東京で最も繰り広げられているアナログなゲームは「イスとりゲーム」なのではないかと、電車に乗るときによく思います。小学生の頃レクリエーションでやったような、わかりやすい奪い合いはそうそう起こらない分、みんな頭の中で、座席を確保するために今自分がすべきことを、静かにかつ轟々と分析しているのではないでしょうか。
周りの人達に、電車で座席に座りたいとき、どの位置に立つか聞いてみました。

「7人掛け席の真ん中」派




「状況が許せば真ん中まで入る。真ん中の方が、沢山降りる傾向があるという個人的なデータがあるから」(50代/男性)

「座席の真ん中の前。端の席は始発から長時間乗る人が座っていそうだから」(30代/男性)

「端っこが大好きだったらどうしよう私も端っこ大好きなんだ」という短歌を以前作りました。
もし車内の座席がすべて空いていたら、おそらく多くの方が端の席を選ぶのではないでしょうか?
人気ですよね、猫に負けじと端っこ大好きなジャパニーズ。端の席は始発から乗る人のもの!と潔く諦めましょうか…。

「乗降口の前」派




「ドアの前。乗り降りのときにどの座席が空いたかすばやく観察し、座れそうならば座る」(20代/女性)

「端の席に座れることもある」とのこと。でた、「端の席」。ドアの前なら位置的に近いですもんね。
始発の人に譲りますか…と諦めかけていた端の席でしたが、ヒラリと座れちゃうこともあるようで。

ところで皆さんは、電車内で人間観察をすることってありませんか?
筆者は乗り合わせた他人の名前や生い立ち、家族構成を勝手に決める遊びを友人とよくやり、その夜「同棲を解消した遠藤優李さん(23)は、無事実家に帰れたかなぁ」とあまりにも勝手気ままな思いを馳せるのですが、座席を確保するために有意義な人間観察をしている人もいるのです。

「若者の前」派




「座れそうだなと思うときは学生さんの前に立ったとき。大体降りる駅がわかるから」(50代/女性)

「若い人の前。若い人の方が都心に用事があり、早く降りそうだから」(30代/男性)

その分析、たしかにわかります!
学生さんは学生街の駅で降りると予想できますね。
例えば山手線でも、若い人が座っている席の前に立ったら、渋谷、原宿あたりから座れそうな気がします。

「キョロキョロしている人の前」派




「外をやたら気にする人の前に行くと、次かその次の駅で降りる確率が高いと踏んでいる」(40代/女性)

たしかにキョロキョロ場所を気にする人は、いつ降りてもおかしくなさそうに見えますね…そうか、申し訳なかったな。というのもこのキョロキョロ、筆者はすぐに降りないときでもやってしまうのです。車内で他人と不意に目が合ってしまって気まずいときに、あなたを見たわけではないのですというふうに、今どのあたりだろうって。変な演技が勘違いを引き起こさせ、だれかを長いこと立たせることになっていたかもしれないとは……。

やはり皆さん、分析や観察をしていました。どの分析ももちろん「必ずすぐに座れる!」というわけではないですが、納得できるものばかりでした。

老若男女、座りたい


「疲れたって顔して、荷物を両手に持って、電車の揺れに馴染めない様子でバランスを崩すと、よく席を譲ってもらえます」(60代/女性)

中学時代は上下関係が厳しく、通学で乗っていたバスの座席がどんなに空いていても1年生は座ってはいけないというルールがありました。座ったら先輩に呼び出されてしまうのです。
若者目線で言うと、今電車に乗るときの状況も、その頃と少しだけ似ているところがあります。もちろん空いている席に座ったところで、乗り合わせた人生の先輩に呼び出されて「ねぇねぇ1年なのになんで座ってるの?」と問い詰められるなんて世にも奇妙なことはありませんが、体調が優れないときに、きっと座れないだろうなと不安に駆られながら電車に乗るときがあります。

10代の頃、電車内で貧血を起こし、その場にしゃがみこんだけれど座席を譲ってもらえなかった話を友人にしたら、「しゃがんで化粧でもしたと思われたのかもね」と。若者ですからね…っていうのも変な話。年齢や見た目にとらわれず、平等に座席を譲り合いたいですね。
(武井怜)