春先、早くて年明け早々、1月上旬にはスーパーや八百屋さんなどで目にする「新タマネギ」。普通のタマネギよりも辛みが少なく、やわらかいのが特徴だ。この新タマネギを「普通のタマネギ」にする方法があるらしい。いったいどういうことなのか。

新タマネギと普通のタマネギの違い


まず、新タマネギと普通のタマネギの違いからはっきりさせておこう。
福井県のJA越前丹生のサイトによれば、「新タマネギ」は「収穫後に乾燥処理をしないで出荷されるタマネギ」であり、普通の皮が茶色のタマネギは「春に収穫したタマネギの表皮を乾燥させ保存性を高められて」いるものだという。
つまり、両者の違いは「収穫後、乾燥させているかどうか」であるようだ。

新タマネギを置いておくと普通のタマネギになるというのは本当か?



噂によると、新タマネギは家庭でも長期保存しておくと、普通のタマネギのようになるという。これは本当なのか? そこで、真相を確かめるべく、新タマネギを日本で一番早く出荷しているという静岡県浜松市に聞いてみた。

答えてくれたのは、浜松市の農業水産課 匂坂(さぎさか)さんだ。

「新タマネギは、長期保存すれば普通のタマネギになります。
浜松市から出荷している新タマネギには、主に白タマネギ、黄タマネギ、紫タマネギがあります。いずれも春先に気温が急激に高まることで成長した後、すぐに収穫します。中でも、白タマネギは一番早く収穫して出荷するため、最もやわらかく、辛みが少ないです。よって、サラダオニオンと呼んでおります。白タマネギは保存性が効きにくいので、長期保存には向きません。
やるのであれば黄タマネギの中でも、5月頃に出荷する晩生種を使うといいでしょう。2個や4個など偶数個を、葉をつけたまま紐でしばって、風通しのいいところにつるしておけば、普通のタマネギになります」


新タマネギを乾燥させると、普通のタマネギのように、皮が茶色になるのだろうか。また、味にはどのような変化が起こるのだろうか。

「黄タマネギは、乾燥させると皮が茶色になります。他に変わることといえば、かたくなることです。そして多少辛さが出てきます。ただ、北海道産やニュージーランド産などの普通の貯蔵玉ねぎほど、長く保存はできません。普通のタマネギは貯蔵性がいい品種を栽培しているため、保存がきくのです」

タマネギの辛さは何が関係しているのか?


長期保存するとタマネギの辛みが多少増すということは、辛みの違いは、保存期間によるものなのだろうか。

「タマネギの辛みを左右する一番の理由は『品種』です。浜松市が作っている数種類の新タマネギは、北海道産のタマネギとはもともと品種が異なります。品種によって辛みの強さが異なるのです。
そして次の理由が、栽培する時期や栽培にかける時間です。より長い時間をかけて栽培するほど、辛みは強くなる傾向があります。北海道は浜松などと比べて、夜は冷え込むため、育つのに時間がかかります。ゆっくり育てられることで、辛みが増すのです。その点、浜松の新タマネギは、春先に急激に成長してすぐ収穫するため、辛みが少ないのです」

(石原亜香利)

取材協力
静岡県浜松市
フェイスブックシリーズ「はままつのおいしい農産物」