自分でも気づかない!?「睡眠不足の慢性化」にご用心

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実は気づかない睡眠不足というケースが多いのです。日中でも眠気がある、だるいなどの自覚症状があれば、睡眠不足かなと気づきますが、睡眠不足が慢性化すると、眠いという感覚が鈍くなるのです。

これが結構、怖い問題で、個人のパフォーマンスが落ちるだけでなく、絶対に寝てはいけない場面で寝てしまい、交通事故をはじめとするヒューマンエラーを引き起こすことが少なくない。慢性の睡眠不足は、社会問題でもあるのです。

睡眠は、何時に寝るかと、寝付いてから何時間寝るかの2つで決まります。

では、そもそも必要睡眠量は何時間なのか。これは個人ごとに大きな差があります。6時間睡眠でばっちりだという人もいれば、8時間でも足りない人もいる。この個人差は相当大きく、必要睡眠量の平均値、中央値すらわかっていません。

「十分に眠気が取れて休養できたか」という調査では、睡眠時間が6時間を切ると、休養不足を感じる人が増えるというデータはありますが、逆にいうと、6時間を切っても大丈夫な人もいれば、そうでない人もいるということでしかありません。

その人の寝やすい時間はいつなのか、体内時計は朝型か、夜型か、中間型かなどは測定できるようになってきましたが(睡眠に関するセルフチェック http://www.sleepmed.jp/q/meq/ で、朝型か夜型か診断できる)、個人の必要睡眠時間を知るのは難しいのです。

そこで、1つの目安として、休日に平日よりも3時間以上長く寝なければいけない人は、かなり寝不足を溜めているという表現をしています。この人たちの脳波を調べてみると、普段、自分では眠いと感じていなくても、脳波は眠気が強い状態でした。

■眠気が取れたと錯覚してしまう怖さ

別の実験で、徹夜作業をしてもらい、眠気覚ましの運動をするグループとしないグループの二群に分かれ、作業テストをしたところ、結果はほぼ一緒でした。エクササイズで眠気が取れたと錯覚するぶん、かえって危ないのです。

睡眠不足になる1つの理由に、社会的な時間と自分の体内時計がミスマッチを起こしているというのがあります。ビジネスマンで最強なのは朝型で必要睡眠量が少ない人。11時くらいに眠くなって、5時間くらい寝て、朝からバリバリ働ける。いわば睡眠勝ち組です。

でも3割くらいは夜型ですし、必要睡眠量が長い人だと、朝はハンディを抱えた状態。いわば睡眠弱者的な存在です。自分の体質と社会的スケジュールがマッチしていないのは、非常に苦しいのですが、生活習慣の問題でかたづけられてしまっているのが現状です。苦しいのならば、習慣性のない睡眠薬の服用も選択肢のひとつです。

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三島和夫(みしま・かずお)
国立精神・神経医療研究センター部長。1963年、秋田県生まれ。秋田大学医学部卒業後、同大学助教授、米国バージニア大学時間生物学研究センター、スタンフォード大学医学部睡眠研究センターを経て現職。

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(国立精神・神経医療研究センター部長 三島和夫 構成=遠藤 成 写真=ノーチラス工房)