ジャーナリストとはどのような人なのか? 自分のことをジャーナリストと名乗る、もしくは周囲から言われている人が、メディアで肯定的または否定的に世間の耳目を集めることがある。その際、特にフリーとして案件ごとに各媒体で働く彼らに対して、「自称だろ」と世間から陰口がたたかれることもあるし、報道機関に所属または実績があっても、その人が発表している内容を批判して「あの人は自称」と皮肉を言われるときもある。


ジャーナリストとは、広辞苑によれば「新聞・出版・放送などの編集者・記者・寄稿家などの総称」だが、日本では何をもって「自分はジャーナリストだ」と主張できるかは曖昧だ。報道機関に勤める記者であったり、自ら名乗ったり、今まで積み重ねた実績によるところが大きい。

一方でフランスの場合、ジャーナリストと名乗れるかどうかは、CCIJP(職業記者身分証明書委員会)が発給するジャーナリストとしての身分証明書(プレスカード)を持っているかどうかが、1つの判断基準になる。フランス国内における公的な取材申請には、報道機関の社員であれフリーであれ、このカードの提示が要求される。

そこでフランスの例を見ながら、「ジャーナリストとはどんな人なのか?」もう少し具体化していこう。

仏でジャーナリストになるには


CCIJPによれば、フランスでジャーナリストとしてのプレスカードを申請するには、最低連続した3カ月間、ジャーナリストとしての職務実績があり、雇用主が報道機関(活字または映像)もしくは通信社であることが求められる。


収入についても規定がある。出来高払い(フリーランス)の場合は、3カ月もしくは12カ月のジャーナリストとしての平均月収が、フランスの法定最低賃金の半額を上回ること。またジャーナリストとしての活動が主で、それが全体収入の5割以上であれば、他の職業と兼務しても、このカードを申請できる。2015年は約3万6000枚が交付されている。

外国籍のジャーナリストで有効なフランスの滞在許可証を持ち、フランスのメディアと仕事をしている場合は、交付条件はフランス人と同様だが、外国メディアの特派員としてフランス国内で活動する際は、交付はCCIJPではなく仏外務省が担当する。

ジャーナリストとしての特典も


手続きを踏んでジャーナリストとしての身分を証明できれば、さまざまな特典もある。


一例としては、まず税金の申告の際に所得の一部が控除される。そしてプレスカードを提示することで、美術館や博物館の入館が無料となり、有料の見本市・展示会にも入れる。いくつかのメーカーの車やオートバイも、購入の際に割引になる。

もちろんプレスカードを持っていることは、ジャーナリストという職業を証明するのみで、その質を証明するものではない。もっとも大切なのは、ジャーナリストである枠組みより、それぞれの取材・報道内容だ。ただ、フランスのケースは一例に過ぎないが、こうしたシステムを、導入するにせよしないにせよ日本でも一度確認してみても良いのではないだろうか。

何らかの統一した基準を設け「ジャーナリストとは何か?」ということを規定することによって、「よく分からない曖昧なもの」から、ジャーナリストという職業をきっちりとした社会的立場として、変えることができる。それらは結果的に、各人の心構えやジャーナリスト全体の向上にも、より寄与していくかもしれない。
(加藤亨延)