知っていたら絶対自慢できる魅惑の″限定″レストラン5選
「完全予約」は「粋な作法」に通ず
『和食 信乃』
【完全予約制】
西麻布・星条旗通りに2010年末、完全予約制の和食店ができた。目印は小さな行燈だけで、ともすると見落としてしまうほどその佇まいは密やか。
この女将、先斗町で10余年芸妓をしていたという。花街を出て故郷に戻り、一度は勤めにも出たが、一念発起し東京で和食の店を開業することを決意。
自分が店をやるならばもてなしはやはり畳の上でと、このスタイル――つまりお座敷を選んだ。「完全予約制」とは、「一見さんご遠慮」の延長線上にある“粋の作法”というわけだ。
とはいえここは和食店。予約をすればきちんと食事ができるのでご安心を。料理は先附、造り、煮物と続く7品のコースが基本。経験豊かな料理人が、季節の美味を楽しませる。アラカルトでのオーダーも可能。
京料理に固執せず、メンチカツやポテトサラダなどのおばんざいがあるのも嬉しい。丸窓、雪見障子などしつらいにも風情があり、女将の気遣いは細やかで所作には華と艶がある。ここぞという時に使えるよう、まずはしっかり馴染みになりたいものだ。
次は、1日数組限定の日本料理店
欲しいものは欲しいと言おう
『日本料理エドア』
【1日数組限定】
独占欲は、大切だ。悪しき響きにたじろぐ必要はない。大事な誰か、特別な時間を、自分だけのものにしたい気持ちは、否定のしようがないもの。食事時で、さえ。
完全予約貸切制の店、『日本料理エドア』には、そんな気持ちを抑えられないお客たちが時々、訪れる。予約時間内は誰とも顔を合わせず、自分たちだけで、クローズドな空間と店主・高村直子さんの料理を堪能できる
料理は基本的におまかせだが、事前のヒアリングはかなり詳細。苦手なものを除くのはもちろん、希望の旬の食材や調理法にも可能な限りの対応をするためだ。「カンニングペーパーを用意してるんです」と高村さんは肩をすくめて笑う。
聞き漏らしがないよう、限られた時間を心から楽しんでもらえるようにと気を配る誠実な姿勢は、予約電話の段階から垣間見える。生牡蠣が食べたい、クリスマス仕様のデザートを用意して欲しい、そんなオーダーにひとつずつ応えることもまた、嬉しくてしょうがないといった風で高村さんは包丁を握る。
シンプルだが料理の映える皿には、お客が「食べたい」料理と、彼女が「食べてもらいたい」味とが交差して、親密な空気感さえ生み出す。それが、初めての訪れだったとしても、だ。独り占めしなければ味わえないものもある。ほら、ね。
次は、完全予約制のフレンチ店
ステーキで3つ星の先をゆく
『ミナス』
【完全予約制】
鶏ならば、皮をクッションにして火を通し、部位によっては骨に伝わる余熱で火を入れる。それも数時間かけて、じっくりと。パリ『アルページュ』のシェフ、アラン・パッサールは肉焼きの超絶技巧でミシュランの3つ星を獲得した。
『Minas』オーナーシェフ、Kei氏はその弟子として2000年以降、3年間で前菜、魚、製菓など、全セクションを経験。野菜部門ではシェフを務め、肉部門には2年いた。
肉を焼くのは得意とするところ。だから、メインはステーキと決めた。肉は和牛最高ランクA5の常陸牛の処女牛。しかも部位はヒレ限定だ。
まず、ゲストの来店時間の3時間前に冷蔵庫から出し、常温に戻すところから調理をスタート。1時間後、フライパンに肉を載せ、「肉をやけどさせないように」弱火にかける。
以後、常に火加減を調整しながら焼くこと約3時間半。そして、最後に1分ほど思いっきり強火で表面にチョコレート色になるまで焼き目をつける。
「この焼き方が僕のオリジナルです。日本人はステーキに香ばしさを求めますから」とKei氏。
焼き上がったステーキはビロードのようになめらかな舌触り。切っても肉汁も血も出ない。噛みしめて初めて口中に肉汁が広がる。この完成度を提供するため、店では完全予約制を掲げている。
次は、メール予約限定の隠れ家フレンチ
密やかにかつ肩肘はらず
『エクアトゥール』
【予約はメール限定】
店はマンションの1室。エレベータを上がれば、ごく普通のドアが。到着するとマダムかつオーナーである川島弘子さんが、丁寧に入室を促してくれる。
シェフ・小野慶之氏は青山『ラ・マージュ』でシェフを任された後、渡仏。パリ・リヨン駅そばの『オ・ルベル』で2年間、シェフを務め、彼の地で高い評価を得た。驚くほど繊細かつ丁寧に必要な作業と味を重ねた料理が、その手から生み出される。
「他店の取締役に就任する直前だった彼を、“現場を離れないで!”と引き留めたんです」と川島さん。それほど彼の味に惚れ込んだ彼女と、小野氏の、たった2人がお客をもてなす。
同店の予約はメールのみで受け付ける。それはなぜか。シェフとマダムのふたりで営むため「今できるベストを提供したい」が故の最善の策。電話より確実にコンタクトでき、店側からのリコンファームもしやすく、苦手な食材や履歴も検索しやすい分、きめ細かなサービスが担保される。
シェフが集中して向かう料理は食材の組み合わせも緻密かつ繊細で、的確なキュイッソン(火入れ)、多様なソースでひと皿ごとに食べ手を惹きつける。マダムもまたプロ然としない距離感のいいサービスで心をほぐす。数カ月待ちも仕方なし、だ。
※2015年7月〜9月は休み。9月1日より10月分の予約受付開始。10月3日より通常通り営業再開。
最後は、シェフズ・テーブルのフレンチレストラン
厨房の熱気を覗く内緒の部屋
『KEISUKE MATSUSHIMA』
【シェフズ テーブル】
「ターブル・ドット」――主のテーブル。厨房内にあるガラス張りのこの部屋、実は旧店名『レストラン アイ』開店当初から設置されている。
オーナーシェフ・松嶋啓介氏たっての希望で生まれたこの場所は、彼がニースから戻った時の打ち合わせや作業スペースに、そして特別なお客との食事にも、使われるという。欧米のレストラン厨房内にあるシェフズ・テーブルを意識した、プライベート空間だ。
これまでここで食事したお客は、松嶋氏の友人や知人、たまたま厨房見学をしてその存在を知った常連客など、わずか。別段、隠しているわけではないのだけれど……というこの部屋を、こっそりお披露目してもらった。
たった1組しか利用できない、この小部屋。特別な空間ではあるが、利用する条件はひとつだけ、「シェフのお任せコース」をいただくことのみだ。さすれば、ガラスの向こうに厨房の熱気を感じつつ料理に舌鼓を打ち、だがきっちりと扉を閉めれば静謐が訪れる密室では内緒話も可能。異次元を覗くような感覚を味わえる。
関東近郊の素材にこだわる松嶋氏のもと、東京ならではの季節感にニースの香りを含ませるのは、シェフ・今橋英明氏。レストランという場が好きならきっと、抜け駆けして席に着きたくなる。舞台裏の特等席に。
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