あの曇天三兄弟が帰ってくる!! 舞台『曇天に笑う』出演 松田 凌インタビュー
5月27日から再演となる舞台『曇天に笑う』で、新キャストとして金城白子役を演じる松田 凌。町に災いをもたらす大蛇(オロチ)の伝説をめぐるサスペンスを主軸としたファンタジーでありながら、初演では主役の曇 天火、空丸、宙太郎3兄弟の兄弟愛や人間愛を描く濃密な人間ドラマも高く評価された。金城白子は3兄弟とともに暮らす謎の居候であり、物語の鍵を握る重要な役どころ。ミステリアスな役柄に挑戦する意気込みから個性的なプライベートでの顔まで、じっくり語ってもらった。

撮影/すずき大すけ 取材・文/江尻亜由子 ヘアメイク/大坪真人

選ばれるべくして選ばれた、という自負



――今回は金城白子役で再演からの参加ということですが、出演が決まったときのお気持ちから聞かせてください。

自分が今まで挑戦したことのない役柄で、幅を広げるチャンスだと思うのでうれしかったです。この作品にとって大きな部分を担う役でもあるので、その責任は感じています。

――再演から新キャストとして加わることに、プレッシャーはありますか?

前回、平間(壮一)くんが演じた白子も映像を観せていただいたんですけど、すごく魅力的でした。僕が演じれば、それとはまったく違った白子になると思うから、前回観ていた方からすると、比べる部分もあるだろうし。…だから、「プレッシャーがない」と言えば嘘になっちゃいますね。あんまり感じたくはないけれど。

――一度完成したキャストの中に後から入るというのは、今までないですよね。

たぶん初めてです。前作とはまったく別モノとして、また新しい『曇天に笑う』ができる、というふうに考えています。だからこそ、「お邪魔します」みたいな感覚ではないですね。自分もその作品の中の大きな力にならなきゃっていう思いのほうが強いです。



――松田さん演じる金城白子は、謎めいたキャラクターですね。

実はこのお話をいただいたとき、白子をやりたい!!と思ったんです。僕が今まで演じてきた役柄だと、空丸や宙太郎のイメージが強いかもしれないんですけど、ステージをひとつ上がって何か違うものを生み出していきたい、自分が本来持っているものを表現したいっていうのがあって。

――松田さんの中にある金城白子的な部分、というのは?

二面性があるところ…かな。表裏があるとかじゃなくて、誰にだって、人に見せる顔と自分しか知らない顔があると思うんです。白子はまさに、生きていくうえでの立ち居振る舞いがあって、同時に自分のエゴだけの世界があって、その芯は通っているというか。

――人に見せている姿と、内に秘めているものとが違う、と。

外から見えている部分だけじゃない“何か”を持っているということですね。僕も少年っぽさだったり、かわいらしいイメージが先行する役を演じる機会が多かったんですけど、今回の役を通して、ヘンな部分が浮き彫りになってくると思うんですよ(笑)。

――松田さんのそういった部分が見出されての配役だったかもしれませんね。

そうですね。選ばれるべくして選ばれた、っていう自負はあります。ただ正直なことを言ってしまうと……本当にそれが表現できるかどうかは、まだわからないですね。未知への挑戦という感じです。



金城白子を演じるうえで最大の難関



――謎めいたキャラクターである白子を、どのように演じようとお考えですか?

原作を読んでいても、白子は独特の空気感というか、ヘンな緊張感を漂わせていますよね。主役の3兄弟や犲(やまいぬ)メンバーとはまた違った、白子だけの特殊な色合いがある。キャラクターデザインに使われている白や紫って、彼そのものだと思うんです。

――ミステリアスな色使いですね。

忍びであるがゆえに掴みどころがなく、だけど芯は通っている。そういった不思議さや謎めいたものが生む緊張感っていうのは、僕が白子を演じるにあたって最大の難関でもあると思います。

――イメージカラーの話でいうと、髪も眉もまつげも白の宣伝ビジュアルはインパクト大でした。

そうですね。あの白子姿になってみて、わかったこともあるんです。

――というのは…?

白髪にするとどうしても顔が薄くなるので、ビジュアル撮影時はバランスを取ろうとしてちょっといやらしく演じていたんですけど、あがってきたものを見て、むしろ、その表情の“出なさ感”を強みにしていかないとって反省しました。

――以前、ご出演されていたミュージカル『薄桜鬼』や舞台『K』でも白髪の役柄でしたが…

そうなんです! だから今回はまた、少し違ったものを見いだしていかなきゃと思っています。眉を全部剃ってみるのはどうかなぁとか。僕が眉を濃くしているのは、いつでも薄くできるように、なので。

――そのほかに、白子にもっと近づくためのプランってありますか?

身体的なことですかね。原作では、白子の身長は175センチという設定なんですけど、僕は169センチ。ちっちゃくまとまるのはイヤだから、優雅かつ凛とした動きで大きく見せたいと思います。



どうして彼はセリフを噛まないのか?



――曇兄弟の長男・天火を演じる玉城結規さんとは過去にも共演されていますが、玉城さんの印象は?

玉ちゃんは、役者として、すごくめずらしい人。初めて共演したときから「この人はスゴいな」と思ったことをいまだに覚えています。そのスゴさは、他の人と混ざらないこと。彼にしかできないことが多いんです。

――何がそんなに独特なんでしょう?

お芝居の“質”じゃないですかね。ある人が昔、玉ちゃんに「なんでセリフを噛まないんですか?」って聞いたんですよ。そしたら「噛まないよ。だってその役がしゃべってるんだもん」って答えたんですよね。そのときは僕も聞いていて意味がわからなかったんですけど(笑)、今はわかる。

――というのは?

自分は芝居には正確性が必要で、ミスがなく浮き沈みがない、バランスのいいお芝居ができたらいいなと思っているんですけど、それには練習量とかよりも、いかに役になりきれているかが重要なんじゃないかと。そういったことを、あの時点でもう玉ちゃんは知っていたんだと思うんです。

――なるほど…。

あくまで自分の推測ですけどね。玉ちゃんは、ひょうひょうとしてるけど、すごく熱い。プライベートでもすごく柔和な人で、器も大きい。だから座長に関しては、何の不安もなくついていきます!って感じです。




――次男・空丸を演じる植田圭輔さんはどんな印象ですか?

この人は強いですね。メンタルも、身体も、もちろんお芝居も。彼の出演作が途切れないのは、器用に、なんでも力強くこなせるところなんだと思います。

――お芝居が強いというのは、どういうことでしょう?

彼と多く絡む人や、彼と殺陣がある人は、安心すると思います。頼りがいのある人だから、全力でぶつかっていける。見た目より精神年齢は上だし、実際の植田くんも空丸っぽいと思います。

――三男・宙太郎役の百瀬 朔さんとも共演されていますよね。

『仮面ライダー鎧武』でずっと一緒でした。朔も、ホントに器用ですからね。しれーっと何でもこなしちゃう。僕らより年下ですけど、実は一番しっかりしてるかもしれない…(笑)。

――そんなみなさんが演じられる今回の舞台ですが、作品全体の印象としては、どんなところに魅力や面白さを感じますか?

『曇天に笑う』の“曇天”っていうイメージが強いですね。曇っているというか濁っているというか…。爽快な青春冒険活劇みたいなものでもないし、世にはアヘンみたいなものが出回っていたりして、現実にリンクするような部分が多いなか、大蛇という非現実的な存在が出てくるし…。

――でも、人間ドラマにはリアリティがある。

天火を筆頭に、どのキャラクターも信念を突き通しているからでしょうね。最終的に、自分たちはこの曇り空をバッと破って笑うことができるのかっていう話だから。そういう意味では、筋がすごく通っているなと思います。

――松田さんご自身の意気込みとしては?

アニメから入った方も、前回の舞台を観た方も、今回初めて観に来るという方も、必ず満足させられるキャストとスタッフがそろっている…と思います(笑)。みなさんの想像を上回る、いい意味で期待を裏切る作品にしたいと思いますので、劇場でお待ちしております!