つまり、バルサのルイス・エンリケ監督が本田獲得に「NO」を出し、両者の接触は本格的な交渉に発展しないまま短期間のうちに終わったのだ。
 
 ちなみに、このブライドと本田は、紙一重ですれ違った。前者は2013年の年末にミランのSDを辞めて、後者は2014年の年頭にミランに入団したからだ。
 
 とはいえ、ブライダは世界のサッカーを熟知しており、本田の長所と短所をよく知っていた。彼はミランの10番をこう分析する。
 
「本田はもう若くはないし(現在30歳)、年齢を重ねてスピードも落ちてきた。しかし、頭のいい選手であり、テクニックとキックは評価できる。私は彼が良い選手だと思うよ。それと、極めて高いプロ意識を、個人的にはとても高く買っている。カルチャトーレ(サッカー選手の意)にとって、規律を守ることは基本中の基本だし、自分のことよりも先にチームのことを考えられるかは大切なことだ。そんな本田が、いつもピッチの外にいるのを見るのはとても残念だ。彼自身も今のミランでなら主役を張れると思っていただろう」
 では、なぜ本田はミランでベンチに追いやられることが多いのか? この点に関して私は何度もこのコラムで触れてきたが、ブライダはその理由を次のように見ているようだ。
 
「本田には“爆発的なパワー”がない。それが彼をベンチに追いやっている何よりの原因だ。スソやニアングのような、一気に敵陣を突破するプレーが彼のレパートリーにないんだ。現代のビッグクラブで主力を張るには、ボールテクニックだけでは不十分。高い身体能力も持ち合わせていなければならない。テクニックだけで、スピードもパワーもなければ、ミランのようなクラブで苦労するのは当然だ。もちろん、その正確な素晴らしい左足のキックが、時に彼を救っているのも事実だがね」
 
 ミランでベンチを温めるうえ、来年6月には契約満了迎えるため、本田は早ければ次の冬、遅くとも夏にはチームを去るだろう。現在はプレミアリーグ、MLS、オーストラリアなどのクラブが興味を示していると言われている。
 
 しかしブライダは、新天地についてこんな自論を展開してくれた。
 
「イングランドのいくつかのチームからオファーを受けたと新聞で読んだこともあるが、プレミアリーグのサッカーは本田にまるで合わないだろう。それならテクニカルなサッカーを愛するスペインのほうがいいし、ブラジルも悪くないかもしれない。ブラジルには日系人も多いから、きっと上手くいくはずだ」

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 文:マルコ・パソット(ガゼッタ・デッロ・スポルト紙)
翻訳:利根川晶子

【著者プロフィール】
Marco PASOTTO(マルコ・パソット)/1972年2月20日、トリノ生まれ。95年から『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙で執筆活動を始める。2002年から8年間ウディネーゼを追い、10年より番記者としてミランに密着。ミランとともにある人生を送っている。