「パワーポイントの間違った使い方」

ツイッターで2017年6月18日、こんなタイトルの動画が投稿され、再生回数は16万1200回を超え、ツイート自体も「いいね」5420、「リツイート」4277(22日夕現在)を数えるなど、反響を呼んでいる。

駅のホームに列車が到着し、乗客が降りるまでの一部始終が、動画で表現されている。ツイートの投稿者によれば、すべて「パワーポイント」で作成したものだという。なぜパワーポイントで、この光景を再現しようと思ったのか。Jタウンネット記者は20日、動画の投稿者に話を聞いてみた。

「約250個のオブジェクト」を使用

動画の音声に耳をすませると、列車の到着音らしきメロディが流れた後、

「ロープが上がります」
「高槻、高槻でございます。お忘れ物のないように、ご注意ください。乗り降りの際には、足元にご注意ください」

と聞こえる。駅員のアナウンスらしき音声も加わり、さながらホームにいる臨場感が肌で感じられる。

Jタウンネット記者が6月20日、ツイッターのダイレクトメッセージ(DM)で話を聞いてみると、投稿者の「えすぶっく」(@SbookGroup)さんは、JR西日本(東海道本線)の高槻駅(大阪府高槻市)をモデルにした、と明かした。

「音声は、高槻駅で収録したオーディオファイル(生音)をパワーポイント内に挿入して再生しています」

音声に加え、画面もすべて「パワーポイント」の機能で作成したという。えすぶっくさんはツイッターでも、「昼食べてから作り出して、夕飯までに終わらなかったので...結構かかりましたね」と投稿し、実際の作成画面を公開している。


提供:えすぶっく(@SbookGroup)さんのツイッター


提供:えすぶっく(@SbookGroup)さんのツイッター

それにしてもなぜ、パワーポイントで高槻駅のホームを再現しようと思ったのか。

「高槻駅に設置されているこの独特の動きをするホーム柵ですが、パワーポイントのアニメーション機能を用いれば忠実に再現できるのではないかと考えたためです」(えすぶっくさん)

実は高槻駅は、このようにロープを横にぴんと張ったホーム柵、いわゆる「昇降式ホーム柵」を設置した全国初の駅だった。「昇降式ホーム柵」の長所は、扉の枚数が異なる車両にも対応できることだ。JR西日本が開発を進め、高槻駅の1、6番のりば(新快速・特急専用)で16年3月26日、利用開始にこぎつけた。


高槻駅の「昇降式ホーム柵」(もんじゃさん撮影、Wikimedia Commonsから)

スライドの切り替わりを悟られないよう工夫した

動画を作成する過程で苦労したことを聞くと、えすぶっくさんは

「このスライド内では、約250個のオブジェクトを、3つのアニメーションを組み合わせて動かしています。しかし、パワーポイントの仕様上、1つのオブジェクトに移動アニメーションは連続で1回しか使用できません。そのため、車両を動かした後ドアを開けるという2つの動きを再現するために、スライドを2枚に分けています。ここで、1枚目のスライドで移動させたオブジェクトと、2枚目のスライドのオブジェクトの位置を完璧に合わせ、スライドの切り替わりを悟られないよう工夫する必要がありました。この作業は手動で微調整する必要があり、非常に手間取りました」

と答えた。苦労した甲斐あり、スライドの切り替わりに気付かれるおそれはない。ツイッターでは、

「何時間かかるのやら、ただただ脱帽です」
「ぼくもこういう感じのやつ作ったことあるんですけどここまでクオリティー高くないので驚きました」
「すごいクオリティで感動しました...!」

と賛辞のリプライが寄せられている。