侍ジャパンの中田翔(左)と筒香嘉智(右)【写真:編集部】

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米国戦も大活躍で首位突破に貢献、中田は打率5割3分3厘、筒香は4割2分9厘の大暴れ

 14日の米国戦に10−2で快勝し、世界野球「プレミア12」の1次ラウンド4連勝で首位突破を決めた侍ジャパン日本代表。原動力となっているのは、大会打率4割2分9厘の5番・筒香嘉智外野手、5割3分3厘の6番・中田翔内野手だ。筒香は米国戦で3打席連続タイムリー。中田も決勝3ランを放ち、すべてV打を放っている最近3試合で計11打点と圧巻の活躍を見せてきた。

 この2人、強固な信頼関係で結ばれている。普段はそれぞれ日本ハム、DeNAの主砲として活躍しているが、侍ジャパンではグラウンド内で行動を共にすることが多く、練習中に談笑する場面も目立つ。13日には希望選手のみで練習が行われたが、ともに好調ながら揃って参加。フリー打撃を行っただけでなく、外野部分で2人並んで走りこむなど汗を流した。

 試合後のコメントからも、2人の良好な関係をうかがい知ることができる。

 12日のドミニカ共和国戦。日本の2点リードで迎えた7回、レフトフライを追った筒香が目測を誤り、エンタイトルツーベースにしてしまった。その後、小川が同点2ランを被弾。もし、そのまま逆転されて負けるようなことがあれば、筒香が“戦犯”となっていただろう。

中田に全幅の信頼寄せる筒香「後ろに中田さんがいるので、つないだら何とかしてくれる」

 しかし、直後の8回、2死一塁で筒香が四球でつなぐと、続く中田がレフト線へ値千金の勝ち越しタイムリーツーベース。試合後、「僕も普段、エラーしてみなさんにカバーしてもらっている。筒香が目測を誤って点を取られた時に何とかしてあげたいと思った」と振り返った。

 そして、米国戦では筒香が3打席連続タイムリー、中田が決勝3ランと揃って大暴れ。筒香は「後ろに中田さんがいるので、何とかつないだらという気持ちでした。僕もすごく気楽な気持ちで打ててます。つないだら何とかしてくれるので」と後ろを打つ先輩の存在がいかに大きいかを明かし、中田も「筒香の同点タイムリーで楽な気持ちで打席に入れて、結果的にホームランという形で仕事ができて本当に良かった」と後輩に感謝した。

 筒香は当初、前に中村、後ろに中田とパ・リーグを代表する強打者に挟まれる自身の打順について「変な感じがした」というが、今はそれを力に変えている。

「後ろに中田さんがいるので、つないだら何とかしてくれる。変な力みなく打席に入れている」

 この試合で左中間、センター前、センター前と打球を飛ばしたように、逆方向を意識したつなぎの打撃でチームに貢献。絶好調の中田が後ろに控えるからこそ、思考回路はよりシンプルになり、いい流れが生まれている。そして、責任感のある中田はそれを意気に感じ、チャンスで期待に応える。“相乗効果”が生まれている。

「クリーンアップ+1」が機能、小久保監督も「変えるつもりはない」

 小久保監督は「打線の重い空気を変えてくれたのが筒香のタイムリーだった」と米国戦での働きを評価しつつ「3、4、5、6番は変えるつもりはない」と改めて明言。「中田がキーマンになっているので、残りもいい活躍を期待している」と話した。

 3番・山田はこの試合で3四球を選び、打率3割8厘と上々の働きを見せている。好調の筒香、中田の前で出塁できていることは何よりも大きい。また、中村にはまだ当たりは出ていないものの、稲葉打撃コーチは「彼が(重圧のかかる)4番にいるということが大きい」と話しており、「クリーンアップ+1」は十分に機能していると言えるだろう。米国戦でグランドスラムを放った7番・松田にも当たりが戻ってくるようなら、相手にとっては脅威の打線となる。

 筒香のミスを帳消しにしたドミニカ共和国戦の翌日、試合がなかったため、希望者のみの練習に参加した中田は言った。

「僕も筒香とか周りの選手に助けてもらっている。同じユニホームを着て、日本じゃないところで戦っているわけですから、1つにならないと勝てない」

 強固な信頼関係で結ばれる侍打線の力は本物。その中心に、26歳の中田と23歳の筒香がいる。

清水友博●文 text by Tomohiro Shimizu