『賢く「言い返す」技術』片田珠美 (著)/三笠書房

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仕事で、プライベートで、誰かが放った攻撃的なひと言にイラッとしたり、へこんだりした経験は誰もがあるだろう。
仕事上でのちょっとしたミスを大げさに怒られる。また、「○○ちゃんはヒマそうでいいよね。私なんか忙しくって……」と嫌味のこもった言葉を投げかけられる等々。

社会で生活している以上、周りの人たちとのコミュニケーションは欠かせないし、そのなかで嫌なことも大なり小なり出てきてしまう。仕方のないことだが、できるだけダメージを小さくするにはどうしたらいいのだろう。そのヒントが三笠書房から出版された『賢く「言い返す」技術』に書かれている。

攻撃的な言葉を放つ人8タイプ


本書によると、攻撃的な言葉を投げかけてくる人は8パターンに分かれる。
1.周囲の人間に高圧的な口調で話す「王様」タイプ
2.自分自身の自慢話を延々としてくる「裸の王様」タイプ
3.グサッと胸に刺さるようないやみや批判をいう「羨望」タイプ
4.思いどおりにならないことがあると子供のように怒ったりすねたりする「おこちゃま」タイプ
5.グチやネガティブなことばかり言い、不幸な私をアピールする「悲劇のヒロイン」タイプ
6.他人の小さな失敗を過剰なほど怒る「置き換え」タイプ
7.自分が体験した恐怖を相手にも与えようとする「トラウマ」タイプ
8.ひたすら暴力的な言動をとる「サディスト」タイプ

今、悩みの種になっている相手がどのタイプなのかが分かると、その攻撃のかわし方や言い返す言葉も分かってくる。

ケンカに「勝つ」ではなく「しない」対応術


さらに、本書では数多くのケーススタディが紹介されている。編集担当の市川さんは、「ケンカに勝つ方法」ではなく、「ケンカにしない・させないための賢い対応術」になるように心がけたとのことで、実際に自分の立場や状況に合わせて応用できそうだった。

ひとつ、例を挙げてみよう。
ヒステリックな女性の上司がいて、彼女は自分と少しでも違う意見が出てくるとすごい剣幕で反論してくるという。彼女は「王様」タイプであり、その反論は自分の自信のなさからくるものだ。そういう場合には「あなたの自信のなさは、伝わっていますよ」ということをほのめかし、クールダウンさせるひと言を返すといいそうだ。

「心ない発言に対して、こちらも嫌味やきつい言葉で返したら、ますます相手をヒートアップさせ、お互いに苦しむことになってしまいます。そうではなく、上手な言葉で言い返し、大人の態度を示すことで、場のたかぶりを鎮め、同じ攻撃を繰り返させない。そして自分自身の心も守る。それができてこそ、『賢く言い返す技術』であると考え、あらゆるケースごとに最良の対処法を、先生に教えていただきました」

考え方を変えてストレス軽減


また、「攻撃してくる人ほど弱い」ということを本書は教えてくれる。攻撃されると「どうしてこんな事を言われなければならないんだろう」と悩んでしまうこともあるが、相手のパターンを知り「この人は弱い人なんだ」と思えば、気は楽になるだろう。

市川さんは「先生があとがきで書かれている、『幸福こそが最大の復讐』という考え方は、私自身、大きな発見をいただきました。日々の生活の中で思うようにならないことはありますが、そんなときも、『最高の反撃は自分自身が幸せになること』と信じて、『後で勝つ』と考える。すると、本当に心が楽になります」と教えてくれた。

真正面から受けとめるだけではなく、考え方を変えてみることもストレスを軽減させる方法だ。

「上司、同僚、友人、家族、姑、ママ友……どんなやっかいな相手にも、『言い返す技術』で必ず立ち向かえます。世間では、上司の誤った命令にも逆らえない企業風土が相変わらず問題になったりしています。『こんなときは、こう言い返す方法があるんだ』と知っているだけでも、人も組織も救われます。この本が“心の盾”になればいいな、と願っています」

現代の日本人は、他者に攻撃されたり理不尽な目にあわされたりしても、「耐える」ことが多い。しかし、著者である片田珠美先生はキッパリ「私は戦う」とおっしゃるそうだ。自分自身を守るため、「賢く言い返す」という戦い方を取り入れてみてはいかがだろう。
(上村逸美/boox)