いまだ続くPM2.5の脅威 (C)孫向文/大洋図書

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 こんにちは、中国人漫画家の孫向文です。

 2016年12月、中国・上海市に住む僕の親族が死去しました。病院の診断の結果、死因は重症肺炎であることが判明し、肺をCTスキャンしたところSARS(重症急性呼吸器症候群)患者とほぼ同様の状態だったそうです。僕の従兄弟は「真っ白い綿が肺に充満しているみたい」と形容していました。CTは被写体を白黒反転で写します。つまり親族の肺は真っ黒に汚染された状態だったのです。

■もはや大気汚染は「測定不能」

 親族が肺炎を患った原因は中国各地に蔓延する粒子物質「PM2.5」汚染によるものだと思います。PM2.5汚染指数の目安は色で表され、201を超えると中度汚染の紫色、300を超えると重度汚染を示す茶色になるのですが、河北省の「石家庄市」という都市ではすでに「測定不能」状態の1000指数を記録しています。さらに中国気象庁は、中国17省内の71都市が重度汚染状態で、国土全体の79%が汚染状態にあると発表しました。

 このような状態であるにもかかわらず、石家庄市内の学校は「政府教育部門の指示を待っている」という建前のもと授業を中止せず、室外における体育授業すら継続しています。そのため現在は体調不良を訴える生徒が続出しており、保護者たちによる抗議が殺到しています。その一方、一部の保護者は自分の子供の成績低下を恐れて授業継続を支持しています。徹底した学歴社会の中国では、子供たちの健康より成績向上が優先されることもあります。

 中国気象庁のデータによると、河北省全土が深刻なPM2.5汚染状態となっており、もはや人々の存続が危ぶまれる状態です。しかし、中国国内で唯一チベット自治区のみが「良好」を表す青状態です。

経済発展の影響で中国では10年ほど前から本格的なカメラが普及しだしたのですが、撮影愛好家たちの間ではチベットは「撮影愛好家のパラダイス」と呼ばれ、彼らはこぞってチベット観光にでかけます。その理由は空気が清浄であるため絶景が撮影できるからです。

中国では中国の国土は「西高東低」と呼ばれるように西部は山岳地帯、東部は平野部になっているのですが、チベット自治区は「神々の山」と表現されるような標高の高い場所に位置しているため、PM2.5が飛来しづらいのです。しかし、現在中共政府は金脈発掘のためにチベットの山脈を次々と爆破、破壊しています。

 加えて経済発展を目的に今後チベット自治区内を開発して工業地帯化するおそれがあります。そのような状態になってしまえば大気汚染が発生ことは確実です。チベット自治区は一刻も早く独立して、大気汚染の被害を阻止するべきだと僕は思います。
 
 中共政府が露骨な経済推進政策を継続する限り、中国の大気汚染は深刻化する一方です。僕は日本政府が日本の方々の中国渡航の自粛を呼びかけることを推奨すると同時に、日本企業は現地の従業員の健康のために、中国からの撤退を計画した方が無難だと思います。

著者プロフィール


漫画家

孫向文

中華人民共和国浙江省杭州出身、漢族の33歳。20代半ばで中国の漫画賞を受賞し、プロ漫画家に。その傍ら、独学で日本語を学び、日本の某漫画誌の新人賞も受賞する。新刊書籍『中国が絶対に日本に勝てない理由』(扶桑社)が発売中。