林の中に突然現れる、丸くて真っ白な“おもち”。なんとも不思議な光景ですが、実はこれ「ユキモチソウ」という植物なのです。



なぜこんな姿をしているのか? あの“おもち”部分はいったい何なのか? 珍しい植物「ユキモチソウ」について、六甲高山植物園の広報担当・小山さんに聞いてみました。

山地のアイドル? 観光客にも人気の植物


――ユキモチソウとはどんな植物なのでしょうか?

本州(三重県・奈良県)及び、四国の山地の林下に生える高さ30〜50センチメートルの多年草です。花の軸の上が白く丸くなっており、その形からお餅を連想して「雪餅草」と書きます。この筒の中に、小さな花がついた軸があります。

市街地では、なかなか見られないユニークかつ愛らしい形と、その名称から多くの観光客の人気を集めています。

――絶滅危惧種にもなっていると聞いたのですが、貴重な植物なのですね。

そうですね。環境省のカテゴリでは、絶滅危惧II類(VU)と認定されていて、日本では「絶滅の危険が増大している種」として、挙げられています



――「おもち」部分にはどんな役割があるのですか?

お餅の様に見える部分は「花序付属体」(中央にある棒状の部分)の先端です。隠れている下の方に、雄株であれば雄花、雌株であれば雌花が咲いています。付属体から匂いを出し、受粉するために虫をおびき寄せています。

――あの白い部分はどんな手触りですか?

白い部分(花序付属体)は、大きな空隙をもつ柔細胞で構成されています。手触りは個体や熟れ具合によりますが、基本的に柔らかく「ぷにぷに」していますね。



――どんな匂いがするのでしょうか?

ユキモチソウは虫をおびき寄せるために匂いを発しますが、ヒトの嗅覚では殆ど感じることが出来ない微弱な匂いです。

――ユキモチソウは食べられるのですか?

テンナンショウ属はすべて有毒ですので、食べられません。誤って食べたら、口がしびれたりするそうです。



――家庭でも育てられますか? その際の注意点は?

日陰で育てられますが、鉢植えの場合は冬に球茎が凍ってしまったり、また、夏に腐食することがありますので、ご注意ください。

――小山さんが考える、ユキモチソウの魅力はどこですか?

テンナンショウ属の中でも珍しく特徴的な花序付属体、「おもち」の部分に何とも言えない愛くるしい魅力を感じます。写真加工ソフトでおもちの部分に顔を描いたりして遊んでいました。

一輪だけで見るのも面白いですが、このユキモチソウが20〜30輪ほど群生している様子は、小人が並んでいるようにも見えて、非常に珍奇な光景だと思います。



おもち部分に顔の絵! 想像するだけでかわいいですね。自然の中に丸くて白いものが、ぽん!と浮かんでいる感じで目をひきます。

変わった形の植物を大特集 「珍奇植物展」


六甲高山植物園では、4月22日から5月7日まで、「ユキモチソウ」やその仲間であるテンナンショウ属に焦点を当てた企画展「珍奇植物展〜ユキモチソウとその仲間たち〜」が開催されます。

ユキモチソウ以外にも「マムシグサ」、「ムサシアブミ」、「ヒメウラシマソウ」など、おもしろい植物が勢ぞろい。




――企画展開催の経緯を教えてください

以前はそこまで多くなかったのですが、環境が適応したのか、ここ数年で一気に数を増やしたユキモチソウに焦点を当てたかったのが、今回の企画展のきっかけでした。

ユキモチソウは、当園の初夏の恒例イベント「初夏の高山植物展」で一番早く売り切れる苗で、人気が高いのは間違いなかったのですが、これと言って日の目を浴びることもありませんでした。そこで、今回の特集でその変わった形をした植物をより多くの人に知っていただきたく思い、イベントを企画しました。

――どういったところがおススメポイントですか?

園内に自生しているテンナンショウ属の植物が一番のおすすめポイントですが、それ以外にも園芸研究家が育てた鉢の展示や、パネル展示、クイズラリー等、テンナンショウ属を知り尽くすことが出来る展示・イベントをご準備しています。




――ちなみに六甲高山植物園は、冬の間休園しているのですね

冬期休園中の植物園ですが、現在、バイカオウレンやフクジュソウなどの早春の花々が芽吹き始めています。開花は2月下旬ごろです。

2月25日(土)、26日(日)、3月4日(土)、5日(日)、11日(土)、12日(日)の特別開園、3月18日(土)のシーズンオープン、そして、ユキモチソウが開花する4月中旬頃は、それぞれ違う花が見ごろを迎え、何度来ても楽しめます。園内の様子の移り変わりに目を向けると、春の訪れをより身近に感じることが出来ると思います。



六甲高山植物園では、ユキモチソウをはじめ、山奥や標高の高い地域に行かないと観察することができない、珍しい植物を多数展示しています。公共交通機関や車で手軽に行くことができるのがいいですね。

四季折々の自然と、普段はお目にかかれない「ユキモチソウ」をはじめとした貴重な植物を見に行ってみてださい。
(篠崎夏美/イベニア)

六甲高山植物園 珍奇植物展 〜ユキモチソウとその仲間たち〜

【期間】4月22日(土)〜5月7日(日)
【入園料】大人(中学生〜64歳)620円/小人(4歳〜小学生)310円/シニア(65歳以上)520円
【開園期間】3月18日(土)〜11月23日(木・祝) ※9月7日(木)は休園
【開園時間】10:00〜17:00(16:30受付終了)※イベント期間中無休

(画像提供:六甲高山植物園)