グローバル化する「漂着ゴミ」 清掃を続ける沖縄の離島の子どもたち
気付けばもう八月も後半。
今年何も夏らしいことをしていなければ、思い出つくらなきゃと、クラゲを気にしつつも気持ちはビーチへと向かってしまうというのが人情というもの。
今年ひときわ元気にギラつく太陽に海の家、そして開放的になった人、人、人。自然とテンションは上がり、やっぱ夏サイコー! テキーラ! とゴキゲンになりたいところ。
でも人が集まれば自然と出てしまうのがゴミ。あえて海を汚そうという人は少ないだろうが、気付けばそれなりにゴミは出てしまう。
「夏はタバコの吸い殻と花火のゴミが増えますね」というのは茅ヶ崎の海岸でビーチクリーンを行っている地元ボランティアの人。
近年環境意識の高まりによって、茅ヶ崎に限らず日本全国でビーチクリーンが行われている。自治体が主催することもあれば、NPOや有志によるものもある。
そうしたビーチクリーンの団体の中には、夏だけでなく通年で活動を行うところも多い。ビーチは海水浴客が訪れない冬場でも汚れるのだ。
その謎を解くキーワードは漂着ゴミ。
漂着ゴミとは、文字通り海のゴミが漂着して浜や岸に打ち上げられるものだ。
「沖縄の宮古諸島の漂着ゴミは推計で年間725トンに及びます」
そう教えてくれたのは、ニューヨーク在住のドキュメンタリー映画作家の佐竹敦子さん。佐竹さんはニューヨーク市国際映画祭で最優秀短編ドキュメンタリー賞受賞を始め、世界中の映画祭で高い評価を受けている『みんなの海だから』というドキュメンタリー映画を監督している。
同作は沖縄の離島である池間島にある池間小中学校の生徒たちと島の人達が、漂着ゴミとどう向き合いビーチクリーンなどに取り組んでいるかを描いた映画だ。
「池間島という小さな島が、漂着ゴミの処理のために新しいごみ焼却炉を購入しなければいけない、という記事を読んで驚いて取材を始めたのがきっかけでした」(佐竹さん)
先に挙げた宮古諸島に上がる年間725トンの漂着ゴミは、45リットルのゴミ袋に換算すると19万袋分。一日あたり実に520袋だ。
もちろん宮古諸島だけからそんなに沢山のゴミが海に流れ出ているわけではない。
「沖縄県に限っていうと、漂着ゴミの9割が海外由来のものです」(佐竹さん)
この9割という数字の調査方法が面白い。『みんなの海だから』の中で実際に池間小中学校の生徒が実践しているだが、ペットボトルに記されている言語やバーコードの情報から読み取るのだ。
環境省の調査結果によると沖縄の石垣市の漂着ペットボトルの約8割が中国産。日本海側では3〜5割が韓国産、1〜2割が中国産という。
こういうデータを挙げると嫌中嫌韓派が我が意を得たりと鼻息を荒くしそうだが、世界規模で見れば日本だって加害者だ。
佐竹さんによると、広島のカキ養殖特有の長さ約20センチくらいのパイプがよくハワイまで漂流し、ハワイの研究者の間では有名になっているというのだ。
そして他ならぬ私たち自身が加害者になっている可能性だってある。公園で休んでいる時に、持っていたコンビニの袋やプラカップが強風で飛ばされてしまうことは珍しいことではないと思うが、それらが近くの川から海へと流れつき、ハワイ近海の亀や海鳥の命を奪っている可能性だってあるのだ。
「漂着ゴミの問題を解決するには、ゴミを出さないようにする発生抑制の考え方と、出てしまったゴミを処分する回収の考え方があります。世界的に見ても日本の回収は高く評価されているのですが、発生抑制への取り組みはもっと頑張らないといけないでしょう」(佐竹さん)
以前と比べるとプラスティック袋を有料化するスーパーマーケットが増えるなど、発生抑制への取り組みは改善しているように感じられるが、他にどのようなことに気をつけなければいけないのだろうか?
「結局ゴミを減らすことが自分自身のモチベーションにならないといけません。3歳の子どもでも魚やウミガメがプラスチック袋によって死んでしまう映像を見るとゴミを減らさなくちゃという気持ちになります。多くの人がそういう気持ちになれば、ゴミを出す大企業なども発生抑制に力を入れざるをえなくなります」
そうした啓蒙のために佐竹さんは積極的に『みんなの海だから』の自主上映会をサポートしている。
「またビーチクリーンに参加してみることも大きな意味があります。ビーチクリーンは直接的には回収の作業ですが、実際に落ちているゴミを見ることによって意識が変わり、発生抑制にもつながります」(佐竹さん)
アメリカでは環境保護庁が”Trash Free Water”(=ゴミゼロ水域)運動を立ち上げ、産学行政ならびに市民を巻き込んでこの問題に取り組んでいる。
また日本でも2009年に海岸漂着物処理推進法が施行され、2010年には海岸漂着物対策を総合的かつ効果的に推進するための基本方針が閣議決定された。
それでも結局ゴミを出すのは私たち一人ひとり。
これから夏の終わりを満喫しに行楽へでかける人は、それが海であっても川であっても山であっても、目についたゴミを拾ってみるところから始めてみてはどうだろう? さもなくば、そのゴミがバカンスで訪れるハワイまであなたのことを追いかけてくる何ていう興ざめな目に合わないとも限らない。
(鶴賀太郎)
今年何も夏らしいことをしていなければ、思い出つくらなきゃと、クラゲを気にしつつも気持ちはビーチへと向かってしまうというのが人情というもの。
今年ひときわ元気にギラつく太陽に海の家、そして開放的になった人、人、人。自然とテンションは上がり、やっぱ夏サイコー! テキーラ! とゴキゲンになりたいところ。
でも人が集まれば自然と出てしまうのがゴミ。あえて海を汚そうという人は少ないだろうが、気付けばそれなりにゴミは出てしまう。
「夏はタバコの吸い殻と花火のゴミが増えますね」というのは茅ヶ崎の海岸でビーチクリーンを行っている地元ボランティアの人。
近年環境意識の高まりによって、茅ヶ崎に限らず日本全国でビーチクリーンが行われている。自治体が主催することもあれば、NPOや有志によるものもある。
そうしたビーチクリーンの団体の中には、夏だけでなく通年で活動を行うところも多い。ビーチは海水浴客が訪れない冬場でも汚れるのだ。
その謎を解くキーワードは漂着ゴミ。
漂着ゴミとは、文字通り海のゴミが漂着して浜や岸に打ち上げられるものだ。
一日520袋分の漂流ゴミが上がる沖縄・宮古諸島
「沖縄の宮古諸島の漂着ゴミは推計で年間725トンに及びます」
そう教えてくれたのは、ニューヨーク在住のドキュメンタリー映画作家の佐竹敦子さん。佐竹さんはニューヨーク市国際映画祭で最優秀短編ドキュメンタリー賞受賞を始め、世界中の映画祭で高い評価を受けている『みんなの海だから』というドキュメンタリー映画を監督している。
同作は沖縄の離島である池間島にある池間小中学校の生徒たちと島の人達が、漂着ゴミとどう向き合いビーチクリーンなどに取り組んでいるかを描いた映画だ。
「池間島という小さな島が、漂着ゴミの処理のために新しいごみ焼却炉を購入しなければいけない、という記事を読んで驚いて取材を始めたのがきっかけでした」(佐竹さん)
先に挙げた宮古諸島に上がる年間725トンの漂着ゴミは、45リットルのゴミ袋に換算すると19万袋分。一日あたり実に520袋だ。
もちろん宮古諸島だけからそんなに沢山のゴミが海に流れ出ているわけではない。
「沖縄県に限っていうと、漂着ゴミの9割が海外由来のものです」(佐竹さん)
この9割という数字の調査方法が面白い。『みんなの海だから』の中で実際に池間小中学校の生徒が実践しているだが、ペットボトルに記されている言語やバーコードの情報から読み取るのだ。
環境省の調査結果によると沖縄の石垣市の漂着ペットボトルの約8割が中国産。日本海側では3〜5割が韓国産、1〜2割が中国産という。
こういうデータを挙げると嫌中嫌韓派が我が意を得たりと鼻息を荒くしそうだが、世界規模で見れば日本だって加害者だ。
日本からのゴミはハワイで有名
佐竹さんによると、広島のカキ養殖特有の長さ約20センチくらいのパイプがよくハワイまで漂流し、ハワイの研究者の間では有名になっているというのだ。
そして他ならぬ私たち自身が加害者になっている可能性だってある。公園で休んでいる時に、持っていたコンビニの袋やプラカップが強風で飛ばされてしまうことは珍しいことではないと思うが、それらが近くの川から海へと流れつき、ハワイ近海の亀や海鳥の命を奪っている可能性だってあるのだ。
「漂着ゴミの問題を解決するには、ゴミを出さないようにする発生抑制の考え方と、出てしまったゴミを処分する回収の考え方があります。世界的に見ても日本の回収は高く評価されているのですが、発生抑制への取り組みはもっと頑張らないといけないでしょう」(佐竹さん)
ゴミを減らすために気をつけたいこと
以前と比べるとプラスティック袋を有料化するスーパーマーケットが増えるなど、発生抑制への取り組みは改善しているように感じられるが、他にどのようなことに気をつけなければいけないのだろうか?
「結局ゴミを減らすことが自分自身のモチベーションにならないといけません。3歳の子どもでも魚やウミガメがプラスチック袋によって死んでしまう映像を見るとゴミを減らさなくちゃという気持ちになります。多くの人がそういう気持ちになれば、ゴミを出す大企業なども発生抑制に力を入れざるをえなくなります」
そうした啓蒙のために佐竹さんは積極的に『みんなの海だから』の自主上映会をサポートしている。
「またビーチクリーンに参加してみることも大きな意味があります。ビーチクリーンは直接的には回収の作業ですが、実際に落ちているゴミを見ることによって意識が変わり、発生抑制にもつながります」(佐竹さん)
アメリカでは環境保護庁が”Trash Free Water”(=ゴミゼロ水域)運動を立ち上げ、産学行政ならびに市民を巻き込んでこの問題に取り組んでいる。
また日本でも2009年に海岸漂着物処理推進法が施行され、2010年には海岸漂着物対策を総合的かつ効果的に推進するための基本方針が閣議決定された。
それでも結局ゴミを出すのは私たち一人ひとり。
これから夏の終わりを満喫しに行楽へでかける人は、それが海であっても川であっても山であっても、目についたゴミを拾ってみるところから始めてみてはどうだろう? さもなくば、そのゴミがバカンスで訪れるハワイまであなたのことを追いかけてくる何ていう興ざめな目に合わないとも限らない。
(鶴賀太郎)