DDTプロレスが両国国技館に大観衆を集めるも、高木三四郎「20周年は今まで通りではいけない」

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8月28日、両国国技館にてプロレス団体・DDTが「両国ピーターパン2016〜世界でいちばん熱い夏〜」を開催した。


来年で20周年を迎えるDDTだが、今では夏の両国大会が同団体の“恒例行事”となっている。というわけで、この日を待ち遠しく思っていたファンの熱気は高い。観客は大挙して来場し、5,394人超満員という結果に。


ご覧いただければわかるが、客席の南側は入場ゲートとLEDモニターを設置するために使用されている。贅沢な舞台演出を行った結果だ。


以前、エキレビでDDTの大社長・高木三四郎選手インタビューを敢行したが、その時に氏が述べていた「スケール感を出していくためにLEDモニターは大事」という発言が思い出される。

オープニングマッチ(第1試合)の前には「ダークマッチ」と題された試合が行われているのだが、そこには百田光雄とその息子・力が出場しており、記者のようなオールドファンのハートもキャッチしてみせる人選がニクい。


この日の興行は14時スタートなので、試合の副題には「6時半の男、1時半の親子として登場」というキャッチが付けられていた。

王者・焼き鳥のベルトを巡ってバトルロイヤル


この日は計10試合(ダークマッチ、アンダーマッチを除く)が組まれていて盛りだくさんの内容なのだが、特に皆さんに知っていただきたいのは「アイアンマンヘビーメタル級選手権」である。
とにかく、試合形式が特殊だ。挑戦者は問われず、24時間いかなる場所でも3カウント・ギブアップによりベルトが移動。例えばチャンピオンが就寝中にフォールされて3つ入ってしまえば、その時点で新チャンピオンが誕生する。要するに、油断や隙は大敵。時には団体のスタッフ、タレント、一般人、動物、脚立やバットなどの無機物、車といった顔ぶれが王座に就くハプニングも起こったりする。

こんな特殊形式なので、両国での試合が始まる時点で誰が王座に就いているかがまるで読めない。というわけで、モニターにはこの日を迎えるまでのチャンピオンベルトの行方が紹介された。
8月27日時点の王者は、大鷲透であった。彼からベルトを奪おうと各選手は策を練る。控室に入ってくるところを不意打ちしようとするも、大鷲は返り討ち。握手を求めてくる選手にも、疑心暗鬼の大鷲はパンチで応戦。しかも、寝込みを襲われては王座転落が必至なので満足な睡眠をとることができない。
そんな中、不意に焼き鳥が目に入る。思わずそれにかぶりついてしまった大鷲だが、同時に睡魔がやってきた。そのまま仰向けに倒れこんで眠ってしまい、彼の胸の上には食べかけの焼き鳥が乗っている。その状況を、なんとレフェリーが発見! 困惑しながらカウントするレフェリーの手は遂に3つを叩いてしまい、焼き鳥がチャンピオンというとんでもない状況でこの日は迎えられることになった。


杉田かおるの「鳥の詩」に乗って入場した第1163代王者・焼き鳥。歌詞にある「鳥よ 鳥よ 鳥たちよ」のフレーズが、チャンピオンと完全にマッチしている。


今回は「時間差入場バトルロイヤル」という形式により、数人が王座を争うことに。ゴングが鳴るや、場内は大「やきとり」コールだ。焼き鳥の串を手に取り、力比べのテイで力を込める対戦相手の平田一喜。


結果、後に登場したチェリーが焼き鳥を完食してしまい、新王者はチェリーに。しかし、時間差バトルロイヤルなので試合は続いていく。試合中、ベルトはめまぐるしく移動。“地獄の墓堀人形”ヨシヒコも技術を魅せつけて一度は王座を獲得したが、最後は大鷲がヨシヒコをラ・マヒストラルで丸め込んで王座を奪回! 第1167代王者となった。



……が、入退場ゲートで勝ち誇る大鷲を背後からジョーイ・ライアンが丸め込んで、ライアンが第1168代王者となった。とにかく、せわしない。


ちなみにこのベルト、海外へ流出した際はスコット・ホールやレイ・ミステリオ、Xパックといったスーパースターたちも巻いており、いつの間にか由緒正しき王座となってしまっている。

スーパー・ササダンゴ・マシンが、噂の「煽りパワーポイント」を披露


第4試合が始まる直前、速報として映画『俺たち文化系プロレスDDT』(11月26日から、新宿バルト9ほかで公開)の完成が発表された。監督を務めるは、マッスル坂井&松江哲明。というわけで、リング上にはマッスル坂井の姿が。


ここで、DDTのゼネラルマネジャー・鶴見亜門から「せっかくなので、『第4試合スタート!』の掛け声をお願いします」と振られる坂井。ちなみに、第4試合にはスーパー・ササダンゴ・マシンが出場することになっている。
当然、「先に戻らせてください」と拒否する坂井。しかし、鶴見も「なんで? いや、せっかくなんで」と引かない。「なんで、俺が!?」「おかしいでしょ!」と坂井は困惑し続けるが「なんでおかしいんですか?」と理解しない鶴見に、「みなまで言うなって!」と声を荒げる坂井。仕方なく「第4試合スタート!」とアナウンスした坂井は、Tシャツを脱ぎながらリングを全速力で降り、坂井の姿が見えなくなった直後にササダンゴ・マシンがゆったりと姿を現した。そして、噂の「煽りパワポ」に突入だ。


実はササダンゴ・マシン、現在はDDTがプロデュースする男性アイドルユニット「NωA」の統括プロデューサーを務めている。そこで今回は「NωAがDDTフェスに出る方法」をテーマにプレゼンが行われた。
ちなみに「DDTフェス」とは、11月6日にDDTが開催する音楽フェスのこと。筋肉少女帯、ベッド・イン、清水アキラなど豪華メンバーの出演が決定しており、これから追加メンバーとして名を連ねるのは困難な気がするが……。

今回のプレゼンを要約すると、こうだ。
●DDTがNωAに“DDTフェスに出演する条件”として提示したのは「NωAツイッター公式アカウントのフォロワー数を5万人にすること」。しかし、現在のフォロワー数は約1200名。



●DDT主催のイベントだからたぶん出られるだろうが、それに甘えるとNωAのためにならない。エンタテイメントの本質は「チャレンジ」と「成長」である。これらのプロセスを「PDCAサイクル」を通して見せる。それらは普段のプロレス活動によって行われるべきものだが、NωAはそれがうまくいってない。NωAは、今日の試合で改善すべきテーマを見つけなければならない。



●今日の8人タッグ、対戦チームにいる4人の共通点は「高い歌唱力を持っている」こと。


一方、NωAはステージを口パクでこなしている。



●しかし、NωAは「口パク」ではなく「かぶせ」だと主張。



●「口パク」をプロレスに喩えると「他人の技をマネして、あたかも自分の技のように使う行為」。一方、「かぶせ」は「引退したレスラーがマスクマンとして業界に復帰する行為」。




「実は私、やってはいけない『マスクかぶせ』に手を出してまして、売り上げを激増させた経験があります。悪いことをやると、儲かるんです」(スーパー・ササダンゴ・マシン)



●NωAが売り上げを倍増させるために、技パクを実施する。



●結論としては「口パクをやめて生歌を披露し、誠意を見せる」、「中盤まで普通に試合を展開し、相手チームに誠意を見せる」、「終盤、相手の得意技を技パクする」。

●試合後、物販スペースに移動して手焼きCD(500枚)を完売させる。売上増加で高木三四郎は大喜びし、DDTフェスへの出演オファーが舞い込む。



というわけで、生歌で歌のステージを行うNωA。


肝心の試合だが、ことごとく「技パク」を失敗するNωAチーム。しかし、相手チームが「ウィー・アー・ザ・ワールド」を夢中になって歌っている隙を突いての騙し討ちから勝利を奪取した。


男色ディーノがLiLiCoに激怒「リング上でキスなんて考えられない!」


第6試合は、王者・LiLiCoに男色ディーノが挑むDDT EXTREME級選手権。


すでにワイドショーやスポーツ紙などで話題になっているが、LiLiCoはプロレスラーと芸人の二足の草鞋を履く渡瀬瑞基と交際中。二人は試合中に抱擁したりキスを交わしたり、イチャつきまくっているのだ。
これに物申したのが、男色ディーノ。「LiLiCoが何様のブランチだよ!」「リング上でキスとか考えられない!」と、怒り心頭なのだ。(「男色ベーゼ」に関して、ディーノは「キスではなく相手を窒息させる技」と主張)


「渡瀬はLiLiCoの知名度欲しさに付き合っているだけ」と断言するディーノに、LiLiCoは「愛の力で必ず勝ちます」と宣言。


この試合の敗者は今後、渡瀬と一切接触できないという「渡瀬・コントラ・渡瀬」ルールで行われる。布袋寅泰「スリル」に乗って入場する男色ディーノだが、リングアナからは「男色ディーノ選手はホモでございます。入場時、好みの男性客を見つけると襲いかかることがあります」と注意喚起のアナウンスが。
しかし、会場内のテンションは最高潮に! 徘徊しながらお客さんのタオルを強奪してパンツの中に突っ込んだり、ファミリーで観戦に来ている赤ちゃんに無理矢理キスして号泣させたり、男色ディーノが行く道は無法地帯そのものだ。



試合は、ディーノがリストを固めたLiLiCoの手を自分の股間に持って行くも、LiLiCoはその手触りから「小さい」とアピールしてディーノを崩れ落ちさせたり、一進一退の攻防が続く。最後は、ディーノが完全無欠の「男色ドライバー」(相手の顔をタイツに突っ込んだ状態でのパイルドライバー)でLiLiCoに勝利。新王者となった。




だが、渡瀬はLiLiCoと離れるのを拒否。リング上で渡瀬はLiLiCoへ婚約指輪を渡そうとするも、LiLiCoの知名度に惹かれたレスラーらから「ちょっと待ったー!」の割り込みが続出し、収拾の付かない状況に。


ここでディーノは「闘って勝った人がLiLiCoと結婚すればいい」と提案。会場内には「知名度コール」が巻き起こり、その光景を見たディーノは「アンタら、バカでしょ?」と呆れ顔を隠さない。

“帝王”高山善廣と小学3年生の大型ルーキーがDDTに参戦


この日、DDTから2選手が紹介された。一人目は、12月4日にデビューが決まっている大型ルーキー・ゆに君(小学3年生)。
「ゆにです! デビューしたらKO-Dのチャンピオンベルトを必ず獲るので、応援してください!」


もう一人は、9月からDDTにレギュラー参戦することが決まった大物。“ダン、ダン、ダン!”という聴き馴染みのあるテーマ曲に乗って入場してきたのは、「プロレス界の帝王」の異名をとる高山善廣だ。


「高木大社長から『DDTをぶっ壊してくれ』と言われた。20周年、DDTは俺が破壊するぞ。行くぞ、ノーフィアー!」(高山)
「DDT、秋の2学期から新しいお友達が増えました!」(高木大社長)

■バックステージでの会見


ゆに君 デビューしたらKO-Dのチャンピオンベルトを獲って、誰がかかってきても勝てるようにがんばりたいです。
高山 ゆに君に勝てるようにがんばりたい!
――お二人がDDTに上がることになった経緯は?
高木 まず高山選手なんですけど、DDTが今後より広い一般層だったり地方展開だったり、ファン層を開拓していくためには世間に知名度のある方に定期参戦していただきたいというのが自分の中にありまして。高山さんには、DDTで思う存分暴れ尽くしてほしいなと。「シン・ゴジラ」ならぬ「シン・タカヤマ」として暴れてほしいなと思っております!


そして、ゆい君。私がとある大阪大会で売店に立っていたところ、お母さんとゆに君が現れまして、お母さんから「DDTさんの入門テストにうちの息子を受けさせてもらえませんか?」というお願いがありました。最初は「えっ、冗談でしょ!?」と思ったんですけど、お母さんのすごく熱心な思いと、ゆに君の眼差しがキラキラしてたんですよね。書類選考で不合格にすることもできたんですが、「来る者は拒まず、去る者は追わず」という精神でやって来ましたので受け入れてみようかなと。もちろん入門テストに関してはDDTが設けている基準で全部やってもらい、驚くことにクリアしたんですよ! 年齢は幼いけれども一つの可能性を見出し、ゆに君をDDTの練習生として採用しました。竹下(幸之介)が入門した時は15歳で、「ちょっと待て」と2年後の17歳で武道館でデビューさせました。で、ゆに君は今8歳。僕はゆに君が18歳になる10年後を見たんです。その可能性に賭けてみたいと思います。


――DDTにレギュラー参戦するにあたり、対戦したみたい選手は?
ゆに君 竹下選手です。大学生で、今チャンピオンで、いつかは勝ってみたいなって。
高山 同じ、竹下だね。外から見て一番勢いがあるしね、若いし、これからどんだけ伸びるか分かんないけど、その可能性を感じてみたい。


――竹下選手はジャーマンを得意としていますが、その辺りに高山選手は興味を惹かれるでしょうか?
高山 いや、それだけじゃないよ、別に。

ちなみに、その竹下はこの日のメインイベント「KO-D無差別級選手権」に王者として出場。石川修司の挑戦を受けるも、4度目の防衛に失敗。石川が第59代王者となった。……が、会場での竹下の支持率は抜群! 先日、エキレビで行った高木社長インタビューでの「選手が抜けてしまったら団体は大ダメージ。だけど後進をしっかり育成していれば、絶対その時に下が伸びてくる」という発言を思い出す。飯伏幸太が退団しても、DDTの未来を担う逸材として竹下幸之介が存在感を発揮しているのだ。

「50年、100年、未来永劫DDTは発展していく」(高木三四郎)


この日は、最後にとんでもないオチが待ち受けていた。「アイアンマンヘビーメタル級選手権」の新王者となったジョーイ・ライアンだが、ワンチューロに焼き鳥を無理矢理食べさせられ、苦しくなって胸を叩いたのをタップとみなされ、ライアンは王座転落。焼き鳥が第1169代王者に返り咲いた。
……が、焼き鳥を南海キャンディーズの山里亮太が完食してしまい、焼き鳥が王座防衛に失敗。山里が第1170王者となった。



全試合終了後、高木大社長がこの日を総括した。


高木 DDT毎年恒例の8月の両国大会、無事に終了することができました。今までいた選手がいなかったりどうなることかと思ったんですけど、満員のお客さんが入って本当に感謝したいですね。こういう時に団体の底力、力量が出るんだなと思いました。そういう意味では、新しいものをつくっていかなきゃいけない時期なんだと思います。今、海外だったり国内だったり、プロレスを取り巻く環境が昨年や一昨年よりすごく変化してきていると僕は思っています。その中で団体を盛り上げていくには、昨年以上のエネルギーが必要だと思ってます。プロレス界だけのエネルギーだと、そうはいかない。DDTが来年で20周年を迎えるにあたって今まで通りではいけないと思ってますし、新しいものをドンドン取り入れていかなければダメだと思ってます。プロレス界だけの交流だと、(来年3月20日に開催が予定されている)さいたまスーパーアリーナという箱を埋めることはできません。だから、もっともっと世間に対して打って出ないといけないし、なおかつ今までプロレスを応援してきた人たちも大事にしなければいけない。この両者を満足させるのっていうのは、はっきり言って難しいんですよ! でも、僕らはそれにチャレンジしたい。DDTは20周年で終わるわけにはいきませんし、50年、100年、未来永劫続いていくプロレスというコンテンツを大事にして世間に広めていき、DDTも発展していきたいなと思っております。
(寺西ジャジューカ)