「おんな城主 直虎」NHK公式ホームページより

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 1月8日から始まったNHK大河ドラマ『おんな城主 直虎』。混沌とした戦国時代を舞台に、大国に翻弄される小国の存亡の危機と、その逆境に立ち上がった1人の女性の激動の人生を描いていきます。

 第1回放送後のSNSなどでの評価はおおむね好意的だったようで、特に直虎の幼少期・おとわ(新井美羽)とそのいいなづけ・亀之丞(藤本哉汰)、そして2人の幼なじみである鶴丸(小林 颯)の3人の熱演に注目が集まっている模様。おとわが馬で駆け出していくシーンには驚かされ、亀之丞が笛を吹くシーンには胸がキュンとしたという方も少なくないのでは。

 子役の芸達者ぶりもさることながら、3人の関係性や個々の性格などがしっかりと描かれていた点も評価したいところです。一見すると3人はただの幼なじみですが、おとわは井伊家当主の娘。亀之丞も井伊一族で、次期当主。そして、鶴丸は家臣の息子。身分の違いを適当に描く時代劇も少なくない中で、「おんな城主 直虎」では、この関係性を当人たちがしっかり認識していることが描かれており、好感が持てます。

 おてんば娘で男勝りな性格に見えるおとわも、お寺に入ってきてまず仏様に手を合わせたり、母親に説得されてあっさりと納得したりと、しっかりと教育された賢い子どもとして描かれています。自分には何も良いところがないと落ち込む亀之丞を励まし、「(我が)いざとなれば太刀をはいて戦にも行ってやる」と、未来の妻として命がけで支えていく覚悟を語る場面では、彼女が「おんな城主」として困難を切り開いていく原点を見るような思いがしました。

 今回の大河ドラマで見逃せないのが、春風亭昇太演じる今川義元。第1回では一言も言葉を発しませんでしたが、笑点での姿からは想像もつかない不気味な存在感で「海道一の弓取り」として恐れられた有力大名を怪演しました。戦国的価値観に慣れてしまうと、井伊家の人間が謀反を企てても当人の首(と嫡男の首)だけで済ませてあげる今川義元って意外にいい奴だなって感じになるんですが、きっとこの後どんどん怖さを発揮してくれるはず。楽しみです。

 今回の大河ドラマの脚本は、「世界の中心で、愛をさけぶ」「仁-JIN-」「天皇の料理版」など、数々のヒット作で知られる森下佳子。第1回の放送では、当地に伝わる「竜宮小僧」の伝説を1つの軸としてストーリーを展開しました。特に、おとわたちが竜宮小僧探しに夢中になっている間に大人の世界では謀略が進んでおり、竜宮小僧を見つけたと思ったら預かった密書を奪われて殺害された山伏の遺体だったというくだりは、なかなか引き込まれる展開だったのではないでしょうか。

 今後、竜宮小僧は生涯にわたっておとわを見守っていくのでしょうか。それとも、おとわが亀之丞に語ったように、彼女自身が竜宮小僧として描かれるのでしょうか。「仁-JIN-」ではあれだけ広げに広げた風呂敷を最終回できれいにたたんだ森下佳子の脚本なので、竜宮小僧にも何か意味があると期待したいところです。

文・中島千代