【戸塚啓コラム】日本代表にストロングヘッダーは要らないのか
驚きはない。想定内の変化である。11月11日にオマーンと、15日にサウジアラビアと対戦する日本代表のメンバーだ。
ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は、ガンバ大阪の井手口陽介を初めてリストに加えた。リオ五輪に出場したこの20歳は、ここにきて成長速度を急激に上げている。ストロングポイントであるボール奪取能力の高さに加え、自らが課題にあげてきた「攻撃への関わり」で決定的な仕事ができるようになってきた。
オフェンシブなMFの候補には、小林祐希が名を連ねた。代表デビューを飾った6月のキリンカップ以来の招集である。
所属するヘーレンフェーンではポジションをつかんでおり、ゲーム勘への不安はない。香川真司、清武弘嗣に次ぐトップ下の3番手が、現時点での彼の序列である。2列目で違いを見せられるかどうか。オランダでの成長を示すことで、代表定着への足掛かりとしたい。
FW登録では、触れるべき選手がふたりいる。大迫勇也と久保裕也だ。クラブでのプレーぶりから判断すれば、どちらの招集も当然と言っていい。金崎夢生、武藤嘉紀、小林悠らが選考外となっていることも、ハリルホジッチ監督の決断を後押ししたに違いない。
サウジ戦へ向けたハリルホジッチ監督のプランは、海外組のコンディションをオマーン戦で高め、グループ首位国を迎え撃つというもののはずだ。しかし、試合で起用しなければ、新戦力の経験値は上がらない。チームの底上げもなされない。呼ぶことが“アリバイ”のようになり、戦力的な上積みを得られないまま2試合を終えてしまうのは避けるべきだ。
過去の大会方式が踏襲されれば、オマーン戦は6人まで交代が可能である。井手口、小林、大迫、久保の4人を送り出す余地はある、と考えていい。
個人的に疑問を抱くのは、「スクランブルへの備え」である。1点が必要な展開でゲームの終盤を迎えたときに、ハリルホジッチ監督はどのような策を講じるのだろう。パワープレーは想定していないのか? しているのであれば、UAE戦やイラク戦と同じように吉田麻也を前線へ上げるのだろうか。
大迫は182センチのサイズだが、空中戦を何よりも得意とするタイプではない。ストロングヘッダーが不在のまま、今回もゲームに挑むこととなる。
中東のチームは、伝統的にサイドからの揺さぶりに難がある。サウジも例外ではない。センターバックには187センチの長身選手がいるが、最終ライン全体では高さを強みとしていない。ハーフナー・マイクや豊田陽平のような空中戦で威力を発揮するFWは、有力な交代カードとなりうるはずだ。
彼らがピッチに立たなくてもいい。メンバーリストに入っているだけでも、敵将ファンマルバイクを精神的に揺さぶることができる。
9月、10月のW杯最終予選と異なり、今回は移動や時差に悩まされない。練習の回数もこれまでより多い。内容を伴った勝利が要求される。ストロングヘッダーが緊急発進する展開に、そもそも持ち込まれてはいけない一戦だが……。
ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は、ガンバ大阪の井手口陽介を初めてリストに加えた。リオ五輪に出場したこの20歳は、ここにきて成長速度を急激に上げている。ストロングポイントであるボール奪取能力の高さに加え、自らが課題にあげてきた「攻撃への関わり」で決定的な仕事ができるようになってきた。
所属するヘーレンフェーンではポジションをつかんでおり、ゲーム勘への不安はない。香川真司、清武弘嗣に次ぐトップ下の3番手が、現時点での彼の序列である。2列目で違いを見せられるかどうか。オランダでの成長を示すことで、代表定着への足掛かりとしたい。
FW登録では、触れるべき選手がふたりいる。大迫勇也と久保裕也だ。クラブでのプレーぶりから判断すれば、どちらの招集も当然と言っていい。金崎夢生、武藤嘉紀、小林悠らが選考外となっていることも、ハリルホジッチ監督の決断を後押ししたに違いない。
サウジ戦へ向けたハリルホジッチ監督のプランは、海外組のコンディションをオマーン戦で高め、グループ首位国を迎え撃つというもののはずだ。しかし、試合で起用しなければ、新戦力の経験値は上がらない。チームの底上げもなされない。呼ぶことが“アリバイ”のようになり、戦力的な上積みを得られないまま2試合を終えてしまうのは避けるべきだ。
過去の大会方式が踏襲されれば、オマーン戦は6人まで交代が可能である。井手口、小林、大迫、久保の4人を送り出す余地はある、と考えていい。
個人的に疑問を抱くのは、「スクランブルへの備え」である。1点が必要な展開でゲームの終盤を迎えたときに、ハリルホジッチ監督はどのような策を講じるのだろう。パワープレーは想定していないのか? しているのであれば、UAE戦やイラク戦と同じように吉田麻也を前線へ上げるのだろうか。
大迫は182センチのサイズだが、空中戦を何よりも得意とするタイプではない。ストロングヘッダーが不在のまま、今回もゲームに挑むこととなる。
中東のチームは、伝統的にサイドからの揺さぶりに難がある。サウジも例外ではない。センターバックには187センチの長身選手がいるが、最終ライン全体では高さを強みとしていない。ハーフナー・マイクや豊田陽平のような空中戦で威力を発揮するFWは、有力な交代カードとなりうるはずだ。
彼らがピッチに立たなくてもいい。メンバーリストに入っているだけでも、敵将ファンマルバイクを精神的に揺さぶることができる。
9月、10月のW杯最終予選と異なり、今回は移動や時差に悩まされない。練習の回数もこれまでより多い。内容を伴った勝利が要求される。ストロングヘッダーが緊急発進する展開に、そもそも持ち込まれてはいけない一戦だが……。
1968年生まれ。'91年から'98年まで『サッカーダイジェスト』編集部に所属。'98年秋よりフリーに。2000年3月より、日本代表の国際Aマッチを連続して取材している