌面に欲しい商品があれば、実際に店に足を運んで買います。「○○が流行ってるらしいよ」と話すより、「今、流行っている○○を買って使ってみたんだけど、結構重くて」と感想を交えるほうが相手は興味を持ってくれます。

グルメ雑誌も居酒屋特集があると買って、よさそうな店を予約し、数名のスタッフを連れて実際に行ってみます。美味しかったら3、4回通い、サービスも気に入ったら接待に使います。人が興味を持つのは、「店が雑誌に載っていた」という情報ではなく、「雑誌に載っていた店が実際にどうなのか」ということ。接待をする際にも、実際に行って美味しかった店に連れて行かなきゃダメ。自分のお金で行って、自分の舌で確かめるのがポイントです。

■地方の物産ネタで相手の心をつかむ

「百貨店全フロアめぐり」もよくします。まずはデパ地下へ行き、流行りのスイーツやお土産を見る。地方の物産展もチェックして、その地方のお客さんと会ったときに、「○○というお饅頭、美味しいですね」と雑談のネタにします。「実は創業者と知り合いで……」なんて思わぬビジネスチャンスに出くわすことも。

その後、紳士服売り場や有名ブランドのショップで、靴や鞄、時計のトレンドを見ます。エレベーターの待ち時間など、会話に詰まりがちなときに「そのネクタイ、流行の色ですね」なんていうと喜ばれます。婦人服や女性の高級下着をチェックすることもあります。人が知らない情報のほうが価値がありますからね。

▼相手を想像しながら、ネタ集めをすると楽しい

川田さんの教え
仕事とは関係ない人とゴルフをする

■プレー中にこぼれるよもやま話が最高

趣味のゴルフを通じて交流する異業種の方々のお話が、貴重な情報源になっています。私が所属する会員制ゴルフ倶楽部は、会社の経営者や、士業の方など、成功されている方が多い。初めてお会いする方も含め様々な方とラウンドするのですが、その間に多くのお話を聞き、知見を広げています。そして営業をする際に、「先日、ある経営者の方が、こんなことをおっしゃってたんです」と情報提供のネタにさせていただいています。

私はゴルフ倶楽部では一切、保険の営業をしません。保険について聞かれたらアドバイスをさせていただく程度です。本当は喉から手が出るほどお客さまになっていただきたい方もいらっしゃいますが、ぐっと我慢しています。損得の関係が一切なく、本気でプレーしているので、純粋にゴルフが楽しいんです。だから本音でいろいろ話せるし、親しくなれるのだと思います。

私は接待で飲みに行くことはほぼありません。2、3時間、同じ席で同じ距離でずっと会話をしなければならないのが苦手だからです。ゴルフは7、8時間、一緒にプレーして、裸でお風呂に入ったりとなかなか濃密です。でも、苦手な人がいたとしても、プレー中でも微妙に距離を置けますし、もっと話を聞きたいと思えば歩きながら2人にもなれますし、かえって楽なんです。

雑談ネタだけでなく、一流の人の考え方を学ぶことは非常に刺激を受けます。そして何より、人脈が広がります。私にとって情報収集の場であるとともに、感性の磨き場でもあります。

▼社外の一流の人の「何気ない会話」を拾う

和田さんの教え
「好き」から得た知識はおもしろい

■休日は楽しいことでクールダウン

雑談をするために何か情報を得ておかなきゃと、読みたくもない本を読んだり、無理やり勉強したりすることを、私はあまりお勧めしません。平日に仕事でストレスがかかっているのに、強制的な義務感でオフを使ってしまうと、本を読んでも頭に入らないし、しんどくなりますから。オフの日はできる限りクールダウンして、映画でも本でも趣味でも、好きなものを好きなように味わうほうがいいのではないかと思います。

私も意識的に情報収集をしていた時期もありますが、そういう浅い知識より、自分の興味あることや好きなことを掘り下げることによって得た知識や経験のほうが、はるかに自分の幅を広げることになるし、自分の言葉として出てくるんですよね。

もし知らないことが話題に出てきても、素直に相手の方に聞けばいいのです。「和田さん、そんなことも知らないの」と思われる可能性もありますが、知ったかぶりをするよりも「○○さん? 知らないです、どんな方ですか」と聞いたほうが会話も始まりますし、こちらが教えてもらう側に回るほうが相手を立てることもできるのです。

日経新聞を隅から隅まで読んで、みんなと同じ情報を持っていても、話は弾みません。それよりも、心に引っかかった「ワンフレーズ」や、「本に書かれていたエピソード」などを1つでもいいので覚えておいて、いつでも話せるようにしたほうがいいです。1つでもすごく詳しく語ると、みんな感心して、「よく勉強している」と勝手に誤解してくれるのです。

▼心に引っかかったネタだけ、ピックアップする

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市村洋文
ファーストヴィレッジ代表取締役社長。
野村證券入社後、前人未到の月間手数料収入6億円を達成。その後、KOBE証券の社長に就任し上場に導く。2007年に現在の会社設立。著書に『1億稼ぐ営業の強化書』。最新刊は仕事を効率化し人脈を驚異的に広げるメモの取り方を書いた『1億稼ぐ人の「超」メモ術』(ともにプレジデント社)。
 

川田 修
プルデンシャル生命保険エグゼクティブ・ライフプランナー。
リクルート時代、年間最優秀営業マン賞受賞。1997年プルデンシャル生命保険に入社し、2001年営業成績全国約2000人中1位となる。著書に、テクニックではなく人間力で営業をする方法を説いた『僕は明日もお客さまに会いに行く。』(ダイヤモンド社)などがある。
 

和田裕美
ビジネス書作家・営業コンサルタント。
日本ブリタニカ入社後、世界142カ国中2位の成績を収め、20代で女性初の支社長に。京都光華女子大学客員教授。幸運が舞い込む仕組みを解明した『和田塾 運をつくる授業〜あなたもぜったい「運のいい人」になれる方法がわかった!』(廣済堂出版)など著書多数。
 

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(ビジネスライター 嶺 竜一 撮影=和田佳久)