東京・渋谷の代々木公園を中心に“日本とアジアの文化交流を図りながら、世界から注目されるストリートダンスを国内外に発信する”という主旨のもと行われた国内最大規模のストリートダンスの祭典「Shibuya Street Dance Week 2015」(以下SSDW)。
人気ダンスアーティスト・三浦大知がサプライズ出演し話題を呼んだこのイベントだが、ダンスをやっている人だけではなく、子供から大人まで誰もが観たり参加できるような企画が多かったのが特徴的だった。約3000人の老若男女がさまざまなステージやブースを楽しんだこのイベントの様子はどうだったのだろうか。



ダンスイベントといえばステージパフォーマンスが定番だが、この日はプロダンサーと行政や公益財団法人のトップによる異色のトークショーも。これは“異分野の表現者がストリートダンスについて熱く語り合う”をテーマにしたもので、「ストリートダンス文化の創造と発信の未来」と題した回には渋谷区長の長谷部健氏、TRFのダンサー・SAM、このSSDWの主催者であるアーツカウンシル東京(公益財団法人東京都歴史文化財団)の三好勝則氏らが登壇。



ストリートダンス歴の長いSAMは、
「ストリートダンスが世の中にこんなに必要とされる時代が来たというのが本当に嬉しい。昔はストリートダンスといえば不良のやるもので、誰も振り向かないから一生懸命踊って『俺たちカッコいいんだから観ろよ!』というところから始まっていたんですけど」
と、これまでのダンスシーンを振り返った。
いっぽう、選挙公約の一つに“エンターテイメントシティ・渋谷”を掲げ、夜間の地下鉄入口をストリートダンサーや劇団員たちに開放しようと提案した長谷部氏は、
「キッズの運動離れを食い止めるのにもいいですし、学生なら競技スポーツと同様にみんなと協力して何かを作っていく楽しみを味わえる、シニアの体力作りにもおすすめできるのがストリートダンス。それが今ダンスをやっている人たちだけのものではなく、“みんなのストリートダンス”という風に自然に変わっていったらいいですね」
と語り、その言葉に登壇者たちもうなずいていた。

さて、このトークと同時に会場の別エリアで行われていたのが全国の高校のダンス部が参加したダンス選手権「SSDW CONTEST」。男女混成で見た目も凸凹だったり、パフォーマンス後のインタビューの初々しい受け答えはまさに“部活”の雰囲気そのもの。それでも多彩なジャンルに挑戦していたりアクロバットを取り入れたパフォーマンスを披露するなど全体的なクオリティが高く、教育の現場にダンスが根付いてきたことを象徴するような内容だった。



コンテスト後半にはゲストとしてさまざまなダンスチームが出演。この日のトークイベントにも登壇したSAM率いるこの日のためのダンスユニットや、三浦大知をはじめBIG BANG、AAA、Kis-My-Ft2といった人気アーティストの振付やバックダンサーを務めるs**t kingzといったプロのほか、ダウン症の子供たちや各種学校の先生たちなどによる、さまざまなダンスサークルも参加し会場を盛り上げた。



そして会場が温まったところで三浦大知がサプライズ出演したプログラムは「DANCE WITH music」。予告なしにイベントのテーマ曲「music」が流れ、それにあわせて観客みんなで踊るというフラッシュモブ企画だ。彼のパフォーマンスを一度でも見た人ならわかると思うのだが「あんな風に踊ってみたい!」と思うものの、ぱっと真似できないような難易度の高い振付がほとんどだ。そこで今回は事前に本人によるこの曲のダンスのレクチャー動画が公開され、本人と同じ振付のNORMAL版と、ダンス未経験者のために振付を簡略化したEASY版をチョイスして誰でも参加できるように。



出演にあたり三浦は、
「僕自身、これまでダンスを通じて、たくさんの素敵な出会いを経験してきました。ダンスは世界共通言語です。今回SSDWテーマソングに選んでいただいた『music』という曲は、音を楽しむということの素晴らしさや誰でもハッピーになれる理屈じゃない魅力をたくさん詰め込んだ一曲です。『music』に合わせて体を揺らし、音楽やダンスの素晴らしさを一緒に感じ、国や環境、全てを超えて一つになる。そんな最高の瞬間を、皆さんに体感していただけたら幸せです」
とコメントしていた。



そして大勢のキッズダンサーと共に突然登場した三浦に観客は大盛り上がり。本人を目の前に踊るのを忘れたりカメラを構えている人も多かったが、この日はかなり肌寒かった代々木公園がまるでライブハウスのような熱気に包まれた。パフォーマンスは約4分であっという間に終わったが、友達グループで1週間近く練習を重ねて参加したという大知ファンの女性は、
「ライブで観るだけでも楽しいけど、こうやってみんなで踊るとすごく楽しいんですね」
と、興奮気味に語っていた。

この日は他にもキッズからシニアまでが参加できるダンスワークショップや会場をクラブやホールに移してのショーケースなども含めた多彩なプログラムが展開された。
SSDWは今年以降も年1回の開催を予定しているとのことだが、ダンスをより身近に感じ、いろんな形でダンスに興味を持つ人たちをつなげる役割を果たす興味深いイベントになっていきそうだ。
(古知屋ジュン)