22日放送、日本テレビ「another sky-アナザースカイ-」に、五輪で体操個人総合2連覇の絶対王者・内村航平が出演。2009年の世界体操で初めて世界一になったロンドンを訪れた。

内村はことし10月のモントリオール世界体操で、跳馬の際に「リ・シャオペン」で着地した際に足を負傷。前距腓じん帯不全断裂で現在は療養中だ。ケガをしたときのことを、内村は「高さがいつもよりなくて、最後(着地のために)ねじ込みにいった」と振り返り、「だから左足にすごく体重がかかって、スネが真っ二つに折れた感覚があった」と、その衝撃を明かした。

「365日、体が痛くないことはない」という内村だが、体を戻すのに休んだ日数の3倍はかかると言われているという。だからこそ「ちょっと痛くても動きの中でやっていく」方法を取る一方で、「基本中の基本からつくり直していく」ことも進め、粛々とリハビリをこなしている。

後輩の白井健三は、内村が自分の調子を「1%単位で表せる」と明かし、「それくらい自分を知ることができている。努力に無駄がないというのは間違いない事実」と敬意を表した。

実際、内村本人も「僕のことを天才って言ってくれている人がいるんだったら、天才とはたぶん、努力をし続けられる人のこと」と、今の地位を築けたのは努力の賜物だと強調している。

元々は緊張しがちで、かつて「ゆか」で演技構成を忘れ、走ってしまったこともあるという内村が、緊張をコントロールできるようになったのも、努力のおかげだ。高校生のときに「練習でできているんだからできないわけない」と開き直ることができたという。それだけの練習をこなしたからだ。

内村が練習に打ち込めるのは、やはり体操が好きだからだろう。小学校1年生ぐらいのときに、それまでできなかった蹴上がりができたときのうれしさは、今でも超えていないという。年齢や実力は「楽しさ」と関係ないのだ。

その楽しさを伝えるために、内村は昨年から体操界で初めてプロに転向した。意識したのは、ロンドン五輪の直後。「世界選手権を3連覇して、金メダルを獲って、それだけ結果を残しても、なかなか体操の知名度が上がっていないと感じた」という。

当初はメッセージの発信を意識していなかったが、「トップに立っている人間がそれだと、体操の魅力もクソもない」「多少長くなってもいいから自分の言葉でどうにかして伝えたい」と、体操の魅力を伝えることを決めたのだ。

ロンドンで逃した団体優勝も果たしたリオ五輪は、幕引きを図るのに最適のタイミングでもあった。だが、ロンドン五輪のときは引退も視野に入れていた内村は、リオ五輪での引退を考えていなかったという。東京五輪が決まっていたからだ。

開催が決まったときは「うわぁ、東京だ…やんなきゃ…」と漏らし、「引退させてもらえない運命」も感じているという。もちろん、年齢にも勝てない。「31歳で迎える五輪なので、いけなくはない、でも確実にしんどい年齢」と覚悟している。だが、「苦しい道のりしかないと思うんですけど、未知すぎて逆に楽しみ」と前を向いた。

白井をはじめ、世界では若手が台頭してきている。だが、内村は「経験値っていう武器は絶対にブレないし、誰にも譲れないくらい凄い経験をしてきていると思うので、勢いくらいじゃ倒されたくないというプライドがある」と、キングの誇りをうかがわせた。

そんなキングにとって「体操人生において最終章になる」東京五輪。体操の魅力を「日本の小さい子たちに伝えられる一番いいチャンス」となる舞台に向け、内村はリハビリを進めている。

演技に関して「満足することは一生ない」という内村だが、東京五輪で最高の体操を期待できるか問われると、笑顔で「はい」と答えた。